2-6
次の日の昼休み。研究室の休憩室で、私はいつものように手作りの弁当を広げ、つっきーは購買で買ってきた弁当を開けた。他の研究室メンバーは学食に行っていて不在だ。休憩室には長机が二つ並び、冷蔵庫と電子レンジと電気ケトルが備え付けてある。電気ケトルでお湯を沸かしている間、私はつっきーにスマホを見せていた。
「どう思う? これ」
「……ガチじゃん」
いやーないわーやべーじゃんコイツー! みたいな軽い返事を想定していたが、つっきーの口調はむしろ神妙だった。
お湯が沸いた。ルピシアのAssamの茶葉をティーポットに入れ、お湯を注ぐ。
「どうすんの? 行くの?」
「続き読んで」
つっきーは画面を数回なぞった。私はその様子を眺めている。つっきーの目が険しくなった。
渋い表情と共に「ん」と差し出されたスマホを受け取り、弁当の横に置いておく。
「絶対『そういうつもり』だよ、齋藤さん」
「やっぱり?」
「どう見てもそうでしょ。行くの?」
「一回くらいいいかなぁって」
「断ったら? 夏帆、齋藤さんのこと好きじゃないでしょ」
「齋藤さんどころか男が好きじゃない。女の子大好き! つっきー結婚しない?」
「あんた、齋藤さんみたいなこと言ってるよ」
「うわーそれすごい自己嫌悪。え、じゃあなんて言って断ろうか。実家に帰らせていただきますので無理です! とか?」
「なんでそこでネタに走るかね」
まぁマジレスすると、と私は前置きをする。
「齋藤さんは背は低いし顔は悪いし変人だけど、別に危険な人じゃないから、二人で会っても大丈夫だと思うのね。一回会ってビシっと断ってくるよ。ズルズルしてる方がめんどくさいわ」
あ。思い出したようにAssamを二人のマグカップに注ぐ。Assamはちょっと淹れ過ぎただけで渋くて大変なことになる。
結果としては、大変なことになっていた。
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