魔法と兵隊 異世界進軍記

@zirconia

序幕

召喚

 最早最後の手を使うほかに可能性はない。


カリス国王グバートは決心を固めると、口を開いた。


「・・・例の計画の進捗はどうか」


その言葉に、貴族たちの表情が硬くなる。


「準備はできております。・・・どうか、ご決断を」


貴族の一人、アルザスは憔悴した顔で迫る。

彼は王国でも名高い大領主であったが、その領土は既に無い。


すべて飲み込まれてしまったのだ。


カース帝国という津波に。


国王は大きな溜息をついた。


「・・・よし、頼む。やってくれ」


承知しました、そういうとアルザスは足早に部屋を出ていった。



グバートは俯き気味に呟いた。


「果たして、どうなるか・・・」


“例の計画” 


それが意味するところはつまり、非常に大規模の召喚魔術を使ってカース帝国を討ち払おうというものだ。


召喚には莫大な費用とエネルギーを費やす。


そして、召喚されるのは国、丸ごと国そのものが召喚されるのだ。



だが、この計画にはいくつも問題があった。


まず、どのような国が召喚されるのか、皆目見当もつかないことである。


つまりは、非常に強力な魔法帝国かもしれないし、弱小国かもしれない。


それになにより、容易には制御下に置けないことが大きな問題であった。


つまりは、強力かつ好戦的な種族によって構成された国家(カース帝国のように)であった場合、こちらまで滅ぼされかねないという点である。


しかし、カース帝国は最早眼前まで迫っている。


かの国の支配への悪評には事欠かぬ、どの道滅ぶのであれば、と大博打に打って出たわけだ。



・・・ともかく、賽は投げられたのだ、もはや祈るほかにない。

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