球技大会~005
松田も倉敷さんも言葉を発しなかった。真っ青になっていた。しかし、漸く吐きだせた言葉――
「じゃあ川岸は間違っていなかったの?間違っていない彼女を追いこんだの私は?」
そっちを気にしたのか。間違いじゃない、俺が繰り返した事に関しては。だが、それ以外はどうだ?
「友達に盗撮を頼んだ事は間違いじゃないの?彼女がいる男子と話したいからって友達を利用するのは間違いじゃないの?ダーリンのお部屋を深夜覗き見したのは間違いじゃないの?麻美さんの藁人形は間違いじゃないの?」
「……いや、うん。そうだよね」
そうなのだ。他は全部間違いで、迷惑をこうむったのも事実。そして――
「緒方の敵の生霊に利用されたのも事実だな。じゃあやっぱり向こうが悪い」
松田の言う通り。結局は自業自得で、命だけは助かってよかったねって事になる。
「……お前はすんなり受け入れたみたいだが、納得したのか?」
やけに落ち着いたような感じだったので、木村が不審に思って訊ねた。
「納得つうか、怪談の類にしては出来過ぎだし、緒方も実は言いたく無さそうだし、言った理由が連山、つうかヤマ実の件だから言わなきゃいけなかったのもあるんだろうしで、ぶっちゃけるとピンと来ていないのが事実だな」
壮大な物語を聞いた気分だと松田は言う。それに関しては倉敷さんも同じのようだ。
「私も……信じる以前に凄い話だとしか……」
「だけど、景子との辻褄は合ったでしょ?」
黒木さんが確認の為か口を挟んだ。それに頷く倉敷さん。
「私が知っているのは川岸の事だけだけど、そこだけ取ったらドンピシャだよ。引き籠った理由も、確かに幽霊に殺されるからだったしね」
逆に松田が気になると訊ねて来た。
「それにしても、お前等も信じたってのがビックリだ。やっぱピンと来ていないとか?」
答えたのは木村
「いや、勿論最初は疑った部分もあるが、今は違う。俺自身もデジャヴがあるからな」
次に答えたのはヒロ。
「隆がそんな嘘ついてもメリットがねえし、須藤の事は俺もよく知ってっからな。あの狂人女ならあり得る。生霊になってまで執着するのはな。実際俺もぶっ叩いたし」
そうか、と頷く。なんかあっさりしているが、やっぱりピンと来ていないんだろう。
なんか心配になったので釘を刺す。
「あの……これは本当の話で、他に漏らされたら超まずいから……」
「ああ、大丈夫だ、言わねえから」
一応倉敷さんも目を向ける。
「ああ、うん、勿論。北商は言ったらヤバいしね。川岸のおかげで下地が出来上がっているから」
取り敢えず安心していいのか……?なんかあんま深刻な雰囲気が感じられないんだが……
俺の様子を察知してか、松田が逆に釘を刺す。
「ダチが言うなって言うなら言わねえから安心しろって」
そ、そうか。俺が逆に不審に思ってどうすんだって話だな。友達を信じないとかあり得ない。
「で、戻るけど、ヤマ実が目を付けられたのは寮があるからで、とうどうさんだっけ?その戦力を留める場所に適しているから、だったっけ?」
おお、そうだ。その為に繰り返しの話をせざるを得なかったんだから。
「そうだ。とうどうさんの事は正直言って全く掴めてねえが、その一角とは二度やっている。そうだな緒方?」
振られて頷く俺。
「丘陵ではタイ人のハーフと、黒潮では好意を寄せさせるって女とやり合った。どっちもまだ本気じゃ無かったようだが」
「……そのとうどうさんって、本当に実在するの?」
発したのは倉敷さんだ。眉唾もんだからそう感じるのだろう。つうかそっちの感覚の方が正しいのだろう。これは本当にそう思う。
「信じられないかもしんねえが、丘陵でタイ人とやった時、そいつ自身が言っていたからな。間違いないだろ」
「須藤も知り合ったと言ったからな。俺も間違いないと思う」
木村とヒロが援護の様に言う。しかし倉敷さんは首を捻るばかりだった。
「何か気になる事でもあるの?」
遥香も不思議に思って訊ねた。今までの話を信じちゃいないんなら疑うのは解るが、一応ながら信じると言ってくれたのだ。
「気になると言うか、その都市伝説が本当なら、知れ渡っても不思議じゃないけど、初めて聞いたから」
「だから、とうどうさんには記憶操作できる人がいるから……」
「うん、いいんだその記憶操作は。じゃあとうどうさんに依頼を出した最初の人はどうしてその存在を知ったの?」
……そう言えばそうだよな?最初が居るから今に至る訳だから。
「それに、誰の記憶にも残らないんじゃ、依頼のしようがないんじゃないの?だって知らないんだから」
……それもそうだよな?とうどうさん何か知らねえんだから、依頼のしようがないよな?
