第18話 ジャン=クラウド編①鬼の編集長!

 「ただいま帰国しました!」


 成田から直行で『Fabulous ・ファビュラス』のオフィスへ顔を出した。3週間ぶりの出社は、ちょっと緊張するが、編集長・康代が一番奥の机から手をヒラヒラと振っている。恐る恐る、近寄ると……


加恋カレンおかえり!! アンソニーの記事はすごく評判がいいわよ」


「ありがとうございます。でも……あのっ……お話があるのですが……」


「アンソニーと恋落ちしても、仕事は仕事よ。アンソニーのことは、ひとまず忘れることね。はい、これが次の取材計画書よ。出発は1週間後だから、頼んだわよ」


「編集長、人使い荒くないですか?」


「何言ってるのよ。世界の男図鑑シリーズを早く完成させて、アンソニーと一緒に暮らしたいんでしょ。信二から聞いてるわよ。世界の男図鑑を完成させたあかつきには、カレンの恋愛禁止令を解いてあげるわ」


「アンソニーと恋落ちしたのに、まだ……恋愛禁止令は撤回されてないんですか!?」


「当たり前でしょ。もう……とにかく仕事よ、仕事!!」


 アンソニーは、この仕事が終わるまで待っていてくれると言った。アンソニーは信二さんと親しいから、二人の関係はすでに知っている。康代さんも知ってる……はずだよね???



  いや、さっき聞いたって言ってたよね。アンソニーとは、この仕事が終わるまで、認めてくれないってことか……。約束を守れなかったのは、私だもんな……。



 編集長の康代さんから受け取った企画書にとりあえず、目を通す。


 

企画 「世界の男図鑑」

担当  花井 加恋かれん

内容  ハリウッド映画アクションスター

    ジャン=クラウド密着取材

    

 ジャンさんって、アンソニーのチャリティオークションの時に中庭であったあの人だ。


「カレン、ジャン本人から、連絡が来たのよ。あなたに取材されたいんですって」


「偶然、会った時に取材の話をしましたが、……本人から来て欲しいって連絡があったんですか?」


「そうよ。本当は次の取材先は、違う男性ひとの予定だったんだけど、ハリウッドスター直々に指名されたんじゃ、彼を先に取材しない手はないわよ。……それはそうと・カレン。あなた随分と綺麗になったわね」


「いやーっ。お恥ずかしいのですが、スタイリストのデビットに服のセンスをダメ出しされたので、お直しをしてもらいました」


「そうだったの。『Fabulous ・ファビュラス』の編集者がじゃ、読者もがっかりだから、ちょうどよかったわね」


 康代さんとデビットって、実はキャラが似てるのかもしれない。


 綺麗なバラにはとげがある〜……って感じで、二人とも美のセンスは最高なんだけど、時々とげがチクチクと刺さるんだよな。



 こうして、私の次の取材先は、ハリウッド映画アクションスター・ジャン=クラウドが住むロサンゼルスと決まった。

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