第72話

「りおんさんも、何処か納得しない想いがあるでしょうが、世界とはそういうものです……1+1が必ずしも2とはならないのです。魔法少女でしたら尚更ですね……その為に欧州カルテットの皆さんの仕事ぶりを見てもらいました。りおんさんなりに、それがどういう事なのか含み、理解して下さると嬉しいです……私も、そして……」


 何処か本音を隠す様な締め括りで鏡花はりおんを見据えた……。




「では、もう帰ってもいいですよ……」


「はい、わかりました……」


 素直に鏡花に従い、進路指導室を出るりおん……。


「お願いしますよ、ポーターさん……」


 鏡花の言葉の「矢」が、ステッキさに刺さる……。






「よっ、りおん……待ってたよ……」


 下駄箱に端に凭れかかり、腕組みしたアンテロッティがりおんを呼んだ。


 アンテロッティの後ろに、ローグとコステリッツが控える。


「リンスロットとキャサリンは厳重注意だから、りおんもそんな感じかい……」


「…………」


「おっと、ひばりは処分なしだとさ……」


 アンテロッティの追加された言葉に、りおんは心の硬直を解く……。


「魔法少女発動停止、1週間だって……」


「ふ〜ん……まっ、落としどころとしては、そんなもんか……」


 わかった様な口振りのアンテロッティに「だよねぇ」と躰が反応するローグとコステリッツ。


 しかし、ここにリンスロットの姿はない……。


「鏡花や監理局が何を言ったか知らないけど、あんまり気にすんなって」


「監理局も、私達に厳しい処分は下せないし……」


「魔法少女がいないと、困るから……」


 アンテロッティがりおんを励まし、訳ありな躰の仕草と声でローグが髪をなびかせ、コステリッツは例の口調で世界の「事情」を呟く……。


「そ、そうなんですか……」


「何だい何だい、りおん……私達はクラスメイトなんだから、もっとフランクにならなきゃ……」


「は、はぁ……」


「にしても、この日本独特の制服ってヤツには未だにしっくりこないなぁ〜……特にこのスカートが」


 尚もりおんを気遣いつつも、長身の躰をくね動かし、既に着崩している制服を更に着崩し、スカートの内部に空気を取り入れるアンテロッティ……。


「あら、私はこの制服、可愛いと思うわよ……」


「私も、日本文化にちょっと憧れてた……」


 そう言う彼女達を見ていると、外国人のある意味自由奔放さが、制服によって「拘束」されている図式も悪くないと、りおんの妄想は膨らむ……。


 実際、その出で立ちが神々しくも、校則の範囲内で各々アレンジを施し、楽しんでいる様に感じるのは、外国人故の適応能力の高さなのか……。

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