ゲームスタート?
「セシリア!!」
「っ!カ、カイゼル抱きつかないでください!!」
「一体今まで何処に行っていたのですか!?・・・ああなんだか少し痩せたのではないですか?」
「確かに・・・ちょっと顔色も悪いぞ?」
「いやいやシスラン、それは今カイゼルに強く抱きつかれて苦しいからです!」
「姫・・・何処かお怪我はございませんか?」
「だ、大丈夫ですから!」
「セシリア・・・まさか私以外に拐われていたって事無いだろうね?」
「そ、そんな事ありません!!」
「セシリア様!セシリア様!今度はわたくしも連れていってくださいと言いましたよね?どうしてお連れしてくださらなかったのですか!?」
「い、いや、レイティア様そう言われましても・・・」
突然慌ただしくなったこの状況に私はただただどうしたものかと困ってしまった。
そうしてさらに質問攻めを喰らいそうになったその時、国王の大きな咳払いが謁見の間に響き渡ったのだ。
「・・・確かにこれは思うところに含まれるのだろうな」
「まあ・・・少しだけですが」
呆れた声の国王の言葉に私はから笑いを浮かべながら返したのである。
「・・・思うところとは何ですか?」
皆に引き剥がされて離れてくれたカイゼルが怪訝な表情で私と国王の顔を見てきた。
それに国王が私の代わりに答えてくれたのである。
「セシリア嬢がお前の婚約者でいる事に悩み今回自ら身を隠したそうだ」
「え?セシリア本当ですか!?」
「え、ええ本当です・・・」
驚いた表情で詰め寄ってくるカイゼルに私は苦笑いを浮かべながら答えたのだ。
(本当は自らでは無いんだけど・・・でもレオン王子の事を話す気はやっぱり無いんだよね。だって・・・やり方は確かに良くなかったけど、私の事を想ってくれた行動でそれがちょっと行き過ぎちゃっただけだし、それに・・・皆の気持ちを知ってから今まであった出来事を考えると・・・私の行動が駄目だったんだろうなと今さらながらに思うんだよね。だから私・・・)
私は決意を込めた表情で国王の顔を見た。
「国王陛下、今までの騒動と今回の失踪騒動の責任は全部私にあります。ですので、カイゼルの婚約者と私の公爵令嬢と言う身分を剥奪してください!」
その私の発言にその場にいた皆が騒然としたのである。
「セシリア!何を言い出すのです!!」
「おいセシリア!まあ婚約の話はべつに良いが身分剥奪を願うなんて馬鹿じゃないのか!?」
「姫には全く責任はございません!」
「それなら私の方が悪いと思うが?」
「セシリア様が公爵令嬢じゃなくなるなんてわたくし・・・」
「そんな・・・セシリア様は悪く無いのに・・・」
それぞれが私の発言に反論してくるが私はじっと国王の顔を見つめて黙っていたのだ。
するとそんな私を見て国王は大きなため息を吐いたのである。
「そうか・・・そこまでセシリア嬢の決意が固いのであれば仕方がない。では・・・」
「父上!!」
国王の言葉を遮りレオン王子が一歩足を踏み出し真剣な表情で前に出た。
「どうしたレオン?」
「・・・今回のセシリア姉様の失踪は僕が原因なんだ。だって・・・僕の地下室でセシリア姉様を監禁してたから!」
「ちょっ、レオン王子!!」
まさかの告白に再び回りが騒然とし私は慌ててレオン王子を止めたのだ。
「嘘だと思うなら今すぐ僕の寝室に隠してある隠し扉を調べてよ。これが鍵だからさ」
そう言って懐から例の銀の鍵を出して見せるが突然の事に誰も動けないでいた。
レオン王子はそんな皆を見回しながら自嘲気味に笑ったのである。そして困惑している私の方に体を向けた。
「セシリア姉様、本当にごめんなさい。でも・・・セシリア姉様を好きな気持ちは本当だよ!」
「レオン王子・・・」
レオン王子の真剣な表情に私は何も言えなくなってしまったのだ。すると国王の深いため息が私の耳に聞こえてきたのである。
私は慌てて国王の方を見ると国王は自分の顔を手で覆ってもう一度ため息を吐いていた。
そして国王はその手を退けるとおもむろに玉座から立ち上がり、壇上から私達のいる場所に下りてきて私の前までやってきたのだ。
「・・・セシリア嬢」
「は、はい!」
「我の息子が大変迷惑を掛けたようで申し訳なかった。この通りだ」
「なっ!?」
国王が私に向かって頭を下げて謝ってきた事に私はぎょっとし、皆にも動揺が走ったのである。
「こ、国王陛下!あ、頭を上げてください!!私べつになんとも思っていませんので!!」
「しかし・・・」
「本当に大丈夫ですから!!」
さすがに国のトップである国王に頭を下げられるのは心臓が止まりそうなほどキツイものなのであった。
そうしてなんとか国王が頭を上げてくれた事に心底ホッとしながらも私は国王にお願いしたのである。
「国王陛下、お願いです。レオン王子の件はここだけにして頂けませんか!」
「セシリア姉様!!」
「それはいくらセシリア嬢の願いでも・・・」
「・・・もし第二王子であるレオン王子の件が外部に漏れれば色々問題が起こると思うのです。そしてその影響で場合によっては情勢が悪くなったり民に不安が広がる可能性もあります」
「ふむ・・・」
