攻略対象者ビクトル

 私を腕に抱いているのに全く走りにくそうな素振りも見せず、むしろもの凄い早さで駆けていくビクトルに必死に掴まりながら漸く目的の闘技場に到着した。


 この闘技場は外から見ると円形状の建物になっており、その中は天井が無く回りに沿ってぐるりと観客席が連なり中心にある広場を見下ろすように段々になっていたのである。


 私達はその観客席側からではなく広場に通じる通路を通って大きく開けた広場に出た。


 するとその中心に向かい合うように赤い軍服を着た二人の男性の騎士が立っていたのである。


 一人は薄い色の金髪に赤い瞳のスラッとした体格の甘い顔立ちで、もう一人は濃茶色の髪に黒い瞳のガタイのいい厳つい顔立ちの大男だった。


 その二人はそれぞれ抜き身の剣を構えお互い険しい表情で睨み合い全く私達の存在に気が付いていないようだった。


 ビクトルはそんな二人の様子を見て小さく舌打ちすると腕に抱いていた私を丁寧に下ろしてくれたのだ。




「セシリア様の事を頼むぞ」


「はっ!」




 そうビクトルは一緒に付いてきた騎士に指示を出し急いで二人の下に駆け出した。


 しかしその瞬間睨み合っていた二人は大きな雄叫びを上げ一気に間合いを詰めるように走り出したのだ。




(ヤバイ!!)




 私はその二人の様子に息を飲みこのあと起こるであろう悲惨な状況が頭を過った。


 しかしビクトルは姿勢を低くしさらに走る速度を上げると、腰に差していた剣を鞘ごと外し剣を鞘から引き抜いたのである。


 そして今にもお互いに斬りかかろうとしている二人の間にサッと割って入り、それぞれの剣をビクトルがしゃがみながら抜き身の剣と鞘で同時に受け止めたのだ。




(う、うぉぉぉぉぉ!!カッコイイ!!!!!)




 そのビクトルの姿に私は目を見開いて思わず興奮しながら見入っていたのである。




(確かにゲーム上でも戦っているスチルとかはあったけど、それと比べ物にならないぐらい動いている姿はカッコイイよ!!!)




