~魔王様からの入電記録3~
こと、電話業界に多いのはまず、謝らせようとする客なのか謝ってほしい客なのかで大きくルートは違う。
まず、謝ってほしい客には積極的に頭を下げる。
言葉は態度に出やすいので、謝りなれていない人は目の前に相手がいると思うくらいバカ丁寧に謝る。
(本当に頭を下げて謝っている人もいて、それはSVや室長=SVより上の人にも良い印象を与えるので、やっておいても損はない)
逆に謝らせたい客には絶対に謝ってはいけない。
基本的にはできかねます。お答えしかねます。で、毅然な態度でいく。
こういう客の場合は謝ると絶対に言ってくる「謝ったなら誠意見せなさいよ」と言うセリフがテンプレで飛んでくる。だから、謝らない。
はて、と、直人はこの客はどちらだろうかと考えてみる。
この面倒な客に謝った場合と謝らない場合のリスクを自称魔王に当てはめて考えてみる。
「そもそも、お主たちの世界どーなってんの?色々なネタとにかく思いついたからって片っ端からやってくってのどうかと思うんじゃが!?いや、別にいいんじゃよ、すっごく面白いし、でもワシ的に困るんじゃ」
間違いなく、この客は謝るとダメなパターンのにおいしかしない。
「って、ちゃんと聞いておるのか!?貴様!?何か気に入らんから魔王の攻撃じゃ!くらえ!」
「え!?」
ピカ。ゴロゴロ・・・。
急に空に稲妻がはしり、雨がどしゃ降りになって地面を濡らしていく。
たちまち、オフィス街の一角にあるこのコールセンターの入口付近は雨宿りの客でいっぱいになった。
「どうじゃ!ワシの魔法に恐れおののけ」
大丈夫か。まともに相手していい相手か?本当に異世界の魔王だったマジでやばくないか?と思い始めた直人だったが、ここまできて引き返せるわけもない。こうなれば第三ルート確定。
とにかく、相手に自分たちでは操作など、できない意思を伝える。
「お客様、本当に魔王様なのですね」
その1:まず相手を肯定する。相手に自分だけは味方なんです、あなたの役にたちたいんですと必死さをアピールする。例え、それが常軌を逸していてもいい。
「お客様 (のゲームキャラ) は強いんですね。素晴らしいですね」
こと、とにかく褒められる所はとことん褒めておく。
相手の気分が変わらないうちに。
「渋い声をお持ちで、羨ましい限りで。僕もお客様のようなお声であれば、威厳も身に付きそうです。それに、ゲームへの高いご意見はとても参考になり、さっそく弊社にて取り入れさせていただきます」
「そうであろう。そうであろう」
こうして、気分が良くなった客に大変申し訳なさそうに言う。
ここ凄く大事なので、二回言うが、大変申し訳なさそうな感じで、かつ丁寧に遠まわしに言う。
「お客様の多大なるご意見を反映させていただきたく存じます。つきましては、お客様からの貴重な意見、誠にありがとうございました」
そう。これでゲームオーバーだ。自称魔王め。直人は心の中でほくそ笑みながら、電話を切る準備をはじめる。
「本日は池田がお受けいたしまし」
「おい、ちょっと待て、その意見が反映されるのはいつだ」
直人は思った。
暇人だなぁ、この魔王。めっちゃ暇人だよこいつ、絶対、異世界とか征服できそうにないよ。
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