第17話 鍵を握るは誰なのか


「キーマンの可能性がある人物についてだ」


そのビーの一言に各々が反応し、ダースが代表するように確認した。


「もう見つかったのか」

「「…いつのまに」」


リアとシアが同時に言葉を漏らすのをビーは聞き逃さなかった。

ビーは嫌な予感を感じながらも二人に聞いた。


「…ちょっと待て。なんで一緒にいたお前らが不思議そうな声出してんだよ」

「いやだって…そんな人いたっけ?」

「う〜ん…ピンときませんね…」


リアとシアは顔を見合わせた。

ビーはそんな二人の様子にため息をついた。


「…はぁ。じゃあお前らも聞いとけ。まずはこの世界の能力についてだ」


ビーは気を取り直して話し始めた。


「この世界の能力は【コア】と呼ばれ、人が生まれつき持っているものらしい。第二の心臓と言える代物だろう」

「【コア】…そういえば今日戦った彼らがそんなことを叫んでましたね」


シアが試合の記憶を思い出し、そう口にするとビーはそのまま補足するように続けた。


「今日の騎士杯で見えてきた特徴だが、恐らく段階的な解放を必要とするものに感じた」

「段階的な解放ねぇ。あたしたちのものと同じような形式と考えて問題ない?」


ウリウリとフィーの召喚獣と遊びながら、ワーシャは目線すら送ることなく確認した。

その様子を特に気にすることなくビーは続けた。


「まだはっきりとはしないが考え方としては問題ない。だが【コア】の解放についてはリスクを伴うものだろうと予想している。シアリア、お前らの相手してた二人が【コア解放】したときのことを覚えてるか?」


シアとリアはうーんと唸りながら試合のときのことを思い出そうと少し考え、それぞれ答えた。


「私のほうは足止めに気づいた彼が状況転換させるため慌てて使ったように感じましたね」

「ボクのほうはたしか盾持ちの子が指示を出したから解放したって感じだったかな?ちょうど膠着してたから使った感じもあったけど」


二人の話を聞き、ビーは人差し指を立てながら話し始めた。


「少しだけ話はずれるんだが、補足で一つ。実はな、対戦前にあのチームのリーダーの女の子から因縁を付けられてたんだよ」


真剣な表情でそう言ってきたビーにその場の全員が「お前はまたか」といった感情を露わにした。


「…なんかあったとは聞きましたけどいったい何をやってたんですか…」

「なんかやったって話じゃねえんだよ。向こうからの言いがかりだったんだ」


ビーはカエとのやり取りを説明した。

説明を聞いているうちに、部屋中に「絡まれたのはわかったが、お前は美女二人と何をしてたんだ」といった空気に包まれていった。

その空気を感じ取ったビーは取り繕うように笑顔で続けた。


「まぁなんだ、ダース風にいうならケガノコウミョウってやつだな!」


その微妙な空気を変えようとリアが口を挟んだ。


「…たしかにあのときのあのお姉さん、めちゃくちゃ怒ってたもんね。勝つ気満々っぽかったし」

「そう!あの心情の上、プライドを賭けた勝負になってしまったにも関わらず、連中はスタートから本気を出さずに切り札を温存してたんだ。まぁ無名の俺たちを舐めてた可能性もあるが」


渡りに船と声高らかにリアの発言に乗っかったビーは勢いよく話を続けた。

そんなビーの様子を気にすることもなく、ダースは現状の疑問点を挙げた。


「そうなるとなぜ【コア解放】のタイミングを選んだのか、か」

「舐めてたにしても試合の流れ上、明らかにタイミングが遅かった。だからこそ【コア】はタイミングを選ばないと使えない代物なんだろうって答えにたどり着いたわけだ」


ビーがそこまで言い切ると、それを待つようにブラックが声を発した。


「とりあえず【コア】の仕組みに関しては粗方理解した。だが重要なのはもう一つのほうだろう」

「キーマンの可能性の話だな。現状目星を付けてるのはカエ・フレイヤ。今日の対戦相手のリーダーで、俺に因縁をつけてきた女の子だ」

「え?あの人がですか?」


ビーが言ったことにリアは飛び起き、同じような顔をしているシアと目を合わせた。

その二人の反応は予想通りだったのか、ビーは反応した。


「まぁシアリアは気づきようもないだろうさ」

「だが何を根拠に?」


ダースがそうたずねると、ビーは言葉をまとめるように考えながら理由を話し始めた。


「何個かあるんだけど、そもそもキーマンってのはその世界の中で違う性質や特異な性質を持ってるやつが該当するだろう?試合中にあの子のコアに干渉したんだが、あの子のコアが何かに封じられているのが見えたんだよ」


ビーが真面目にそう答えると部屋中にため息が響いた。

呆れながらワーシャが言った。


「…聞けば、コアには力を使うためのリスクみたいなものがあるってのに、そのコアに干渉ってあんた、バカでしょ?」

「…だからここまで警戒されてるのか」


ブラックは苦虫を噛んだような顔で先ほどから取り囲むように点在する気配へ意識を向けながらもらした。

話を戻すようにダースがまとめた。


「とりあえずビーがとんでもない行動をした件に関してはあとできっちりさせるとして、キーマンの話は可能性の話であっても重要な話題だ。一つの目標として設定しておこう」

「過剰な干渉をしたつもりはないんだが…とはいえ現状ではこれ以上の報告はないし、推察するにも情報が少ないからな。俺たちからはここまでだ」


そう言われたビーは遺憾の意といった表情で顔を歪ませたが、そのまま話を締めた。


「それなら次は俺たちか…うん?」


次はダースたちが報告を始めようとしたとき、保護した女の子を寝かしていたベッドの上が動いた。


「ぅぅん…あれ…?」

「お姫様が目覚ましたか」


ビーが言った通り、女の子は寝ぼけた声を出しながらキョロキョロとしていた。

その様子を見て、ダースはフィーに頼んだ。


「フィー、気付けを頼みたい」

「わかりました。リアちゃんちょっとどかしますよ」


そう言われたリアはフィーの邪魔にならないよう起き上がった。

元気な返事をしながら、いまだワーシャに膝枕をしているシアを目にしたリアはピコンと音がなりそうな閃きをした。


「はーい…シアー!」

「きゃっ!?ちょっとリア!?」

「止めなさいよ!もー!」


リアがシアたちに突っ込んでいった。

案の定、共々もみくちゃになりながらも楽しげな姦しさが部屋に響くのだった。

そして謎の少女との対話のときは近い。

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