「うん。そうだね。一つ目は答えられないけど、二つ目なら推測できるよ」
全員遥香を見た。
「そんなに驚いた顔しなくても……」
「だ、だって私も倉敷さんに言われて矛盾に気付いたのに……」
黒木さんの言葉が真相だ。俺達は『そう言うもん』だと勝手に思って思考放棄していたのだから。
「そりゃ、考えるのが趣味みたいなものだから」
大きな胸を張って得意気に答える。いや、そんなドヤ顔はいいからさ。
「ポイントはとうどうさんの幹部みたいな人たちが各地に散らばっているって事」
やはり大きな胸を張りながら人差し指を出す。各地って、丘陵と黒潮しか確認を取っていないんだけど……
「……つまり、その幹部みたいな人たちが、困っている人に教えた?」
「流石和美さん、その通り!!」
嬉しそうに破顔する遥香。頭の回転が速い人は俺の友達には乏しいから、心強いのもあるんだろう。
「おい、槙原、それじゃ都市伝説にはなんねえだろ?だってそのやり方だと少数になるんだ」
木村の指摘にも慌てずに答える。
「そもそも都市伝説と言ったのは須藤真澄でしょ?そして、出所も丘陵。元々丘陵限定だった可能性もあるかもしれない程、小さな自己満足の仕事だったんだと思うよ」
その弁を辿るのなら……
「じゃあ丘陵にとうどうさんが居るのか?渓谷じゃなく?」
「いや、渓谷は本体でしょ。丘陵には友達が居て、協力した程度?」
渓谷の湖のトイレで依頼を請けるような話をしていたからな。本体は今間違いなく渓谷なのは同感だ。
「恐らく、連山のチームのとうどうさんの一人。えっと、兵藤?その人って佐伯さんの潜伏先と同じ住所の人なんでしょ?」
木村が慌てて頷いた。こいつがそう言ってたからな。
「つまり、佐伯さんにとうどうさんを紹介したのも兵藤って人。三上って人、この辺の顔なんだよね?その人を瞬殺する程の力を持っていて、尚且つ協力関係にさせる程の力を持っている、つまりとうどうさんの一人って訳」
「いや、あの糞は大して強くなかったぞ?」
俺が発したら松田が呆れ顔を拵えた。
「お前だからそうなったんだろ、実際三上はこの辺じゃ知らねえ奴はいねえんだし」
「今はお前の方が名前が売れていると思うがな。少なくとも、三上よりも他の街で名前は売れている」
木村の言う通りだし、実際のその通りだ。友好校協定の幹部にもいつの間にか名前が挙がっているくらいだし。それ程牧野をぶっ倒したインパクトがデカかったって事だ。
「まあ、槙原さんの仮説は解ったよ。多分その通りなんだろうね」
倉敷さんも納得の仮説だった。
「だけど、やっぱり一人目は解らないんだよね?」
「うん。恐らくとうどうさんは最初二人だとは思うけど」
超ビックリして遥香を見た。全員。
「そんなに驚いた顔をしなくても……」
「驚くだろ!!お前一つ目は答えられないって言ったじゃねーか!!」
「うん。一番最初にとうどうさんに依頼を出したのはやっぱり解らないけど、とうどうさんは最初二人だってのは何となく」
「な、なんで最初は二人組だ?」
ヒロの疑問に頷いて答える。
「渓谷の湖の遺体だよ。あれを処理しようとするのなら、最低二人必要でしょ?」
確かに、一人でもできるのだろうが、二人の方が早く終わる。俺も複数犯だとぼんやりは思っていたが……
「そして、多分記憶操作は渓谷の人。ひょっとするの認識をずらす人も渓谷の人。理由は湖の遺体が誰にも露見されていない事と、佐伯さんが働いていた宿の火事を見に行った全員が誤解していた事だね」
「そ、それも解んねえだろ?渓谷に近い……黒潮の奴かもしんねえだろ?」
ヒロの追撃にも怯まずに答える。
「遺体があるってのじゃ相当な事件だよ。国枝君の話じゃ脚に重石を履かせて寝かせているんでしょ?でも、遺体は一年前の。つまり今は骨になっている。骨になった状態ならそこに留まらず、いろんなところに散らばっている筈。だけど骨は見つからない。いや、見つかったのかもしれないけど、誰の記憶にも残っていない」
「槙原さんが言いたいの、解った。見つかって騒ぎになる前に記憶を消しているから、まだ事件にされていないって事でしょ?」
「流石和美さん、その通り!!大沢君とはやっぱり頭の出来が段違いに違うね!!」
「なんでそこで俺を落とさきゃなんねえんだ!?」
ヒロが目を剥いて突っ込んだ。お前が質問したからだろ。つうかそれがお前のポジだからだ。
