第33話 恋敵と婚約!?
カレンとアンソニーがドライブから帰って来たのは、夕方の六時をちょっとすぎた頃だった。
【サプライズパーティの準備はバッチリ。いつ帰って来てもいいわよ】とデビットからメールが送られて来ていたので、アンソニーの到着をゲスト達が隠れて待っている。
何も知らないアンソニーが玄関を入り、リビングに到着すると……。
「Happy birthday!! 」✨
「お誕生日おめでとう!! アンソニー✨」
炸裂するクラッカーの音とみんなの声に一瞬ビクッした表情を見せたものの、驚きを隠せないアンソニー。
「みんな……お祝いに来てくれたのかい。驚いたよ。……ありがとう!! 」
デビットは、みんなにシャンパンを手に取るように促し、全員が手にしたことを確認するとアンソニーの誕生祝いトースト(乾杯)のスピーチをはじめる。
「アンソニー、お誕生日おめでとう!! あなたの幸せそうな笑顔が見れて嬉しいわ。素敵な恋と幸せな未来を祈って……乾杯!! 🍸 」
「乾杯!! 」
デビットのスピーチにみんながざわめく。
「アンソニーが恋? あの週刊誌の
みんなの前で声を大にして二人の交際を公表したいのをぐっと抑えるアンソニーは、苦笑いをしている。
=== バタン!! ===
そんなざわめきの中、ドアが開けられ、外出していたジーナが駆けよって来て、アンソニーに抱きつき、キスをした。
「アンソニー、お誕生日おめでとう!! そして……みなさん、今日はアンソニーのために集まってくれてありがとう!! 私は今日サンフランシスコバレエのオーディションを受けて来ました。イギリスからこのサンフランシスコに拠点を移し、アンソニーとの結婚に向けて進みたいと思っています。今日こうして発表できて嬉しいわ」
ジーナの爆弾発言にみんなが驚いている。
「アンソニーの相手は、やっぱりジーナだったんだな」
「おめでとう、ジーナ。アンソニー」
こんな状況になるとは……。アンソニーには予測すらできなかった。
うそっ!!
いや……うそだってことは知っている。
ううっ……この場にいるのが辛すぎる。ジーナのすごさを見せつけられて落ち込んでしまう。本当は、大きな声でお付き合いしてるのは私ですと言えたら楽なのかもしれない。でも、私たちの交際はまだ世間的に、秘密の関係にしておかなければならない……これが編集長の命令だ。
いたたまれない気持ちに、賑やかなリビングを後にした。外に出て、気持ちを落ち着かせなければ、心臓が破裂しそうだ。玄関先の階段に腰を下ろし深呼吸する。
「ハァーッ…… あ〜。なんか切ないわ〜」
=== くう〜ん ===
ロキシーが、まるでなぐさめてくれるかのように、すぐそばまで来て、鼻を鳴らしている。
「お前も、本当はみんなと仲良くしたいんだよね。おいで……」
「ロキシー、お前も寂しいよね」
◇ ◆ ◇
「ジーナ。話がある……」
アンソニーがジーナの手を取り廊下へと連れ出す。
「あら、アンソニー。喜んでくれないの。私、これからサンフランシスコに住むの。いつでもアンソニーに会えるのよ。もういっそ、婚約を飛ばして、結婚しちゃってもいいわよ」
「ジーナ。君はわかっていない。僕が愛してるのはカレンなんだ。ジーナ。君のことは、妹としかみられない。今までも、これからも…… 」
「私は、それでもいいわよ。カレンなんて、どうせアジアのパッとしない
◇ ◆ ◇
ロキシーを抱きしめながら、胸の痛みを誰かにわかってもらいたくて、編集長にメールを送る。
From:カレン
【編集長、私とアンソニーが付き合ってるって、みんなに言っちゃったらダメですかね? 】
From:康代
【そりゃ、ダメに決まってるでしょう !! 取材するのに、都合が悪いわ。何があったか知らないけど、公表しようがしまいが、本当にお互いに好きだったら、気持ちが揺らぐことはないでしょう。今は、結婚してたって罠を仕掛けてくる人間がうじょうじょいる世の中なのよ】
From:カレン
【ジーナという強烈な
From:康代
【あら、それは大変ね。アンソニーがどう出てくるか、じっくり観察させてもらうわ】
From:カレン
【そんなぁ〜。編集長……むごすぎます!! 】
横でメールのやりとりをみていた信二が康代に尋ねる。
「今度は、どうしたの? やっぱり、ジーナが登場して来たんだね。前にアンソニーの別荘に遊びに行った時にジーナに会ったけど、彼女のアンソニーに対する執着は凄まじかったからね」
「アンソニーが、どうするかよね。ここをうまく処理できないようなら、カレンとは破局したほうがいいのよ。優しいだけじゃ女を幸せにはできないわ。ただの優柔不断なだけ。……いざという時には、強さも必要なの」
「やっぱり君には負けちゃうよ」
「あらっ。私は本当のことを言ったまでよ。大丈夫……信二は優しくて、強いから大好きよ」
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