第46話 秘密の告白
中庭に造られているファィヤーピットで焚き火をしながら、みんなでワインを飲む。エレナだけが、オレンジジュースで乾杯をしている。夜空には満点の星たちが輝き、天の川がはっきりと見える。
トリスタンは、私の気持ちがこれ以上動揺しないようにと、何事もなかったかのように接してくれている。勿論、二人の関係はみんなに秘密だ。
「カレン、スモアって知ってるかい? 」
「ヘンリー、聞いたことはあるけど、マシュマロを焼くんだよね」
「そうだよ、こうやって焼いたマシュマロとチョコレートをクラッカーに挟んで食べるんだよ」
「うわっ、 チョコレートとワインの組み合わせは初めてだけど美味しい! 」
「このポルトガルの赤ワイン・ポートは、甘口なワインでチョコレートと相性の良いワインとして有名なんだよ」
ワイン通のアルフレッドが、ワインの説明をしてくれる。
都会の作られたネオンなど全くない澄み切った星空の下、
「そうだ、アルフレッド。私……あなたに秘密にしていたことがあるの。私のお腹には、赤ちゃんがいるのよ」
「えっ。なんだって! 赤ちゃん……? 俺が、父親になるのか?」
「そうよ」
「やったー!!」
アルフレッドはエレナを抱き寄せ、喜びのキスをする。アルフレッドは、エレナのお腹を撫でながら微笑んでいる。
いいな、アルフレッドとエレナ。幸せな光景を見ると心が温かくなってくる。ちょっぴり羨ましくて、二人が眩しく見える。
「アルフレッド、エレナ。おめでとう!!」
「俺たちもおじさんになるんだな」
トリスタンとヘンリーも喜びを隠せずに、乾杯をしている。
「ねぇ、カレン。付き合ってる人とかいるの? 」
「おいおい……エレナ、突然何を言い出すんだい? ジュースで酔ったのかい」
アルフレッドが、笑いながらエレナの顔を見ている。
「あなたと……本当の姉妹になりたいわ」
エレナの質問に、少しドキッとしながらも、何も答えられない。
エレナは何か気づいているのかもしれない。女の勘は恐ろしく敏感だ。トリスタンの顔をそっと見ると、彼は輝く満天の空を眺めながら、ワイングラスを傾けていた。
From:カレン
【 編集長、私……。今回の取材、失敗かもしれません😢】
編集長にメールを送っても、インターネットもままならないこの場所からのメールなど、届くはずもない。これまで、時差があっても、私からのメールにはいつでもどんな時でもすぐに返事をくれていた編集長からの返信はいつまでたっても返ってこなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます