第144話

 エレノア本人も戸惑ってしまった現象……まして、スーパーダークエネルギーが語りかけてくるなど想定外であり、過去の壊滅戦においても前例がない。


 故に、証言の信憑性は怪しくなり、真実を述べても「戦犯」としての言い訳としか映らないのだろうと自らに言い聞かせ、エレノアは全ての「罪」を自らの罰として全身に纏うと魂に誓う……。




 ロナール家に泥を塗り……


 誹謗中傷され……


 最低魔法少女と責められも……。






「エレノア、どうしたのですか……」


「エレノア……」


 オフェリアの呼びかけにも応えず、立ち尽くすエレノア……。


 既に意識は、スーパーダークエネルギーとの対話に費やされ、オフェリアの声など聞こえてはいない。


 意識から離された躰はただ、物体として存在するのみ……。


 その光景が、魔法少女達には「硬直」と見えたのだろう。


 エレノアの意識は葛藤する……対話と同時に芽生える自問自答なる意識……。


 どうして私は攻撃しないのか……。


 私は最強の魔法少女……その責務を果たさなければならない。


 想いとは裏腹に、躰は動かない……。


 これらは、エレノアにだけ訪れた特有な現象なのかもしれない。


 母の死……自分を超えるであろうリンスロット……「誇り」などと都合良く変換された精神的重圧。


 知らず知らずの内にエレノアを蝕み、侵食する負の要素……。


 母が今も生きていれば……妹などいなければ……。


 深層自我に棲み憑いた「本音」……。


 スーパーダークエネルギーは巧みにエレノアの「弱さ」を操り、精神攻撃を拡大してゆく。


 そして「偽の意識」を植え付ける……。




「死にたくない……」


「最強魔法少女の称号なんて、いらない……」


 エレノアの誇りはくすみ、輝きを失う。


 魔法少女達の問いかけにも、答えない……。


 それをいい事に、卑猥な「笑み」を浮かべたスーパーダークエネルギーの広範囲に照射された高出力レーザーはエレノアと交差し「平凡」な魔法少女達に向かう……。


 高出力レーザーは、エレノアの「加護」のない魔法少女達を容赦なく襲い、絶望と恐怖を植え付ける。




「はっ……」


 エレノアがようやく自我を取り戻した時、既に他の魔法少女達は敗北し、冷たい宇宙空間にその身を漂わす……。




 自分は何をやっているのか……。


 誇りと自信が崩壊する。


 戦意を失ったエレノアと、漂う魔法少女らにスーパーダークエネルギーはその意志を更にレーザーに込める。


 誇りを失い「死」を受け入れたエレノアは、笑みさえ浮かべ、ただ立ち尽くす……。

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