ゲイツラント大陸興国記~元ヤクザが転生し、底辺の身から成り上がって建国をする!
魚谷
プロローグ1~突然の死
20××年△月□日。
某県 繁華街 早朝。
しんと静まりかえった繁華街のゴミ置き場。
そこに大の字に仰向けになった男がいた。
スーツ姿で、腹を押さえている。
腹の部分は真っ赤に染まり、今もなお、ドクドクと鮮血を垂れ流している。
指定暴力団の傘下にある正衝組の若頭さいき 斎木成彦なるひこだ。
十代の頃から悪さをし、その腕力を買われて正衝組せいこうぐみに拾われた。
そこでみるみる頭角を現し、三十代半ばで若頭に昇のぼった。
とはいえ正衝会は吹けば跳ぶような弱小組織だ。
そして今や、絶滅危惧種と言われる任侠の組だ。
昔は鉄砲玉を幾つも用意できる武闘派組織だが、法規制や経済やくざこそ持て囃される昨今の時流から取り残され、風前の灯火だった。
とはいえ、成彦は仁義に熱い組を愛していたし、たとえ先がないと分かっていても拾われた恩義のある組に対して絶対的な忠誠心を抱いていた。
成彦は肩で息をしながら、朝焼けに輝く空を見上げた。
意識が遠のき、全身の体温が下がっていくのを生々しく感じていた。
考え事がある時、朝まで一人飲むというのが成彦の習慣だった。
そして今日も馴染みの店を後にして酔い覚ましに歩いていた時、突然、後方よりバイクの音がした。
その音に、本当に何気なく目をやる。
黒いライダースジャケットにフルフェイスのヘルメットをかぶっていた。
その男が成彦と擦れ違った瞬間。
男が右腕を成彦に向けて伸ばしたのだ。
その手の先に拳銃が握られているのに気づいた瞬間、乾いた音が熟睡する繁華街の静寂に響き渡った。
パン! パン! パン!
成彦は為す術なく弾かれ、ゴミ袋の山に身を横たえた。
触れる手で懐を探り、タバコを取り出す。
一本抜こうとして取り落としてしまう。
「くそっ……」
タバコを握りしめた手がだらりと垂れ下がる。
血が、命が、流れていく。
目が霞かすむ。
(こんなところで……ッ)
死にたくない。
そう思いながら、成彦は死んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます