2ページ

「お金は入れてくれているし、私も仕事があるから寂しい思いをしているわけでもないし、友達と食事に行ったり温泉行ったりするのも楽しいし、苦になることないからいいんだけど」

 あんまりあっけらかんと言うから、つい「いや、いいんかい」とか突っ込みそうになる。だって表情が楽しそうだから。

「寂しくはないのですか」

「寂しい? え、私が?」

 貴女しかいないでしょうが。

「寂しいわけないじゃない、清々してるわよ」

「でも旦那さんは寂しがっているのかもしれませんよ」

「そんなわけないじゃない」

 一喝かよ。しかも「くくく」と笑われた。

「あの人もあの人で人生を謳歌しているからね」

「そうなんですか?」

「そうよ。なんでも研究が楽しいとか何とか。私にはさっぱり分からないけど。だから別にいいの、あの人が家を空けていようが何してようが」

 だって私も自由にしているから、と続けたサユリさんに不安はないのかと思ってしまう。もしかしたら裏切られている可能性だってないとは言い切れないから。見えないところで何をしているのかは分からないから。

「けれど」

「けれど?」

「一緒に居る時はちゃんと向かい合ってご飯を食べたりするのよ? 今でも同じベッドで眠っているし」

「そう、なんですね」

 意外、と表情に出ていないと良いけど。

「昔は悩んだりしたけど、今はもう大丈夫なの。だって私、彼の事信じているから。それにあの人は浮気なんて出来る玉じゃないわよ。私って言うこわーい妻がいるんだから」

 くくく、と含んで笑うとサユリさんはロンググラスを煽って空けた。

「やっぱりマスターのお酒が一番ね。次はラムベースのお酒が良いわ」

「ラムですか、そうですね・・・バーニングハートなんてどうでしょう?」

 二人の変わらない愛に乾杯、なんてね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る