「やっぱ黒潮の女、ぶん殴っても口を割らせた方が良かったんじゃねえか?」
木村が後手に回っている感が悔やまれると、そう発した。
「いや、あの場合はアレがベストだよ。あの儘留めておいたら、多分増援が来ていた」
遥香の言う通り。それは上杉とか言う女も明言を避けてはいたが、やんわりとは言っていた。児島さんも長居は拙いと言っていた。
「緒方と河内が居るんだろ?それでもダメだっつうのか?」
「足手纏いが多かったからね。私、麻美さん、児島さん。そして向こうは好意を植え付ける技を持っているし、多分だけど、数に押されて私達が人質に取られちゃうから」
「逃したのは逆に僥倖じゃない?緒方君、槙原さんと日向さん、人質に取られたら、多分殺しちゃうよ?相手を」
「そこは河内がどうにかして……」
「こいつがマジギレしてぶっ殺そうと思ったら河内だけじゃキツすぎるだろ。止めるっつうならこいつをぶっ潰すって覚悟がねえと無理だ。大人数相手にして、更に女子を人質に取られて、更にマジギレした隆相手に、河内がそこまで動けると思うか?」
「…………」
黙っちゃった木村だった。不可能だと思ったんだろうな、うん。
「まあ、何だ?とうどうさん?の拠点作りは失敗に終わったって事だろ?三上を潰したようなもんだから」
松田が話を切り替えす。そもそもその話の為に繰り返しを教えたようなものだからな。
「まだ断言はできねえが、多分としか」
「なんで?三上は使えねえって事になったんだろ、向こうにしては?」
「そもそも兵隊を泊める宿が必要だっつう話だからな。三上って野郎が断ろうが、何なら力付くって手もあるだろ」
「ふーん。まあ、そうなったら俺が何とかするから」
頼もしい発言を戴きました!!流石松田!!頼りになるぜ!!痺れるし憧れる!!
「具体的にはどうするつもりだ?」
ヒロの分際で対策を聞こうとするとは。馬鹿だからじゃあ頑張って!!って激励だけでいいだろ、お前は。
「向こうが数で来るんなら、こっちも数を出す。兵藤って奴の力は解んねえけど、数なら多分こっちの方が持っていると思うし」
そうは言ってもヤマ農は忙しい学校で、こんなくだらねー事に参加できる生徒は限られてくると思うが……岸の山郷高校も質も数も揃えるのが難しそうだし……
「数って、何員くらい揃えられるんだ?」
「多分100は。直ぐに動けるとなれは半分くらいになっちゃうけど」
ビックリしたのは木村もヒロも俺もそうだった。100!?友好校協定内でも結構な人数だぞ!?
「ヤマ農に100も戦える奴がいるのか!?」
木村の驚愕の弁に全頷いた。何度も。
「ああ、勿論ヤマ農だけじゃねえよ。山郷高校の岸一派も仲間だし、沼地高校、中須工業の中学からのダチにも協力を得られたし、バイクの免許取りに行った時、氷山工業の奴とダチになった時に協力頼んだら快く応じてくれたし……」
超ビックリしたのはやっぱり木村もヒロも俺もそうだった。ヤマ農独自で友好校作ってんの!?
「ま、松田、その、ヤマ農の友好校って何校くらい……?」
何か知らんがおっかなびっくり訪ねてしまった。
「友高校つうか、なんつうかな……ただ他校のダチに頼んで仲間になって貰っただけだから。ほら、ウチは忙しいから、俺が動けない時に代わりに頼みたかったし。岸なんてまさしくそうだったしな」
「だ、だから何校くらいなんだよ……?」
何か知らんが木村もおっかなビックリ訪ねていた。
「学校で言えば7校くらいかな?」
7と聞いてヒロもおっかなびっくり突っ込んだ。
「7校もかよ……そりゃ数は100はあるよな……」
「だけど質は保障できねえぞ。お前等レベルは流石に居ないからな。近いのは砂丘高校の赤城くらいだし」
いや、知らんけど。砂丘高校の赤城なんて初めて聞いたけど。と、俺は思ったが、木村は違った。
「砂丘?マジか?あそこと協力関係になったってのか?」
まさに身を乗り出して訊ねた。松田、若干引いて答える。
「お、おう、まさか砂丘と協力できるとは思わなかったけど、やっぱ赤城のシンパだけだぞ、協力できるのは」
「木村、砂丘って?大洋の入り口の高校って認識しかないんだけど」
言うなれば南海の逆方向。ヤマ農は奥まった所にあるが、国道沿いに限って言えば、最も白浜に近い学校だ。
「……その南海と互角の力を持っているってもっぱらの噂だ」
ほーん、と俺。じゃあなんで今まで名前しか聞かなかったの?
