10*あなたは……。

第74話

 45層にも積み上がった「塔」が、りおんの視界に入る……。


「うぅ……」


 まだ新居に馴染めず、拭いきれない違和感。


 りおんの上の階、45階フロアの全ての住居は現在、世間を騒がし、国民的人気を手中にしつつあるアイドルグループが占有し、住んでいるとの噂が絶えない誰もが羨む好立地の物件……。




「今日もここに帰るのかぁ……」


 普通の人なら泣いて喜びそうな住環境にも、りおんの気持ちは浮かび上がらない。


 適当というりおんの「特性」に重しをしているのは、欧州カルテットの存在と、彼女達の魂の圧力なのか……。






「では、行きますわよ……」


 リンスロットの号令からダークエネルギーの壊滅まで、僅かな時間しか費やさなかった。


 ウェーブとキューブのミックスタイプ……その脅威はりおんの初陣の比ではない……。


 それは、りおんにでも簡単に理解できる「脅威」だった……。


 リンスロットが、りおんの「それ」よりも数十倍も強力なスラッシュ弾を際限なく放つ……。


 しかし、自己犠牲をいとわないキューブタイプの一部が集積し、リンスロットの攻撃を吸収する。


「やりますわね……」


 リンスロットが含み、笑う……。


「さあ、反撃して御覧なさい……」


 どの様な反撃があるのかを知る口振り。


 集積キューブタイプから「予言」通り、怒りにも満ちたレーザーが、リンスロットに向けて放たれる。


「全く……工夫がないですわね……」


 落胆の表情を滲ませ、自身に放たれたレーザーにも危機感を見せないリンスロット……。


 迫るレーザー……。


 後方で「控える」りおんは焦る……。


「心配ない……見ていろ……」


 これから起こる事がわかっているステッキさんが、尋常でないダークエネルギーの攻撃に「慌てる」りおんに柔らかく声をかけた……。




「防御シールド……展開……」


 レーザーがシールドと衝突した瞬間、弾かれ、複数の流れ星の様に拡散し、長く細い軌跡をなびかせて切なく消えてゆく……。


「さすがですわね……」


「そりゃ、どうも……」


 誇らしくリンスロットが言い、素っ気ない表情でコステリッツが応じる。


 コステリッツの防御シールドは、リンスロットのそれをも凌駕する……。


「す、凄い……」


 りおんは圧倒され、呟く……。


「さっさと終わらせようかね……」


 この「程度」の攻撃が、コステリッツのシールドに通用する訳がない……余裕の心情を見せるアンテロッティが言い、弓を引き、輝く矢を解き放つ。


 放たれた矢は、途中で数百にも枝分かれして、集積するキューブの周りで浮遊、反撃体制で発光していたキューブらを光速で貫く……。


 貫かれたキューブ達は「成仏」したかの様に瞬間煌めき、そして消えてゆく……。

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