第26話
「りおん、攻撃シークエンスは任せる……やれるな」
「うん……」
「今度は落とすなよ」
「わかってる……」
ゆっくりと深呼吸しながら、ステッキさんを宇宙の頂点に掲げたりおん……。
「ダ一クエネルギ一さんっ、あなたに恨みはないけれど、わたしも後には退けないの……だから申し訳ないけど、ここでやられちゃって下さい」
身の危険を感じたダ一クエネルギ一から、高出力レーザーがりおんに照射された……。
「シールド展開……」
りおんの防御シールドが、レーザーを弾く。その間に新たなスラッシュ弾が、ステッキさんの先端に輝く……。
「わたしに対し、通常兵器では役に立たんよ……」
不敵な笑みを浮かべるりおん……。
呻き声を増し、速度を上げてダ一クエネルギ一がりおんに迫る。
ダ一クエネルギ一の焦りを示すかの様に、スラッシュ弾は最初に創った「元気玉」の3倍にまで膨らんでいた。
「りおん……ちょっとオーバースペックだ……」
「大丈夫だよ……」
優しくステッキさんを諭すりおん。
「それじゃあ、ダ一クエネルギ一さんっ……成仏して下さいっ……」
「汝のあるべき姿に戻れっ……」
「ハニィーーーーィフラーーーーーーーーーーッシュッ……!」
「色々ごちゃ混ぜになってるよーーっ」
最終的に5倍に成長した「ハニーフラッシュ」を左手一本で、テニスの強烈なフォアハンドストロークで打ち返す様に、ダ一クエネルギ一にリリースするりおん……。
フォロースルーの遠心力で、球体が徐々に緩やかな弧を描く帯状に変化したハニーフラッシュが、光速に近い速さで進む……。
帯は、たちまちウェーブ型のダ一クエネルギ一と同等の幅にまで広がった。
「シュッ…………」
確かにそんな鋭い音がした……波打つダ一クエネルギ一の僅かな厚みの真ん中を、りおんの意思は貫く。
貫いた切り口に巻き込まれる様に闇色の物質は爆破しながら跡形もなく消え「成仏」した証なのか、爆破後に虹色の大気を周囲に振りまき、その中に彼らの意思の残骸がクリスタルの様に煌めき、ゆっくりと大気と共に色彩と輝きを失ってゆき、宇宙は通常の色調と音を取り戻す……。
「綺麗だったね……」
「それだけ念が強かったという証拠だ……」
「わたし……やったんだね……」
「見事だ、りおん」
「はぁぁぁ……」
張り詰めた意識が緩むりおん……適当に魔法を操り、ネタを展開していても、空を飛び、宇宙空間を漂い「敵」と言われた物質を葬る……。
全くあり得ない事ばかりなのだ……りおんが、わりと簡単に魔法少女の道を選択したとはいえ、意識と魂の奥底では不安、恐れ、疑心が蠢いていたに違いない……。
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