「猪原在学中はどうしても南海が上に居るような状態だったからな。南海の保護から外れて、尚且つ潮汐ともやれるっつう学校な筈だ。大雅の話じゃな」
「今は猪原が居ないからその限りじゃねえって事か?南海とも揉められるような学校だって事か?」
ヒロの質問に躊躇して首を縦に振る。
「じゃあなんで友好校協定に組み込まなかった?」
「単純に猪原が居たからだ。それに、南海との友好校の切っ掛けは須藤真澄、つうか春日の噂関連の流れだろ?だったら砂丘よりも南海だろ」
それもそうだな。あの時は他にかまけている暇も無かったし。
「んで、赤城って?」
「そこは解らねえが……松田」
「うん、赤城って奴は喧嘩が強くて有名なんだけど、ダチを限定しているつうか、要するに取り巻きが居ない奴なんだよ。だから数はそんなに持っていない」
ふーん。まあ、糞じゃなさそうだからいいんだけど、松田が糞と友達になる事は無いと思うからいいんだけど。
「お前と戦ったらどうなる?牧野を倒したヤマ農の松田と喧嘩したら、その赤城って野郎はどのレベルだ?」
「だからマグレだって何回も言ってるだろ。赤城は強いと思うよ。多分俺の方が負けるんじゃねえかな」
お前は謙遜も無い、本心でそう思っているから参考にならないんだけど。それをわざわざ聞いちゃう木村も案外ミーハーなんだなぁ。
遥香が大きく感心して頷いた。
「松田君、慕われているんだねえ……友好校協定の中でもう一つ連合がある状態だよ、それ。そんなに仲間を集められるなんて、ウチのダーリンじゃ不可能だよ」
黒木さんも感心して大きく頷く。
「明人とは違った感じだよね。明人は怖いから言う事聞くけど、松田君は人柄で言う事聞かせられるみたいな感じ」
「「なんでディスられなきゃいけねえんだ!?」」
俺と木村が同時に突っ込んだ。松田の株の爆上げのあおりを喰らって下げられた感じだった。
「いや、なんだかんだ言って、友好校協定に入りたいって連中も多かったしな。何度も釘を刺したんだけど。これは友好校協定とは関係ない、個人的な頼みだって」
「それでお前が面倒を見る事になったのか?」
「いや、あくまでも俺が動けなかった時の為の手助けを頼んだだけだから。何処の学校も友好校協定に興味があるようだから、なんだったら木村から話してみれば?赤城はちょっと違ったけども」
「何が違うんだ?」
松田、俺の顔を見て続ける。
「赤城はさっきも言ったように仲間を選ぶから数は無いけど、喧嘩は強い。それでも頼みに行ったらいいよって言ってくれたんだけど、お前に興味があったから乗り気になったって」
「は?俺?」
とんと心当たりがない。俺は何もしていないのだが。
「お前って友好校協定から外れている危険人物だろ?それでもダチは友好校協定の頭だし、緒方自身も大物とやって負け無しだしで有名人なんだよ。取り巻きが居ない赤城と被る部分もあったけど、赤城自身は猪原と戦おうとは考えた事も無かったって言ってたし、南海全部と単独で喧嘩しようとは思った事も無かったで、自分が色々甘いって思い知らされたって」
「ああ、こいつ後先考えない馬鹿だからな。的場も猪原も結果そうなっただけだ」
「なんでそこで俺をディスるんだヒロ!?後先考えないってのは確かにそうだけど!!」
つうか後の事を考えて喧嘩した事はあまり無いっての!!それは誰だってそうじゃねーのか!?まさか俺だけだって事はないだろ!!