「ですので今回の件はやはり私が自ら行ったと言う事で、先ほどお願いしたようにして頂けませんでしょうか?」
「セシリア!それは貴女が責任を取る必要はありませんよ!!」
カイゼルが慌てて止めようとしてくるが私はそのカイゼルに首を横に振って断った。
「・・・分かった」
「父上!!」
「カイゼル少し黙っているように。・・・セシリア嬢、貴女の気持ちよく分かった。レオンの件やカイゼルの婚約者と言う立場の重圧に気が付いてやれなくてすまなかったな。しかし我の本音としては是非ともセシリア嬢にこの国の王妃になって貰いたかった。だが多大なる迷惑を掛けたのは事実だ。だから身分剥奪はしないがカイゼルとの婚約は破棄としよう。ああ勿論今回の件で何か言ってくる者は我がなんとかするから安心するように」
「父上!それは!!」
悲痛な顔で訴えているカイゼルを他所に他の皆はとても嬉しそうな表情をしたのである。
そして私も心の中で歓喜の声を上げていたのだ。
(や、やったぁぁぁ!!ようやく婚約者と言う枷から逃れられた!!しかしついでに身分剥奪して貰って貴族生活からおさらば出来たらもっと良かったんだけど・・・まあそれでもこれは大きな変化に繋がるはず!とりあえずもうお城にいる必要なくなったから、家に帰って良いよね?後はきっとゲーム補正でニーナとの恋がこれから皆に始まるはずだからそれを遠くから応援してるよ。・・・・・それで皆の私に対する気持ちも変わる、よね?)
若干の不安を感じながらもきっとなんとかなると安心していた。
しかし国王の言葉に私はその場で固まってしまったのである。
「カイゼル・・・そんなにセシリア嬢の事を想っているのであれば、セシリア嬢がお前を好きになった暁には再び婚約者と認めよう。だがこれはカイゼル以外の者にも同等の権利を与える」
その国王の言葉に皆が一斉に色めき立ったのだ。
(ちょ、ちょっと何勝手な事を言っているんですか!?)
私はその発言に動揺していると、カイゼルが国王から離れ私に近付くと真剣な表情で私に手を伸ばしてきたのである。
「セシリア・・・愛しています。私の妃は貴女しか考えられないのです。どうか私を好きになってください」
「っ!!」
ふわりと微笑み愛を告白してきたカイゼルに私は息を詰まらせた。
するとその隣にシスランが立ち仏頂面でカイゼルと同じように手を出してきたのだ。
「ちっ、お前を嫁に出来るのは俺ぐらいだから俺の事を好きになれ!!・・・まあそれ以上にお前の事を好きになってやるが」
そう言いながら顔を赤くしてさらに不機嫌そうにしているシスランを呆然と見つめる。
さらにシスランの隣に今度はビクトルが立ち同じように手を伸ばしてきた。
「姫・・・貴女の事は一生愛し私がお守り致します。ですから私を愛してくださいませんか?」
真剣な表情でじっと私を見つめてくるビクトルに戸惑う。
するとカイゼルの隣に決意を込めた表情でレオン王子が立ちやはり私に向かって手を伸ばしてきた。
「セシリア姉様、あんな事があった後だけど・・・僕の気持ちは本物なんだ。だから僕の事を好きになってくれないかな?」
レオン王子はそう言って首を傾けまるで子犬のような表情で訴えてきたのである。
そしてここまでくるともう予想出来た事だったが、レオン王子の隣にアルフェルド皇子が立ちやはり私に向かって手を出してきた。
「私の愛しいセシリア・・・今度は堂々と貴女を私の国に連れて帰りたい。だから私の愛に応えてくれないか?」
そう言って艶めかしい微笑みを浮かべてきたのだ。
私はその五人の様子にうんざりしていると、何故か二人で頷き合っているニーナとレイティア様が揃ってアルフェルド皇子の隣に立ち同時に手を出してきたのである。
「セシリア様、わたくしとニーナでずっと前から話し合っていた事なのですが・・・わたくし侯爵令嬢を辞めてニーナと共に庶民になりセシリア様と三人で暮らしたいと考えていますの」
「え?」
「私もセシリア様とレイティア様の三人でならきっと楽しく暮らしていけると思いその考えに賛同しました。ですのでセシリア様、私達と一緒に私の村で暮らしましょう!」
そして二人は揃ってにっこりと私に微笑んできたのだ。
さすがにこの訳の分からない状況に私は冷や汗をダラダラかきながら戸惑っていると、突然扉から衛兵が慌てて飛び込んできたのである。
「も、申し上げます!城の入口であのロンジャー盗賊団の首領であるラビがセシリア様の名を呼びながら『嫁に貰いに来たぞ!!』っと叫んでいます!!」
その報告に私はぎょっとしながらそれでもまだ私の方に手を差し出したままの皆の様子を見て戸惑っていたのだ。
するとその光景を見ながらなんだか見えないはずの文字が見えたような気がしたのである。
そして私は思わず叫んでしまったのだ。
「悪役令嬢は勿論だけど・・・ヒロインなんてもっとお断りです!!」
そうこんなシステムメッセージが見えたような気がしたのだった。
『どのルートを選択しますか?』
Fin
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