感じる視線。
「
「…全然いいんだけど、
最近某大手企業に新入社員として入社したわたし
「海原さんと七生さんまた飲みいくの!仲良いね〜」
入社してから4カ月ですっかり仲良しが職場で広まってしまうほど、わたしは海原さんに懐いている。
「海原さんは先輩ですけど、タメだからほんと一緒にいて楽しくて!」
「…あ!そっか同い年なのか!短大だもんね!なるほど!」
海原さんは社会人3年目。経験重視の職場で、わたしにとっては大先輩だ。
タメの先輩だから親しみやすいのはもちろんあるけど、きっと海原さんの面倒見の良さと、同じ歳に思えない大人びたところが、わたしをここまで安心させるんだと思う。
◇◇◇
「…わたし、やっぱり
「ん〜それはないと思うんだよなぁ」
すっかり行きつけになってしまった、職場から5分くらいの居酒屋でジンジャーエール。
もちろん海原さんは、大好きな日本酒。
本日は
身長180cmで、オシャレで、顔が小さくて整ってる、職場でも有名な遊び人、
わたしはそんな春田さんと、非常によく目が合う。(気がする)
「そりゃー最初は、『エッなんだろう!きゅるん!』ってなりましたよ?
でも、話しかけると無視の時とかありますし、絶対何か気に食わないことがあるんだと思うんですあれは。」
笑って話を聞いてくれる海原さんに「最近何だか腹立ってきましたよ」と付け足した。
「まあまあ怒らない。
最初聞いた時は七生さんのこと好きなんじゃないとか思ったけど、4カ月経って何もアクションがないっていうなら違うよな〜あの遊び人が…」
こんな話ばかりを書いていると、
わたしがとんだ勘違い野郎のようだけど、そんなことはない。
むしろ普段は消極的な方だ。
春田さんの席はわたしの前の前に背を向けるような配置。
それにしては不自然なほど目が合う。
例えば立ち上がった時、必ず、こっちを見る。
たまに、なかなか逸らさない時もある。
そしてふいっと、冷たく視線を外すこともあるのだ。
そんな視線を向けられるたび、わたしの心臓はいつもより少し強く鳴る。
「…目でオトしてるんですかねあーいう人は。」
「ははっ。まあ、壮也さんの容姿なら落ちる人もいるかもねぇ」
…彼氏と長期冷戦中の
と、言おうとした言葉を、ジンジャーエールで飲み込む。
春田さんと会話することは珍しくない。
もちろん職場が同じだし、新入社員だから、よく雑務を頼まれる。
配属されてすぐ、大量のコピーを頼まれて、その次の日チョコをわざわざ買ってきてくれたこともある。
「えー、私貰ったことないよ!何度もコピーしてあげてるのに!」
その日の海原さんとの食事の時、そう言って笑われた。
何となく、その日以来かもしれない。
視線を気にしてしまっているのは。
「イケメンは"特別感"を演出するのがうまいんですねきっと…」
「そうやって女の子たちを知らず知らずのうちに勘違いさせてきたんだよきっと…」
わたしと海原さんは、うんうんと頷きながら唐揚げを摘んだ。
◇◇◇
いつのまにか、
他の人よりも春田さんを目で追うようになった気がする。
身につけているもののブランドは統一されていて、
スーツはピシッと、いい匂いがして、机はいつも整頓されていて。
手帳はこまめに記されていて、
字がとても綺麗で、
字を書く指は白くて長くて。
気づくとそんな姿に、目を奪われてる。
ただ、胸がきゅっと締め付けられる瞬間は
そんな姿ではなくて。
よく何かにぶつかっているところ、
後輩とふざけて笑っているところ、
同期にちょっかいを出しているところ。
ふふっと、笑ってしまうような
人間らしい姿に、ほんの少し、幸せな気持ちになる。
この時は好きとか、そんなんじゃないけど、
前だったら、それが恋愛感情なのかな?と錯覚してしまっていたような、心があったまるような気持ちを、春田さんに抱いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます