大樹


「君は何年生きた?」

風のささやき。花の語らい。立ち続ける。



「雨に打たれ続けて立った事はあるかい?」

暴風雨。僕は家の中で揺れる貴方を見つめてる



「自分の細胞の皺、数えたことがあるかい?」

年輪。年齢、年々、腐りかけてる。剥き出しの切り株。同胞。木漏れ日。見上げて。



「咲き誇る花をどうして摘む?」

道端を走り去る女の子、命の残骸、無惨に散らばる。固執する程に枯死。哀れというべきか命の重さ知らない子ども達



「同じ景色見続けることも悪くは無いもんさ」

乾ききった感覚で 達観して傍観。崩落していく世界観。いともあっさり、振り下ろされた鎌で刈られていくのは 僕らが僕らである存在感



「等価交換のようなものだろ? 言ってしまえば」

振るわす声。酸素と二酸化炭素。構築する元素、なんて簡素なシステム。吐いて息を吸い込むこの生体活動すら契約によって締結された鼓動のサイクル、これは失えない



秋空を見上げる

紅葉を踏みしめて

朱の街路間もなく

白銀へと変わる季節の隙間

ビルとビルの狭間で 

アスファルトに圧迫されても

立ち続ける大樹



言葉無く立ち続ける大樹

貴方とともにこの街の一角で、僕も誰かと立ち続ける

今はただの小さな芽

未来はされど揺るがない大樹を夢見て

目を閉じる



大樹にもたれかかって

子どものように寝息を立てる君の横顔見つめながら

そして僕も目を閉じる

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