第125話

「そうなんですか……」


「ここだけの話、妹を嫌いな姉なんていません……互いを嫌いなんて言う姉妹は、何処か精神が歪んでいるのかもしれませんね……」


「はぁ……」


「りおんさんには、私とリンスロットとの風景は、不思議に映るのかもしれないですね」


「でも私は、監理局の本部が日本に移り、魔法少女のみなさんが一緒のクラスで授業を受け共に過ごす……こんな事は今までに前例がありませんし、評議院では考えもしなかったでしょう……少し、羨ましいです……好きですよ、こういう環境は……評議院に所属する私が言うのも何ですが……」




「それまでは……魔法少女は独りぼっちでしたから……」


 憂いの表情と声で、心を表現するエレノア。


「リンスロットも変わってゆくでしょう……欧州カルテットなどと縛られ、窮屈だった世界を飛び出して、新しい世界と価値に触れる……」


「キャサリンさんとは言い争いに興じる事もありますが、あれはあれで仲が良い証拠とも言えます……あんな、ある意味楽しそうな妹を私は見た事がありません……だから、嬉しいんです……」


「エレノア先生……」


「私を良く思わない人達がいるのもわかっています……キャサリンさんやドロシーさんらのアメリカ、中米、南米出身の方々がそうでしょうか……それも、彼女達の影に隠れた大人達の意思が介在し、そうさせているのかもしれません……」


「私がどう思われようと今更構いません……堅物と揶揄されてきたリンスロットが少しでも柔らかく、しなやかになってくれたら……私はそれだけでいいのです……」




「そして……」


 そう呟き、エレノアはりおんの前に立ち、愛おしい視線で見つめる。


「りおんさん……あなたと出逢った事がリンスロットを大きく変えてゆくでしょう……」


「わたしが……」


「そうですよ……私もりおんさんの様な魔法少女は初めてです……いえ、そうではないですね……」


 エレノアの右手に「装備」された官能的な指先が、りおんの髪に触れ、弄ぶ……。


「リンスロットも、少しは肩の力を抜いてもいいのだけれど……きっとりおんさんが羨ましい筈ですよ……」


 エレノアの指先は、まるで男を陥落させるかの様にりおんの頬へと艶かしく這い滑る。


 指先の感触が生み出す心地良さに、まだ少女の域のりおんの「快楽中枢」は熱を帯び、臨界点に迫る。


 何だろう、この感覚は……思いもよらないエレノアの仕掛けに戸惑いながらも、知り得ていない快に埋もれ、もっと味わいたいという欲求が魂から、躰から湧き出る現象をりおんの理性は抑えられず「愉しむ」……。

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