 さすが生身の迫力は違うなと感心しつつじっと成り行きを見ていると、決闘をしていた二人が驚いた表情で止めに入ったビクトルを見たのだ。




「ビクトル隊長!?」


「どうしてここに!?」


「・・・お前達、決闘は騎士団の規則に反する事を忘れたのか?」


「うっ、それは・・・」


「で、ですが隊長!こいつが悪いんですよ!」


「はぁ?なんだと!お前の方が悪いだろうが!!」


「何を言ってる!そもそもお前が私に噛み付いてきたからこんな事になったんだろう!!」


「それはお前が俺の考えを馬鹿にしたからだろう!!」


「お前がおかしな事言うからだ!!」




 ビクトルの言葉に最初身を縮めていた二人だったが、再び言い合いが始まりビクトルに剣で止められている状態のまま二人は睨み合ってしまったのである。




「・・・・・テオ、ダグラスいい加減にしないか!!」


「うわぁ!」


「うっ」




 二人のいがみ合いに眉間の皺を増やしたビクトルは低い声で怒鳴ると、押さえていた剣と鞘を一気に上に振り上げて二人の剣を弾き返したのだ。


 すると二人は下からの威力によりよろけそれぞれ後ろに仰け反り体勢を崩したのである。


 そしてそんな二人をまるで背中から黒いオーラを発しているかのようなビクトルが睨み付けたのだ。




「た、隊長・・・」


「そんなに剣を振るいたいなら私が相手になってやろう!」


「い、いやそれは・・・それに決闘は隊長が駄目だとおっしゃられたばかりでは?」


「テオ、誰が決闘と言った?私はお前達に特訓を付けてやると言ったんだ」


「え!?」


「有無は言わさん」


「うっ、はい・・・」




 テオと呼ばれた薄い金髪の騎士はうなだれながら返事を返した。


 すると次に少しずつ後退していたダグラスと呼ばれた濃茶色の髪をした騎士に視線を向け据わった目でビクトルは言い放ったのである。




「・・・ダグラス、お前もだ」


「・・・・はい」




 そうして二人はビクトルの前に並ばされるとビクトルは持っていた鞘を投げ捨て片手で剣を構えたのだ。




「さあ掛かってこい!ただし全力でだ!」




 ビクトルがそう言い放つが二人は恐る恐る剣を構えたまま動こうとしなかったのである。


 するとビクトルはそんな二人を見て大きなため息を吐くと、剣を握っていない方の手を腰に当てて二人を見据えた。




「お前達・・・規則を破った罰は1ヶ月間寄宿舎のトイレ掃除なのは分かっているな?だが・・・もし私に一太刀でも浴びせられたらその罰を免除してやろう」


「「え!?」」




 ビクトルがそう言ってニヤリと笑うと二人は驚きに目を見張りそして目の色を変えのだ。




「隊長、その言葉に二言は無いですよね?私本気でやりますよ?」


「ああもちろんだテオ。本気で掛かってこい」


「・・・一太刀で良いなら俺でも可能性がある!」


「ふん、そう上手くいくと思うなよダグラス」




 二人の真剣な様子にビクトルはニヤリと笑みを浮かべ剣を構え直したのである。


 すると二人も先程の恐る恐ると言った構え方から一変して闘志をみなぎらせていたのだ。


 そうして二人は一斉に駆け出しビクトルに向かって剣を振り下ろしたのであった。




(え?え?どうして止めに入ったビクトルとあの二人が戦う事になってるの!?なんか特訓するとか言ってたけど・・・今やる事!?それもあれ、特訓用の刃を潰した剣じゃなくて確実に切れる真剣だよね!?危ないよ!!!)




 私は目の前で突然始まってしまった戦いに戸惑いそして誰か怪我してしまうんじゃないかとハラハラしていたのだ。


 すると隣に立っていた騎士が呆れた声を上げたのである。




「あ~あ、ああなった隊長はもう止まらないな」


「え?」


「・・・ビクトル隊長は普段は冷静沈着な方なのですが、あいつらみたいに極端に団を乱す者がいると特訓と言う名のしごきが始まるんですよ。それにあの二人はしょっちゅう喧嘩をしては隊長によく怒られていたから・・・さすがに我慢の限界だったみたいです。あ、でも安心してください。ああなってもさすがに理性は残っていますので二人を殺したり大怪我を負わす事はありませんから!それにあの二人の攻撃も余裕で避けていますのでビクトル隊長が怪我をされる事もないですよ」




 その騎士の言葉に私は再びビクトルの方を見ると、顔は笑っているのにその目は完全にヤバイ感じであったのだ。




(あ、本当だ。・・・あ~確かゲームでもヒロインが野盗に襲われそうになった場面でビクトルがぶちギレて大暴れしてたな~。うん、その時のビクトルのスチルも確かあんな目をしてたよ)




 その事を思い出し私は呆れた表情を浮かべながら目の前で繰り広げられる特訓と言う名のしごきをただただ見つめた。




「だけど珍しいな・・・」


「何がですか?」


「ああなった隊長なら、もう数ヵ所はあの二人に軽い切り傷を負わせているはずなのに全くそんな様子は無いんですよ。まあ足で蹴ったり柄の部分で殴ったりはしてるので打撲はしてそうなんですが・・・でも切り傷が一個も無いのは珍しいんです」


「そ、そうなんですか・・・」




 不思議そうにしながら見ている騎士の言葉に私は頬を引き攣らせながら相づちを打ったのである。




(普段はどんな凄いしごきなんだよ!!)




 そう思いつつ二人の剣を寸前の所でかわしながら避け、さらに相手の隙を見逃がさずそこに叩き込むように蹴りや柄による殴打を繰り広げているビクトルを見ていたのだ。


 すると明らかに二人の体力が限界まできたのが目に見えて分かると、ビクトルはテオの腹を思いっきり蹴ってその体を吹き飛ばし地面に転がせ、ダグラスの横っ腹に柄を叩き付けてその場に踞らせた。


 そうして二人がその場から動かなくなったのを確認して漸くビクトルは剣を下ろしたのである。




「あ~あ、しかし今回は長かったな・・・まあ自業自得だけど。すみませんセシリア様、俺ちょっとあいつらの様子見てきますので少しここで待っていて頂いてもよろしいですか?」


「え、ええ私は構いませんが・・・あの方達は大丈夫なのでしょうか?」


「ああ大丈夫ですよ。あれぐらいなら普段の訓練でよくある事ですし、一応俺達騎士ですので体は鍛えていますから。あれなら1日寝ればすぐ良くなりますよ」


「そ、そうですか。それは凄いですね・・・」


「いえいえ、それに俺達早くビクトル隊長みたいに強くなりたいと思っているからこんな事ぐらいじゃへこたれないんですよ。その証拠にほらテオの顔見てください」




 そう言ってテオの顔を指差したので、私はその示された方に視線を向けそして顔が引き攣った。




(うわぁ~あんなにやられたのに何あの恍惚とした表情・・・怖!!!)




 私はその満足そうな表情で地面に仰向けになって倒れているテオを見て引いていたのである。




「ではセシリア様、ちょっと行ってきます」


「え、ええ行ってらっしゃい」




 そうして私から離れていく騎士を見送ると、視線を地面に転がっている鞘を取りにダグラスに背中を向けたビクトルに向けた。


 するとその時、まだ闘志がみなぎっている顔のダグラスが一気に立ち上りビクトルの背中に向かって剣を振り下ろしてきたのだ。




「危ない!!」




 私が思わず叫ぶよりも数秒早くビクトルは体ごと一気に反転させると、持っていた剣でダグラスの剣を凪ぎ払うように刀身をぶつけたのである。




「甘い!!」




 そうビクトルが言い放つと同時にボキッと言う大きな音が鳴り、ダグラスの持っていた剣が折れて刃先の部分が吹き飛んだのだ。




(け、剣を折るってどんだけ力強いんだよビクトルは!!!・・・ってあれ?なんかあの折れた刀身私に向かって来てるような・・・って来てるよ!!!)




 宙を舞い太陽の光で輝きながら真っ直ぐに私の方に落ちてくる折れた刀身を目で追いながら、あまりの事に足がすくみ全く動けなかった。




(嘘、私・・・17歳を待たずして剣でもう命を落とすの!?)




 私はその瞬間絶望が襲い思わず目を閉じてなんとか動いた腕で頭を庇ったのだ。




「セシリア様!!」




 そんなビクトルの焦った声が聞こえたかと思った次の瞬間、大きく暖かい何かに体が包まれ強く体を引かれたのである。




「うっ・・・」




 何故かとても近い所からビクトルの痛みを堪える声が聞こえ、私はびっくりして目を開けた。


 すると目の前に黒い軍服があったので私は戸惑いながら顔をゆっくり上げると、そこには唇を噛みしめて何かに耐えているようなビクトルの顔が間近にあったのだ。




「ビクトル!?」


「・・・セシリア様、お怪我はありませんか?」


「ええ、私は大丈夫です!それよりも私を庇ってくれたビクトルが怪我をしたのでは!?」


「・・・これぐらい掠り傷です」




 そう言ってビクトルは私を抱きしめたまま離してくれないので、私は身をよじってなんとかビクトルの腕から抜け出そうとしたのである。




「いいから見せてください!」


「しかしセシリア様に血を見せるなど・・・」


「今はそんな事言ってる場合ではありません!!」




 私はそう強く言うと、6歳と言う小さな体を生かして下から潜るようにビクトルの腕から抜け出したのだ。


 そして私の目に触れないように隠している左手を強引に掴んで私の方に引き寄せたのである。


 その時チラリと地面に深々と突き刺さっている折れた刀身が目に入り、ぶるりと体が震えたが私は恐怖を抑え込み大きなビクトルの手に視線を向けた。


 するとそこには手の甲に大きな切り傷が出来ておりそこから血が流れていたのである。




「っ!」


「やはりセシリア様は見られない方が・・・」


「いいから黙っていて下さい!」




 あまりの痛々しさに思わず眉を顰めてしまったが、慌てて引っ込めようとしていたビクトルの手をしっかり掴み私はドレスのポケットから一枚の綺麗に薔薇の刺繍がされている真っ白いハンカチを取り出した。


 そしてすぐにそのハンカチを広げるとビクトルの手に巻こうとしたのである。




「いけませんセシリア様!そんな上等なハンカチを使われるなど!!」


「ハンカチはこう言う使い方も出来るんですから気にしないでください!」




 私はそう言うと止めようとしてきたビクトルを無視してさっとその傷口を押さえるようにキツく結んだのだ。




「まあ思ったほど傷口は深く無さそうでしたし、暫くこうしてれば血は止まると思いますよ。ただ後でちゃんと治療はしてくださいね」


「・・・・・ありがとうございます。これは私の血で汚れてしまったいましたので、後日必ず代わりのハンカチをお贈り致します」


「お気になさらず結構ですよ。ハンカチならまだまだ家に沢山ありますから。それに助けて頂いたのは私の方なのですし・・・ビクトル助けてくださってありがとうございます」


「・・・本当に間に合って良かった。もし間に合わなかったらあの角度からですと確実に貴女のお顔に一生物の傷が出来ていましたから・・・」


「そ、そうなんですね・・・」




 どうやら死ぬ事は無かったようなのだが、それでも痛い思いをするかもしれなかったかと思うと背中に冷や汗が流れたのである。


 しかし私以上にショックを受けている顔のビクトルを見て、私はなんとか気を紛らわそうとにっこりと笑って冗談を言ってみたのだ。




「ふふ、もし私の顔に傷が出来ていたら責任取って下さったのかしら?な~んて冗・・・」


「その時は責任を取って貴女を妻に迎える覚悟はあります!勿論貴女が成人を迎えるまで待ちますが」


「・・・・・え?」


「確かに貴女はカイゼル王子の婚約者ですが・・・それでも私が傷を負わせた責任を取ってなんとしてでも貴女を迎え入れます!」




 そう真剣な表情でじっと私を見つめて言ってきたビクトルに私は激しく動揺したのである。




(ま、真面目過ぎだろう!!!)




 まさか冗談で言った事をここまで真剣に考えて言われるとは思わなかったのだ。




「ビ、ビクトル、その・・・とても責任感のある発言は嬉しいのですが、実際はビクトルが助けてくれたお陰で私は怪我などしていないのであまり深く考えないでください!それに・・・もしかしたら将来ビクトルと相思相愛になる恋人 (ヒロイン) が出来るかもしれないですしその方の為にも私の事はもう気にしなくて結構ですからね!」


「・・・・」




 私が必死に訴えるとビクトルは何故かじっと黙ったまま私を見つめてきたのである。




「・・・姫」


「・・・・・・姫!?」


「私にとって貴女は命を懸けて守るべきお方だと決めました。ですので貴女の事はこれから姫と呼ばせて頂きます」


「え?いや私は姫と呼ばれるような者では・・・」


「姫は公爵家のご令嬢ですので王家との血縁関係があり、血筋的にも王家の血が混じっていますので姫とお呼びして全くおかしくないと思われますよ」


「うっ、まあそうなのですが・・・」


「ではこれからも姫と呼ばせて頂きます」


「・・・・・はい」




 ビクトルの押しの強さに渋々折れ私は姫と呼ばれる事を承諾したのだ。


 するとその時、私達の下に申し訳なさそうな顔のダグラスと私と一緒にいた騎士に肩を担がれながら歩いているテオが近付いてきたので、ビクトルはその場ですっと立ち上がり二人をじっと見ていた。


