学生時代青春できなかった俺は、喫茶店に青春を求める

夏蓮

プロローグ

第1話

─1─

唐突だが、俺は青春をせずに学生時代を終えてしまった。

いや、これだと少しだけ語弊が生じるな、俺は、学生時代周りからはこんな風に思われていた。

と。

何故そんな風にされていたのかって。自分で言うのもなんか癪だが、俺はイケメンなのだ。

それもモデルとしてやっていけるぐらいに。

だからなのか、俺の周りには男しかいなったな。

そう、つまり俺の青春時代は、灰色だったと言うことだ。

そして今俺は、青春を手にするために、喫茶店【アストレア】で働いている。

─2─

「さあ、今日も仕事始めるよ!」

少し男勝りの女店主がそう言う。

「「「はい」」」

そして、俺を含めた店員が返事をする。

それが、ここ喫茶店【アストレア】の朝だ。

「じゃあ仕事に入るように」

「「「はい!」」」

そしておのおの仕事に入っていくのだ。


俺の仕事は、まだ新米だから皿洗いだ。

まだ、こんな仕事だけど、少し頑張れば、ウエイトターになり、そこから俺の青春が始まると考えれば、こんな仕事だって全然苦なんかじゃないな。

そんな日々を送ること3ヶ月。

遂に俺は、皿洗いからウエイトターへと昇格したのだった。

そして、ウエイトターとなって1日目。

まだ、かってがわからず、いろいろ失敗をしてしまった。

でも、先輩方がフォローしてくれたおかげでどうにかなった。

助けてくれた、先輩方が女性ばっかだったのは謎だが。

それからも、俺のウエイトターとしての日常は、続いた。

1年たったころだろうか。俺は、先輩にこんなことを聞いた。

「海津さん、最近俺の格好って変ですかね?」

「ん?いーや、全然そんなことないぞ。むしろかっこよさが際立っているくらいだ」

「そうですか」

「どうしたんだ、そんな考えたりして」

「これは、俺の勘違いかもしれないんですけど、最近女性たちからの視線が俺に向けられているような気がして」

別に俺は、自分の格好が変だとも思ってなかったし、女性からの視線を感じるのも勘違いだとは思っていなかった。

でも、俺は確信が欲しかった。

だから、俺は海津さんにそう聞いた。

「ああ、そのこと。うん、慧君に女の子たちは、もう釘付けだと思うよ」

「そうですか?」

「ああ、だって、前もロッカー室で慧君って格好いいよね!とか言っていたくらいだし」

「まじですか。じゃあ、なんで俺に話かけてくれないんでしょうか?」

「話かけてくれないか。そうじゃないと思うけど」

「どういうことですか?」

「話しかけれないんだよ、慧君。だって、話してかけたら、周りから嫉妬されるからね」

「そうですか」

まただ。なにも学生時代の時からなにも変わっていない。

学生時代も、俺と話してたら周りから嫉妬されるからって話してかけてくれなかった。

なんでそうなるんだろうか。

俺だって、普通の人間だ。

確かに他の人たちよりも、格好いいかもしれない。でも、それがだとか、話したら嫉妬されるとかで話しかけてくれないことには繋がらないんじゃないかと思う。こっちのことも考えてくれって思う。

でも、しょうがないと言われてしまえば、俺に反論する材料があるかと言われたらないと答えるしかない。

それは、唯の自慢だろと言われてしまえば、例え違うと否定したとしても信じる人がいるとは思えない。

だって、こんなこと言えるのは、しか言えないことだから。

「じゃあ、俺はあがるから。あとの片付けよろしくね」

「はい」

それから俺は片付けをして家に帰った。

─3─

家に帰るとそこには、だらしない格好をした妹がいた。

「なあ、瞳。男の前でそんなことするのは良くないと思うぞ」

「いいじゃん、ここにいるのどうせ兄さんだけだし」

「そうか」

俺の妹である藤元瞳ふじもとひとみは、モデルをやっている。

なんでも、可愛いからな俺の妹は。

今では、トップモデルとして頑張っている。

そんな女子高生だ。

俺はある日妹に聞いたことがある。

──お前って男子と話してるのか?

って。瞳も可愛いから話しかけたら嫉妬されるとかそういう理由で俺みたいになっているんじゃないかと思って。

でも、妹から返ってきた言葉は

──普通に話すよ

だった。この時、男子と女子では変わるんだなと思った。

女子は嫉妬深く、男子は本能的だとすれば当たり前のことだ。

「ねえ、兄さん。今日発売の私が表紙の雑誌買ってきてくれた?」

「ああ」

「そう、じゃあ、コレクションに入れておいてね」

「わかったよ」

俺は、妹が表紙になる雑誌は毎回買っている。

自分の意識では、なく妹のお願いで。

そして、妹はコレクションと呼ばれる箱にその俺が買ってきた、雑誌を入れている。

それが、俺が雑誌を買ってきた時の形だ 。

「ありがとうね!あ、そうだ、兄さん、今度私と買い物行こうよ」

「いいよ。俺が仕事休みの時にな」

「うん」

次の日、朝の挨拶で店長がこんなことを言った。

「今日から、新しい女の子のバイトが入る。だから、皆優しくしてやってくれよ」

と。



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