緋色の徹甲弾
霧雨 定月
エピローグ
エピローグ〜過去の記憶〜
私は祖国の為に戦った。
塹壕を乗り越え───
地雷敷設地帯を通り抜け───
銃弾飛び交う戦線───
砲弾飛び交う戦線───
爆撃による硝煙が舞う戦線───
兵站が破壊された───
味方歩兵が蹂躙された───
味方機甲師団が壊滅した───
塹壕が破壊された───
そんな光景はよく見たものだ
そして、私も数多くの敵を葬ってきた
エルナ─それは私に与えられた愛称であった
私は特に多くの敵を葬ってきた。
しかし終わりは意外に呆気ないものであった
敵に包囲され、
御自慢の8.8 cm PaK 43(アハトアハト)
を炸裂させる前に蜂の巣にされてしまった
そう、私はドイツ軍の戦車Tiger IIなのだ─
それもTiger IIの中でもトップクラスの撃破
数を誇っていたエルナ・ティーガーである。
包囲された時は足回りが悪く、右履帯が泥沼にはまってしまい、撃破されてしまった。
私の乗員は製造から撃破を通して、同じメンバーで構成されていた。そして、彼等もまた私と運命を共にしたのだ。
日頃彼らはエルナと共に死ぬ─
と決めていたそうだ。
だから脱出が出来たのにも関わらず、
脱出しなかった。
彼らは勇敢であった…
彼らには殉職後に勲章が与えられた。
私が撃破される時の夢は時々見ることが
ある。見たくも無い夢ではあるが、
大切な人との最期の出撃、
最期の思い出でもある……
この夢を最初に見た時は確か
新たなる世界で目覚めた時であろうか───
次回予告 第1話
「新たなる世界」
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