 そしてダグラスは私の前まで来ると腰を直角に曲げながら勢いよく頭を下げたのだ。




「セシリア様申し訳ありませんでした!」


「・・・もう済んだ事ですのでよろしいですよ。それにあれは不可抗力ですし・・・それよりも怪我されたビクトルに謝られた方が・・・」


「そうでした!ビクトル隊長申し訳ありません!」


「いや、あれは私も悪かったのだ。こんな怪我気にしなくていい」


「しかし・・・」


「それよりもこれはお前に付けられた怪我ではないからな。だから罰の免除にはならない。1ヶ月間しっかりトイレ掃除をするように!」


「はっ!隅々まで掃除致します!」


「私も頑張ります!」




 どうやら話が丸く治まったようでホッとした私は、ふとある疑問が沸いてダグラスに向かって話し掛けた。




「少しお伺いしたいのですが・・・お二方の喧嘩の原因って何でしたの?」


「あ~それは・・・」


「ダグラスが卵焼きは甘くないと駄目だとか言い出したからなのです」


「・・・・・・・・・・は?」


「テオ!また馬鹿にした言い方しやがって!!お前の卵焼きは塩派の方がおかしいだろう!!」


「何を言う!甘い卵焼きなど今まで一度も食いたいとは思わなかったぞ!!そもそもその厳つい顔立ちで甘いのが好きとかあり得ないだろう!」


「顔は関係ないだろう!それを言うならそんな甘そうな顔立ちで塩が良いと言う方がおかしいだろう!!塩味の卵焼きこそ一回も食べたいとは思わなかったわ!!」


「なんだと!?」




 そう二人が言い合うと再び睨み合い今にも殴りあいが起こりそうな雰囲気になったのである。


 そんな二人を見てビクトルは顔に手を当ててため息を吐き、テオの肩を担いでいる騎士は苦笑いを浮かべていたのだ。


 しかし私はそんな二人の言い合いをポカンとした顔で見つめそしてボソリと呟いた。




「馬鹿らしい・・・」


「「なっ!」」


「・・・ねえあなた達、恋人はいらっしゃるの?」


「・・・いえ」


「俺も・・・いません」


「はぁ~でしょうね。そんな事で喧嘩している内は一生出来ないでしょう。・・・もし心から愛する恋人が自分の好みと正反対の味付けの卵焼きを作ってくださったらあなた達はどうされますか?」


「・・・・・多分食べるかと」


「・・・・・俺も」


「ああ良かった。それも食べないと言われたらもう救いようがないと思いましたから。では相手の為に歩み寄れる心があるのでしたらそのままあなた達も歩み寄ってみてはいかがですか?」


「私がこのダグラスに?」


「俺がこのテオに?」


「そう今度一度お互いの好みの味付けの卵焼きを食べてみてはどうかしら?きっとそれぞれの良さが発見出来るかもしれないですよ?」




 そう言って私はにっこりと微笑むと二人は黙りこみお互いを見合ったのだ。




「まあ・・・セシリア様がおっしゃられたので一度くらいなら食べてみます」


「・・・俺も試しに食べてみます」


「それは良かったです!そうしてお互いの事を考えられるような男性ならきっといつか『素敵な恋人』が出来ますよ!」




 だめ押しに『素敵な恋人』を強調して言ってあげたら二人は満更でもない顔になったのである。




(よしよし!これが切っ掛けで喧嘩しなくなくなれば良いけど・・・まああとは本人達の問題かな)




 そう思いながらいつ卵焼きを食べるかで二人は楽しそうに盛り上がっているのを微笑みながら見ていると、ふと視線を感じ上を見上げるとビクトルがじっと私を見ていたのだ。




「ビクトル?」


「やはり姫は素晴らしい方ですね」




 ビクトルはそう言って微笑んできたのだが、私にはさっぱり素晴らしい方だと言われる意味が分からずただただ不思議そうな顔をビクトルに向けていたのであった。

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