~魔王様からの入電記録4~

タチが悪い。大体の客はこれで納得して、ああそっすよね。と現実を見はじめるのに、魔王は果てしなくファンタジーだった。ファンタジー世界の生き物なんだから、当たり前といえば当たり前だ。

MMORPGだって、アップグレードすればすぐに魔王が実装される時代なのだから、魔王がさも当然のように『ご意見』がすぐ通ると思うのは当然だ。

直人はもはや辟易としながら重く言葉を紡いだ。


「申し訳ありませんが、お答えできかねます」


「なぜだ」


魔王は直人の言葉尻に被せて問いかけてきた。

直人はすぐに頭をフル回転させて、適切な答えを考える。


『定期メンテナンスを行い、お客様のご不安を解消させて頂ければ幸いです。定期メンテナンスの時期はHPに記載されております。日程をずらすことはできかねます』


定期メンテ明けにこいつ絶対電話してくる。

毎月絶対かかってくるアホカー定期(アホカーというゲームのクラッキングツールを使って不正して優勝しているクソ報告。通称赤van定期便)と跳びもりバカ(跳びもりというゲームに不正侵入されてクラッキングツールおいてかれた人)と一緒になって戻ってくる。

あー、とりあえず電話切りてェ。

とか色々と考えた結果、直人が出した答えは、以下だった。


「当コールセンターではその日時はお伝えしておりません」


「そうか。それは何故だ?答えよ」


「申し訳ございませんがお客様にお伝えできかねます」


「それは、ワシが転生したり転移した勇者をすぐに殺しにいく、愚かで卑怯な魔王だと思ったからか?」


「全てのお客様にお答えできかねます」


「ほう。では、転移したり転生する勇者が分からぬのはお互いという事か!?」


「申し訳ございませんが、わたくしどもではおこたえできかねます」


再び言い含めるようにゆっくりと直人が言葉を放つと、魔王は「うむそうであったか。なに、お前はそんなに悪い奴ではないな、直人よ」と言ってさも楽しげにガハハと豪快そうに笑った。


「では、貴重な意見ありがとうございました。本日は池田が承りました」


「うむ。直人。そなたには報酬をやろう!」


と言って、魔王の電話は今度こそあっさりと切れた。

その後、直人は気がついた。自分は上の名前しか言っていないのに、魔王は自分を下の名前で呼んだ事に。まさか、本物だったら、お礼まいりとか?とビクビクしていると、ちゃりんという音がして、電話の下から謎の硬貨が出てきた。

まさか、魔王からのお礼か!?直人はもはや、信じるしかなくなってしまった。

このコールセンターが異世界の魔王に繋がっていると。

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