第31話

「適当魔法少女のわたしなんか、ブロンズかシルバーあたりが関の山じゃないかなぁ……ステッキさんには申し訳ないけど、プラチナスターにはなれないと思う……」


「それはどうかな……」


「じゃぁ、プラチナスターを獲得したら、特別ボーナスを頂戴ね……」


「いいだろう」


「それじゃぁ……」


「帰るか……」


「うん……」


「降下シークエンス開始、大気圏突入モード起動……耐火シールド展開……降下カウントダウン…………」


「ふうぅ、今日はあり得ない事ばっかりで疲れたようって今何時……?」


 ステッキさんが時間を表示する。


「え〜っ、もうそんな時間っ……ラジオ始まっちゃうよ……」


「ステッキさん、急ぐよっ」


 降下速度を限界まで速めるりおん……。


 魔法少女という「流れ星」が夜空を彩り、消えて、りおんと世界は日常の営みへ還ってゆく……。




 困惑、そして批難……。


 魔法監理局に押し寄せる感情の波……。


 デブリ消去は、国際問題に発展した。


 国際問題といっても、ごく一般的な「人類」が知る公のものではない。


 魔法監理局と各国政府は、遥か昔から裏で繋がり、現在に至るまで「平穏」な関係を築いている。


 それが、事前通告もなしにりおんがデブリを消去してしまった「暴挙」に各国政府が抗議し、魔法監理局を詰問した。


 しかし全く妙な話である……スペースデブリなど危険で邪魔な代物でしかない。そうであるのに、体面を潰された……などと、彼らは監理局に言いがかりをつけ、責任の所在を執拗に迫る。


 平穏な関係……聞こえはいいが、実質的には停滞していた関係性だったのかもしれない。


 魔法監理局は、国連にも「秘密裏」に認められた外郭組織であり、国連加盟国が資金を拠出している。


 魔法監理局は、ダークエネルギーを排除、破壊する責務を負う。


 また、それらの関連する事象に限り、国連の承認を必要としない特別魔法執行を発動する権利を有している……。


 国連はカネを……監理局は少女を盾に人類の敵を倒す……役割りは明確だ……。




 各国政府の抗議に監理局は、特別魔法執行の範疇であると主張……りおんの所業を磁気嵐、プラズマ現象、流星群などと公には虚実の推測を流布している各国政府、国連に対して「時限式記憶消去魔法」の発動を提案する……。


 3間日をかけて、徐々に消去対象の記憶の糸を解き、消し去る……つまりはりおんの行いも、果ては低軌道から中軌道に浮遊していたスペースデブリなど始めから「なかった」とする上級魔法の行使を妥協点に監理局は定めた。


 この「隠蔽」で憶測騒ぎは終息し、真実を知らぬままに人々は営みを続ける……。


 何も……「損」はない……。

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