第6話 データ改ざん



アルン「途中で茶々入れないで、大人しく聞いて。ライフがゼロになったら、一度ログアウトしちゃうっていう点はあるんだけど、無限ダンジョンでは、次にログインした時に、そのログアウトした場所から再開できるのよ。ダンジョン内の難易度が半端ないせいだって理由なんだけど、ゴンドウさんはその利点を生かして、ダンジョンの奥まで到達してファンファーレ響かせてやろうって考えたわけなのよ」

ウィーダ「あ、ああ。なるほどそういう事か」


 高難度のダンジョンクリアは普通のダンジョンをクリアした際とは違う。踏破者の名前をシステム音声が呼び上げてファンファーレを鳴らす仕組みになっていた。


 その付近のフィールドや町にいた人間は、今までそうやって未踏のダンジョンがクリアされた事を知ってきたのだ。


 パーティーでダンジョンに挑む者達なら、自然とダンジョンクリアの情報は広まっていくだろうが、ソロで挑んだプレイヤーの場合はクリアの情報が公にされない場合もある。


 ダンジョン内には、初回クリア時だけに出るレア報酬があるので、知らずに挑んでいったプレイヤー達が泣き目を見ないように、運営側が配慮したのだろう。


ウィーダ「だからゴンドウさんは、何度もログアウトしながら奥に辿り着いて、この世界が安全だって言う事を証明しようとしてるのか……って、だったらこんな所で悠長に話している場合じゃないだろ!」

アルン「あんたが聞いてきたからでしょうが。この危険なダンジョンの中を進みながら、あたしに喋ろって言うの? できるわけないでしょ!」

ウィーダ「メールで、そういう事はあらかじめ知らせといてくれよ!」

アルン「あんたが想像以上に馬鹿だったせいでしょ。知らないなんて思ってなかったのよ!」


 背景の中でウィーダとアルンが口喧嘩を始めているが、今の所はどうでも良いので聞き流す。


 そうしている間にも内部にいるゴンドウがライフを全損して死んでしまう可能性があるのだから、普通に考えればユウたちは一刻も早く急ぐべきだろう。

 だが……。


 ウィーダがこちらの様子を窺いながら、喋る。


ウィーダ「でも、ユウが俺達を止めないって事は、何か考えがあるのか?」


 呼び出した画面を操作しながら、状況をおおよそながら掴んでいたユウは、その言葉に顔を上げる。


 ユウはウィーダに尋ねた。


ユウ「俺達は、デスゲームになっている」

ウィーダ「おお。あれ? 俺それ説明したか?」

ユウ「ライフがゼロになれば死亡する、その認識であっているか」

ウィーダ「お、おう。よく分かったな」


 それらの言葉を聞いたユウは、ダンジョンの入り口に立った。


ユウ「来い」

ウィーダ・アルン「「へ?」」


 仲良く揃って口を開け間抜けな表情を晒しているアルンとウィーダ。

 ユウは二人に構うことなくダンジョンマップへの侵入を果たし、進む目的を告げた。


ユウ「ゴンドウを回収しに行く」

ウィーダ「お、おいユウ。そんなあっさり……」

アルン「も、もしかしてユウ様、何か良い案でも浮かんだんですかぁ」


 戸惑いながらも付いてくるウィーダと、先程まで頑なにダンジョンに進もうとしなかったのにも関わらずあっさりとついてくるアルンを背後に連れながら、ユウは誰もが驚くだろう言葉を口にした。


ユウ「全プレイヤーのライフポイントが変動しないように手を加えた。モンスターの攻撃で死ぬ事はないだろう」


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