第19話俺がギルドで仲裁するならばっ!
「問題なのが、誰に服屋の場所を聞くかだよなぁ…」
そう、俺はこの異世界に来たばかりで服屋どころか周りの店すらほぼ把握出来ていない。しっかり目を通した店なら…奴隷商館か…
「ん…ノノは?」
「そうか!ノノがいたな!あいつなら年も近いし服とかも知ってそうだしな!」
ノノに会いに行くなら結局ギルドの方に行かなきゃならんのか。
「まあどっちみちいくつもりだったから、ちょうどいいな。」
「ん…?ギルドに…行く?」
「おう、ノノに聞きに行くついでになんか依頼も受けてみようぜ。」
「ん。」
宿屋を出ると眩しい光が差し込んできている。目の前の大通りはたくさんの人間や明らかに人間ではないもの、猫耳やウサギ耳みたいなのまで、老若男女…たくさんの人々が歩いている。
「改めて俺は異世界に来たんだなぁ…これが夢だなんてあり得ねえよな。」
「ん…あるじの世界と違う?」
「そうだな…とりあえず、人間っていう種族以外は人型の生物なんてほぼいなかったな。犬とか猫とか、獣は四足歩行の生き物しかいないよ。だいたいね。」
「不思議…この街とは全然違う?」
「あぁ!違うぞ!こんなに猫耳やウサギ耳をつけてる子達がいるなんて!まず俺の世界じゃあり得なかったね!!」
「ん…そう。」
ん?妙に視線を感じるな…?
「ねぇ…今の声この人?」
「なにか叫んでたよね。猫耳とかウサギ耳とか…」
「あんた隠したほうがいいわよ!猫耳!食べられちゃうかも!」
いや食べねえよ!?つい叫んじまった!!恥ずかしすぎる…
「て、ティア…行こうか……」
「ん…?あるじ?なんで俯いてるの?」
「聞くな…」
純粋って…怖い。
●
「さて、シエルはいるかな?」
ギルドのなかに入ると中は意外にも多くの人で溢れていた。
「おぉ…昨日とは大違いだな。人の数が多い。」
「ん…多い。」
ノノはどこかなー…っと、あそこか。うひゃー受付並んでんな…
「結構並んでるな…こりゃまあまあ待たんといけんな…。」
「ん…」
しばらく列にならんで待っていると、向こうの方からなにやら怒声が聞こえてきた。
「おい!てめぇふざけんなよ!?」
「それはこっちのセリフだ。君こそ失礼じゃないか?ただの平民がこの私に話しかけるなんて身の程をわきまえたまえ。」
どうやら別の列に並んでいるやつらが喧嘩をしてるらしい。
「うわー…どこでもあるんだな。ああいうの。」
「もう我慢ならねぇ!表にでろや!」
「はぁ…君みたいな奴を相手にするなんて…僕が汚れてしまうだろう?」
「喧嘩売ってんだよなぁそうだよなぁっ!!?」
話を聞くに、けんかっぱやい奴もそうだがあの上から目線な口調に貴族感溢れる価値観のやつ…あれは明らかに煽っているだろ…自覚ないならよっぽどだぞ…。
「ティア、見るなよ。ティアはあんな風にはなってほしくないからな。」
俺みたいな良識ある人物になってほしいと俺は切に願うぜ!
「ん…でも、こっち近付いてきてる……」
「は?うわっ!!」
目の前をワイン瓶みたいなものが飛んでいった!怖い!助けてティアさん!!
