300字SS集

ささなみ

永遠の愛

 目が覚めて寝返りを打つ。手を伸ばし、シーツの冷たくなった場所を確かめた。

 先週までは、そこに彼が寝ていた。目を覚ませば「おはよう」と微笑んでくれた。愛おしげな眼差しが思い出され、冷たい涙が一気にこみ上げる。


「どなたですか?」

 いつものように何の疑いもなく目覚めた私に、彼はそう言った。無機質な音声と眼差しが、硬く閉じたまぶたの裏で再生される。


「その型はいわばプロトタイプでして」

「データが破損しておりますので、修理できかねます」

 先週から、同様の事例が全国で続々と報告されているらしい。


 私は盲目的に安心しきっていた。永遠に無条件に供給される愛を試していたはずだった。

 これではまるで、試されたのは私のほうだ。

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