第135話

「うーん、わたし大人の事情を話されても多分、ちんぷんかんぷんだよ」


「ま、まぁとりあえず真実を知っていて損はない……りおんは主人公だからな」


「はいはい、わかりました……聞きますよ、聞くけど、色々こねくりまわして設定疲れしないようにね……っていうかもう、リンスが主人公でいいんじゃない……」


「りおーーんっ、あまりに自虐的過ぎるぞ……もっと自分に自信を持て……」


 何故かりおんの入浴中に「こっそり」侵入したステッキさんの唐突な「真実」の開示に、りおんは少し投げやりな想いを滲ませた躰を湯船に沈め、口で泡を立てながら話を聞き続ける……。


「ではりおん、人類の最大の発見と発明は何だと思う……」


「えーっ、わかんない……」


 湯気で曇った眼鏡のレンズに構う事なく「真剣」に考え、言ったりおんに、尚もステッキさんは淡々と話を続けてゆく……。




 では、答えは……。


 いわゆる「偉人」達による技術革新でもたらされた豊かな暮らし……。


 呪縛化された貨幣制度……。


 それらであって、それらではない……。


 人類最大の発見と発明は……




 魔法鉱石との「邂逅」である……。




 呼び名は様々だった……。


 奇跡の石……。


 悪魔の石……。


 繁栄の石……。




 いつ発見されたのかは、定かではない。


 唯一、南極で最初の発見が確認された以外、詳細は不明……。


 そこに、魔法元老院の介在を匂わせて。


 表歴史から分岐した「裏歴史」が刻まれてゆく。


 黒く輝く鉱脈を、人々は貪った。


 が、地理的特徴故に発掘は困難を極めた。


 その埋蔵量は、現在に至っても僅かに残されているとされ、魔法評議院が管理し、採掘を制限、事実上魔法鉱石を独占している。


 対抗する様に、各国は南極に基地を構え「不測」の事態に備え、凡人達を欺く。


 同時進行で、各国はそれぞれに国土、海域で魔法鉱石の鉱脈を調査、試掘を独自に進めるが、鉱脈を発見したという報告はない……。


 発見したとしても、自慢げに吹聴する「おめでたい」国はないだろう。


 その事実は、深く闇に沈む……。


 魔法鉱石の発見、発掘は国家戦略において最高機密であり、現世界で最も有効な手札であり、核兵器などという「おもちゃ」とは効力の次元が違う。


 枚挙にいとまがない、噂と憶測。


 とある国が鉱脈を発見した……。


 あの国が発掘を開始した……。


 虚実入り混じった各国間及び評議院、監理局との複雑な駆け引き……。


 実際、何処の国が「手札」を手にしているのかいないのか……。




 真相は何処にあるのか……。

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