第23話ティアが勝負をするならばっ!

「おっと、勝負をする前に場所を変えましょう。ここじゃ人が多すぎます。」


 シドーと呼ばれていた男がそう言う。確かにこんなところで戦ったりなんかしたら騒ぎになるはずだ。


「たしかにそうだな…悪いティア、俺のために怒ってくれるのはありがたいが、今は抑えてくれ。ここで戦えば騒ぎになって俺たちも危なくなる。」


 ここまでキレているティアを止めるのもあまりよくないと思うが、考えてみるとやっぱりここでやりあうのはまずい。


「……わかった。」


「すまない、ティア。」


「そうですね…この町の外の平原でたたかいましょう。そこならあまり見られることもないでしょう。」


「ぐふ!?僕は歩かなきゃいけないのか!?なんでだ!ここでやればいいじゃないか!!」


 騒ぎになったらどうなるかも分からんのか、この豚貴族は。流石に伯爵の息子でも事件を起こしたらだめだろう。


「ポルコ様。ここで騒ぎを起こしたらお父様やお母様に迷惑がかかります。私がポルコ様のために人の奴隷を奪ったという話が広まればポルコ様の権力も危うくなるかもしれません。」


「?何をいってるか分からんがママの迷惑になるかもしれないなら仕方ないんだな!」


 こいつ、マザコンなのか…この顔と体型にマザコン…救えねえぞ…





 俺たちは先のシドーの言うとおり、王都近くの平原に来ていた。回りに人影はないし、索敵にも生物の反応がないので見られる心配もないはずだ。


「さて、ここで始めましょうか。先にお名前を聞いても?」


「そんなことどうでもいいだろう!はやく始めるんだな!」


「そうはいいますがポルコ様、名前というのは大事なものですよ。」


 シドーさんはあれだな、結構豚さんに逆らうというか、意見するよな。いいメンタルしてるぜ。


「あーいいか?俺は高梨 駿河で、こっちがティアだ。速く始めようぜ。どうせこっちが勝つ。」


「ん…すぐ終わらせる。」


「ぐふ!!このシドーは元冒険者ランクAランクの冒険者だったんだぞ!!そんな奴隷なんかに勝てるわけないんだな!」


「ポルコ様、お止めください。私はもう冒険者はやめたんです。」


 Aランク…どれくらい強いのかはわからんが…まあ大丈夫だろ。俺の勘がそういっている。


「ティア、どれくらいかかる?」


「ん…30びょう」


「上出来だ。さっさと終わらせてドラゴン退治と行こうぜ。」


「ん…!終わらせる!」


 どうやらティアも冷静になったようだ。さっきは完全にキレてたからな…


「流石にその冗談は面白くないですよ!!」


 シドーがそう言うとどこに隠し持っていたのか袖口からナイフを取り出し逆手に持ち直して襲ってきた。


 が、だからといって…うちのティアが負けることはない。


「ん!『白銀化(プラチナトーン)』!」


「な、なに!?」


 いつの間にかシドーの視界からはティアが消えている。ようにシドーからは見えている。


 武術の才のおかげか、能力を見るだけで俺は大体の能力を理解することができる。


 『白銀化(プラチナトーン)』、その能力は、全てにおいて強くなることももちろんだがそれに加えて体から白銀のオーラを出して光を屈折させて透明に見えるようにする能力がある。と思う。感覚的に理解できるだけなので確信はないが、そんな感じだ。


「ど、どこだ!?」


「ん!こっち…!」


 ティアはいつの間にかシドーの後ろに移動していた。そしてティアから溢れる白銀のオーラが剣の形を象るようにして手に収まった。


「い、いつの間に後ろに!!そ、そんなばかなっ!!?」


「これで…終わり…!」


 ティアがそう言うと白銀に輝くオーラの剣をシドーの腹部に突き刺した。


「がはっ!?」


「ぐふ!?シドー!?おいシドー!?」


「終わったな。ティア、お疲れ。」


「ん…まだ。あいつをまだ倒してない。」


「ぐ!ぐふ!?僕!?し、シドー!!速く立て!僕を守るんだ!!なにを寝てるんだよぉ!!?僕を守るためにお前は雇われたんだろぉ!!」


「ん…うるさい。」


 今度はいつの間にか豚貴族さんの目の前にティアが移動していた。もちろん片手にはオーラブレードである。


「おい、ティア。流石に殺すなよ?」


「…………分かってる…」


 おい今大分間があったぞ?まあ殺さないんならいいが…


「ぐふ!?くそぉ!僕がこんな奴隷なんかに負けるわけがない!!奴隷はみんな僕のものになればいいんだぁ!!」


 さっきシドーが殺られていたのを見ていた癖に豚貴族はティアに襲いかかっていった。頭悪すぎだろこいつ…


「いい加減に…しろっ!!」


「ぐふぁッッ!?」


「あるじ…?」


 ティアに襲いかかってきた瞬間に俺がティアと豚貴族の間に入りみぞおちに拳を叩き込んだ。


 やっぱりこんなやつをティアに触れさせるわけにはいかない。俺の可愛いティアにお前なんかが近づかくことさえおこがましいんだよ。


「さて、こいつら…どうするよ。」


「ん…すてる?」


「いやティア先輩それはヤバイっす。」


 目の前で倒れている二人を見ながら俺たちは言う。これシドーはともかくこの豚は運べないだろ。なんキロだろうこいつ?


「ま!幸いここは王都の近くだし誰か見つけてくれるだろ!!この辺の日陰にでも置いておいてやろう。」


 え?捨てるのと変わらない?ははは、なにをおっしゃる。ゴミは捨てるもんだろ?


「それにしてもやっぱりティアは強かったな。さすが神の末裔だぜ。これなら俺ともいい勝負かもな。」


 俺はいつものようにティアの頭を撫でる。端から見たらやばい?

じゃあこっち見んな。


「ん…なでなで…うれしい…」


 うっひょい!!可愛いティアちゃんまじ天使!!

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