蒸気屋すずさんと七色の音の雨 #終わった世界のイリオモテ
デバスズメ
本文
「あ、雨か……」
すずさんは、今度から家の外を眺めます、入道雲と一緒に、ざあざあと雨がやってくるのが見えました、ここはイリオモテ、遠い遠い昔は、西表島と呼ばれていた島です。
遠い遠い昔、空からとても強い光が降り注ぎ、世界は終わりました。衛星砲というとても恐ろしい兵器が、たった一度動いただけで、世界は終わってしまったのです。
それから長い長い時間がたちました。生き残った人間たちは、ほそぼそと命をつなげ、今となっては、それなりに平和な世界ができました。
すずさんは、そんな終わった世界のイリオモテに暮らす15歳の女の子です。ざあざあと振る雨に備えて、すずさんは急いで雨を集める道具を準備します。それもそのはず、振ってくる雨は、虹色の
「お父さん!音雨が来たよ!」
「ああ、こっちも準備はできてるよ」
すずさんの急かす声に、お父さんが答えます。すずさんの家は蒸気屋さんです。蒸気鍋や蒸気補助輪、その他、いろいろな蒸気機関を売っています。
すずさんのお父さんが用意しているのは、音雨のろ過器です。虹色の音雨は、遠い陸から来た音がたくさん詰まっています。それを集めて整えるのも、蒸気屋さんのお仕事の一つです。すずさんは、バケツを用意して音雨を集めます。
……しばらくして、バケツが一杯になりました。すずさんは、大きな蒸留器の元に、虹色の水が一杯になったバケツを持っていきます。すずさんのお父さんは、それを蒸留器に流し込み、蒸気機関に火を焚べます。
ぼうっ、と火が灯り、段々と虹色の水が暖められます。すると、少しずつ水蒸気となって、7階層の冷却槽へと移動していきます。それはまず、一番下に紫色の液体となって溜まっていきます、
それから順番に、青、水色、緑色、黄色、橙色、そして赤と、7色に別れた液体が、7つの瓶に溜まっていきます。ゆっくりとじっくりと、音が分けられているのです。
……しばらくすると、バケツに溜められた虹色の水がすっかりなくなっていました。
「じゃあこれ、借りてくね!」
すずさんは言うが早いか、水色の水が入った瓶を持って、自分の部屋へと戻っていきました。
「やれやれ……」
すずさんのお父さんは、いつものことだと、すずさんを見送りました。
すずさんは自分お部屋に戻ると、早速、水色の瓶を
水色の
外に降り注ぐ雨の音、部屋を満たす音楽の音、すずさんは、この二つの音が入り交じる時が、とても好きでした。
「……♪」
いつのまにか、すずさんは音楽のリズムに乗って体を揺らしていました。
……しばらくしてピアノがクライマックスの音を告げ、音楽が止まりました。すずさんが余韻に浸る中、虹色の雨は、ざあざあと降り注いでいました。
終わった世界のイリオモテ~すずさんと七色の蒸気雲~
おしまい
蒸気屋すずさんと七色の音の雨 #終わった世界のイリオモテ デバスズメ @debasuzume
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