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「そう言えば先日、チケット購入しましたよ」

「そうなんですね、ありがとうございます」

「とんでもない、今から楽しみで。頂いたチラシには衣装を着てのお写真が無かったので、実際に星見さんの衣装を見るのも楽しみにしているんです」

 衣装ひとつで世界観だってガラリと変わるから。サスペンス系の演劇で、彼女の衣装がどんな役割を果たすのか。耽美で可愛らしいロリータ服を作る彼女の衣装って、どんなのだろうか。

「本当はそうやって見られるのは少し恥ずかしいのですけれど、本当に素敵な舞台ですので、楽しみにしてらしてくださいね。ってわたしが出るわけではないのですけれど」

「いえいえ、星見さんも大切な一員ではありませんか。舞台を見られる日が楽しみです」

「いいなぁ」

 ふふふ、が零れる三日月になった紅い唇を見ていたら隣から声が聞こえる。

「僕も観に行きたい」

「おや、斉藤君も舞台は観るの?」

 そう言えば映画は良く行くって言ってたけど。

「いえ、全然」

 全然なのかよ。

「でも、なんだかお二人の会話を聞いていたら観に行きたくなっちゃって」

 楽しそうだなって思って、とワンコ系笑顔で続ける。この素直さが斉藤君の良いところだ。

 それじゃぁ一緒に、と口を開く前に、黒髪が視界の隅で揺れた。

「是非! とても素敵な舞台ですから観に来て下さい」

 前のめりに話す彼女を見たのは初めてかもしれない。いつも控えめに佇んでいたから。きっと仕事中もこうやって生き生きしているに違いない。

「はい、もちろん。絶対に行きます。その舞台っていつからですか?」

「二月の二十三日からです」

 先日貰ったチラシに、電話番号が書いていたよな、と思いながら楽しそうな二人を眺める。まだチケット余っていると良いけど。

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