第152話

「たいした決意ですわ……えぇ、いいですわ……あなたの政府の企みに乗ってあげますわ……ロナール家の人間として、身内の不始末は身内で解決しなければなりませんもの……その為なら、御父様、御姉様、わたくしの命を捧げますわ……」


「んじゃ、私とドロシー、こまっしゃくれは決まりだな……」


 それぞれが、メモリを手に取る。


「みんなの説得は、こまっしゃくれに任せるぜ」


 キャサリンの意図をリンスロットは読み取り、自らの想いを教室に響かせる。




「みなさん……無論、強制ではありませんわ……みなさんの国の事情や自分の気持ち、わたくしや御姉様に対する感情もあるでしょう……ですから、よく考えて決めて下さい……監理局、評議院から制裁があるかもしれません……勿論、生きて戻れるかもわかりません……わたくしだって、今は死にたくありませんわ……やりたい事、成し遂げたい事もたくさんあります……みなさんもそうだと思います……ですから、みなさん自身の心の声を聞いて従って下さい……その結論をわたくしは尊重して、恨んだりなどしませんわ……」




 無音の教室……。


 自らと「対峙」するクラスメイト……きっと何人かは拒否するだろうと、この先の展開を思うリンスロット……。




「まぁ、欧州カルテットって言ってる以上、行かない訳にはいかないよなっ……」


 リンスロットの想いを包み込んだアンテロッティの弾んだ声と指先が、メモリに向かう。


 同調したローグ、コステリッツが続く……。


 私達だって魔法少女……その「程度」の覚悟はできている……残るクラスメイト全員の瞳が、メモリを鋭く見据える。




「おそらく、動作確認もしてないデンジャラスなメモリだぜ……」


 ささやかなキャサリンの「脅し」にも「それがどうしたの」と言わんばかりに、少女達は次々とメモリを手にしてゆく……。




「りおんは、どうするんだい……」


 最後にメモリを手にしたひばりに、キャサリンが問う。


「机にメモリと置き手紙を置いていくわ……」


 りおんの分のメモリを見つめ、答えるひばり。




「私達の分も、あるんでしょうね……」


 どの場面から話を聞いていたのか……教室の引き戸は開けられ、もたれかかり言うエリザベスと、横に控えるシフォン……。


「勿論っ……」


 キャサリンが言う。


「それじゃあ、行きましょうか……」


 何処か嬉しそうにエリザベスは微笑み、言った。

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