「まあ、緒方の事は置いといて、俺としちゃ友好校協定校探しはもう終わった事だから、そいつ等の面倒はやっぱお前が見ろよ松田」
そもそも春日さんの噂の出所を探すための協定が大部分を占めていた筈だからな。木村の言う通り、組織作りはもう終わった筈だ。
「面倒って、まあ、俺が頼んだ事だしな。それはしょうがないけど、流石に敵校からは外してくれるだろ?」
「まあ、俺はな。お前も知っての通り、俺達のダチにはその手の野郎の顔を見ただけでぶっ叩く狂犬が居るだろ?」
木村が発したら全員俺を見た。
「なんだよ?何度も言うが、俺は友好校に関係ないんだからな?糞がムカつく事をしたらぶっ叩くのは変わらないぞ。それは西高も同じだ」
「そりゃ解っているし、ウチも黒潮も南海もお前のツラ見たら逃げろっつっているしだが、松田の所は違うだろ?沢山の学校が協力してくれてるんだからよ」
「それに、数はやっぱり必要だよ。さっきの話じゃ訳解らない力使う人達が敵なんでしょ?緒方君の主張は今更の事だけど、せめてその人達はいきなりはやめた方がいいんじゃないかな?」
倉敷さん、松田のバックアップの如く俺をやんわりと説得するが、糞が糞らしい事をしたのなら、俺のやる事は変わらない。
「何をどう言われようが、そこは揺るがない。糞が糞らしい事をしたのならぶち砕く。松田の頼みをきいてくれた学校の奴だろうが、そこは変わらない。だから松田、お前から言っといて。緒方の顔を見たら逃げろって」
全員でっかい溜息をついた。しかし、答えも解っているようで――
「まあ、そこは言っとくよ。つうかお前の伝説は正にそうだから、今更感がハンパねぇしな。猪原、つうか南海と揉めそうになった状況も殆どの奴が知っているし、ダチがいる学校だろうが関係なく戦おうとするしでさ」
「こいつ、黒潮の奴等とも普通に喧嘩しようとしたぞ。河内が入院した時に」
「お前もやっていいっつったよなヒロ!?」
だってあれは俺は悪くないし!!いきなり喧嘩売るような奴はぶち砕いてもいいだろ!!つうか松田も倉敷さんもいたから知ってんだろうが!!
「まあ、緒方が言う友好校と関係ねえってのは大沢や生駒もそうだからな。やっぱ気を付けて行動しろとしか言えねえよな」
「……敵とダチとか、今更ながら考えると訳解んねえ繋がりだよな、お前等」
松田が今更のように言うが、俺は木村と友達であって西高全部と友達じゃない。それは黒潮、南海も同じだっての。何回言わせるんだよ俺のスタンスを。
まあ兎も角、ヤマ実に拠点を作ろうとしたら松田が何とかする事になった訳だ。
後は向こうがどれだけの戦力を持っているかだが、これはさっぱりわからん。解っているのは丘陵のトーゴー、黒潮に来た上杉って女、今話しに出た連山の兵藤って奴くらいだ。
やっぱ近い内に行ってみようか?丘陵のトーゴーをぶち砕きに。程よく壊したら流石に口割るだろ。
……国枝君が生き死にの問題になるって言ったか。やっぱ駄目だな、一人では。最低でも俺を止められるストッパーが居ないと殺しちゃうかもしれないし。
「ところで松田、免許取ったか?」
ここで木村が豪快に話題を変えた。
「ああ、取ったよ。バイクもある。俺は50のスクーターでいいやと思ったけど、和美がなぁ……」
チラッと倉敷さんを見る松田。倉敷さん、当たり前だと言わんばかりに口を開く。
「だって緒方君達って400㏄のバイクなんだよ?吉彦だけスクーターなのはおかしいでしょ?」
「おかしいのか?通学程度にしか使わねえのに?」
「遠出するならなるべく排気量が大きい方がいいって自分でも言ってたじゃない?」
なんか言い合いになりそうだったのでヒロが気を利かせて間に入った。
「まあまあ、確かに遠出で50㏄は疲れるし、通学だけじゃ物足りなくなるだろ、間違いなく。んで、何買ったんだよ松田?」
「グランドマジェスティ400」
「結局スクーターじゃねえかよ」
木村が突っ込んだ。でも400って事は赤坂君が買ったバイクと同じ感じか?
「私としては、木村君みたいなバイクの方がいいって言ったんだけど……」
「いいだろ、400なんだから。しかもタダだし」
「え?なんでタダ?」
「貰ったからタダなんだよ。従兄が乗るんだったらやるって言ってくれたから貰ったんだ」
バイクを貰うって結構あるんだな。大雅も確かそうだろ?俺も殆ど貰ったようなもんだし。
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