「ふざけんな!ぶっ殺してやる!」
「いいだろう、いい加減黙らせてやる。僕の風魔法で跪かせてやる。」
なんかこっちに近付いてきてるんだけど…向こうで喧嘩しててくんねーかな…。しゃーねーな、俺は早くノノに服屋の場所を聞いてティアの服を買いたいんだが…。
「なぁ、喧嘩なら他所でやってくれないか?周りも迷惑してるだろ?」
「は?なに急に入ってきてんだよ!こっちのことなんだからお前には関係ないだろうが!」
「君は黙っていてくれ、これは僕とこいつの問題なんだ。君には関係ないだろう。」
こいつら実は仲いいんじゃないの?ほぼ言ってることかわんねーぞ?よし、仕方ないから片付けてやる。それにしてもギルドの奴らは動いてくれねーんだな。まあいいけど。
「ティア、ここで並んでてくれ。すぐに片付けてくるわ。なんかあったら呼んでくれ。」
「ん…わかった。頑張って。」
「おう、すぐ帰ってくるぜ。」
そう言うと俺は喧嘩してる二人の前にの前に立ちはだかった。
「お前ら!周りのやつが迷惑してるだろ!いい加減にしろ!黙らないなら俺がお前らを黙らせてやるよ!」
「なんだと!?てめえみたいなひょろひょろしてるやつが俺に勝てるわけねえだろうが!」
「ふ、平民が一人から二人に変わったところで大差はないさ。二人とも相手にしてあげるよ。」
まあ、俺から喧嘩腰でいったらこうなるよねー。でもまあこれが一番楽な決着方法だよな。
●
「じゃあ、ルールとか決めるぞ。」
「相手を気絶させて、最後まで立ってたやつが勝ちでいいだろうが!はやくやろうぜ!」
「ふ、僕はそれで構わないよ。貴族と平民の格の違いを身をもって知るといい。」
さすがにギルドのなかで暴れるわけにもいかないのでなんとか二人をギルドの外に連れ出した。で、ルールを決めようとしたらこれだよ。どんだけけんかっぱやいんだよこいつら…それに貴族の方もそんな煽んなって……
「じゃ、始め!」
「おら!まずはお前から終わらせてやるよ!貴族の野郎は最後にぶっ殺してやんよ!」
「僕もまずは急に入ってきた君を殺させて貰おうかな!」
さっき気絶させたら~とか言ってたのにもう殺すとかいってるよこいつら。
「はいはい、じゃあまあ…『身体強化(フィジカルバースト)』!」
ブォォ!という音とともに体から赤いオーラが放たれる。それと同時に体が軽くなるような感じる。
「ほい。まず一人。」
飛び込んできたけんかっぱやい方の男は右手を思いっきり振りかぶってきたので半身で避けてそのまま右手を掴んで力の流れを利用して地面に落とす。合気道の要領だ。
「ぐわっ!」
もちろん体制を思い切り崩すのでがら空きの腹にいっぱつお見舞いしてやる。
「おら!」
「うぐはぁっ!!」
男はそのまま崩れ落ち動かなくなった。ま、当たり前か。
「さて…じゃああとは偉そうなお前だけだな。」
「は…はやい……けど僕の魔法にかかれば!くらえ!『風刃(ウィンドカッター)』!」
「はい、どーも。」
飛んできた風の刃を叩き落とす。正直こんなもの力業でなんとかできる。勘がそういってる。武術の才のお陰かと思うとすげえよなぁ…
「な、なんだと!?この僕の風魔法が!」
「風魔法ねぇ…こんな感じ?」
体の中に流れる血液がそのまま風のようになり、刃をかたどって飛んでいく…そんなイメージだ。
「多分…こう!」
すると手のひらからさっきの数倍の大きさと量の風の刃が飛んでいった。
「う、うわぁ!?」
間抜けな声とともに体をすこし切られ倒れたようだ。そのまま失神…ダサすぎだろ…でも…ちょっとやり過ぎただろうか?だとしたら申し訳ない…
「ま、こんなもんか。意外と簡単だな…魔法っていうのも。」
パチパチパチパチパチパチ
「うぉー、よくやってくれたぞ少年ー!」
「すごい!さっき風魔法使ってたよね?魔法が使えるってすごいよね!」
「スッとしたぜ!ありがとう!」
周りにはいつの間にか人だかりができていた。
「あ、どもっす…。」
やばい!はずかしくなってきた!はやく戻ろう!
「じゃ、じゃあ僕はこの辺で…」
俺は倒れている二人を道の端に置いといてギルドに戻る。
「おーい、ティア、待たせたな。ちょっと遅かったか?」
「ん…そんなことない。勝った?」
「あったりめえよう!俺があんなやつらに負けるかよ!」
少しナルシストに思えるかもしれんが、さっきの勝負、負ける気がしなかった。というか正直誰にも負ける気がしないぜ!
「さあて、そろそろ受付も近くなってきたし、いい暇潰しになったぜ。」
「今度は…ティアがいく……」
「そ、それは……いやティアが負けるとは思えないけど……む、無理すんなよ?」
ついティアのことになると心配してしまう…
「大丈夫…ティアは…負けない。」
「はは…まあそんな日が来ないこと願うよ俺は。できれば戦いなんてしたくないしな…。」
苦笑いしながら、ティアの頭を撫でる。この感触…癖になるんだよなぁ……
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