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「千秋ちゃんと冬真君、もういくつになりました?」

「チアキが十七で、トウマが十五やで」

「へぇ、もうそんな歳ですか。早いですねぇ」

「ハナビシくんもおっさんになるわけやな」

「お互いでしょ」

 と言いつつも年の重ね方が違う気がして。だって春馬さん、確かにもう五十に近いけどおっさんって感じが全然しない。ダンディって感じがする。これがハーフの力なのか、そうなのか。

「奥さんは?」

「ゲンキゲンキ、めっちゃゲンキ。今はハイタツにイッテンねん」

 奥さんの夏江さんも凄く綺麗でスタイルの良い人だ。それから喋るとめっちゃ“母ちゃん感”がある。こっちもギャップが凄い。夏江さんは関西の人で、イギリス留学中に出会ったとか。

 以前どうして夏江さんと付き合うことになったのか訊いたことがある。

初めて会った時、夏江さんはカタコトの英語で、春馬さんはほぼ日本語が話せなかったのだが、それでも“この子だ”と思ったんだって言っていた。

『エイゴとニホンゴがまざってて、ナニをイッテンのかワカランかったけど、とりあえずボクのことをスキなんやってことはワカッタから』

『どうして分かったんですか?』

『メをみればワカル』

 そう言って碧い瞳でウインクを飛ばしたのだ。

 通じる言葉が沢山ないからこそ、ストレートに想いが届いたのだろうか? 

「これとかどうやろ。たぶんスキやとオモウよ。ニクリョウリとあわせるとサイコウ」

 カウンターに置かれたのは、黒い箔押しのラベルが印象的な怒り肩のボトル。飲んだことのないワインだ。

「まじっすか」

「マジマジおおマジ。あとイガイとチョコレートとかアマイものともアイショウがいいからオススメ」

「へぇ、甘いのとも」

 それはそれは、全く俺好みではないか。そしてミケも好きそうなワインだ。

「さすが春馬さんですね。頼りになるぅ」

「あたりまえやろ、マカセテ」

 ドン、と叩いた胸で咳き込むまでがワンセット。そんなところもさすが春馬さん。

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