第14話 魔法の記憶...

クロエはしばらく保管庫内を見ているとさらに奥に広がる部屋を見つけて立ち止まる。

その部屋には円形に本棚が並び、1段上がったところにテーブルがあり一冊の本が置かれていた。

クロエはその本に近づく。

そして本にゆっくりと触る。

(ハート家のものか…ずっと待っておった…)

クロエは驚き後ずさりするが段差があり台座から落ち尻もちをついた。

「痛たあ〜。」

お尻を擦りながら立ち上がる。

「も〜う、なんなの?」

再び本に近づく。

(再び、本を手にせよ...)

声が頭に響く。

声に言われるままにクロエは、本に触れ広がる。

すると本が勝手にページが頭から一番後までめくれて凄い音で本が閉じる。わずかに光っている。

再び、頭に響く。

(すべては、血が知っている。本はもうお主のもの......)

記憶が流れ込んでくる。

その走馬灯のような映像に耐えきれず、クロエは倒れ込んだ。

(我が名は、妖精族が作りし魔道書【メモリーブック】記憶の魔法である。)

そして、光は消え辺りも静かになった。


マリアは、一通り保管庫を見回すと帝国兵のいた場所に戻る。

すると先に飽きて戻っていたロバートと合流する。ロバートは魔剣をメンテナンスしながら待っていた。

「マリア、どうだった?」

「特にこれというものはなかった。確かに古代兵器って言う本は見当たらないみたかった。」

「そうだったか。ところでクロエは?」

「あれ?ロバートといると思ってた。」

「俺は1人だったぞ!」

2人は顔を見合わせて声を揃えて言う。

「迷子だな。」

2人はクロエが向かったであろう方向に歩き、あの円形の本棚のところに向かった。


そして、台座に倒れるクロエを見つける。

「クロエ!」

マリアが駆け寄り。

ロバートは辺りを警戒して近づく。

マリアはクロエの身体を揺らして名前を呼ぶ。

「クロエ。クロエ。しっかり、」

するとクロエは目を開けて一言。

「マリー、おはよう。」

マリアは呆れてようにクロエの背中を押して起き上がらせる。

「何があったの?」

「そこの本を触ったら急に色んなものが見えて....」

「これ?」

マリアは台座の上の本を指さす。

「うん。これ持ってくよ。」

「なんの魔道書なの?」

「わかない。」

クロエは立ち上がり、本を手に取る。

「よろしくねぇ。」

微笑むと持っていたバックに本をしまった。


そしてマリアたちは、出口に向かって歩き出した。大きな扉を開け螺旋階段の部屋に出たと思ったのだが、時間が経って螺旋階段がまっすぐ出口まで向かう階段に変わっていた。

「これなら楽チンだね。」

「魔物はまだいるみたいだから注意してよ。」

少し降りると円形に広がったおどりばに大きな本が転がっていた。

クロエが通り過ぎようとすると本が急に開きページがめくれる。しばらくするとあるページで止まり蒼い炎があがる。

「もう出口だっていうのにヤバいのくるよ。」

「うえー、また戦闘。」

クロエはダルそうに武器を構える。

「出てくるよ。」

ロバートもそう言うとボロボロの身体で剣を構える。

本は蒼い炎の勢いをまし、火柱となるとかなりの高さまでになると火が消えそして再び光り魔物が現れた。

その姿は、頭は牛のような角があり体は熊のような大きな体で手足は熊よりも長く、爪も大きい魔物だった。

「マリア、魔法でなんとかできそう?」

「準備する。」

マリアは魔法の準備を始める。

「クロエ、時間を稼ぐぞ!」

魔物は右前脚を大きく振り上げロバートに襲いかかる。

ロバートは構えている剣で滑るように魔物の爪を受け流す。

すると魔物は体当たりをする、受け流したすぐにロバートは剣で身体を守りそのまま後ろに吹き飛ばされクロエの前まで飛ばされる。

クロエは斬撃を飛ばして応戦するが全く効いてるそうには見えなかった。

「ロバート、大丈夫?」

「あと一発食らったらへばっちゃうかも」

「マリー、まだ?」

「もうちょい。」

ロバートは構え直す。

ボオオオオオオオオオオーー

魔物は大きな声で叫び。

すると魔道書が上から落ちてくる。

一冊の本がページがめくれるすると魔物の体に炎が纏付く。

「あいつ、体にエンチャントしやがった!」

「気をつけてロバート。」

クロエはバックから魔法書を取り出し左手に抱え少し後ろにさがる。

その間にマリアの準備が終わり、大声で叫ぶ。

「ロバート、離れて!」

光が形をなして集まり出す。

「光魔法ー。構築せよ。光球フレイル。」

するとマリアの周りに2つの光の球が浮かび漂い始めた。大きさはマリアの頭と同じくらいの大きさだ。

するとマリアは手を空に向けて魔物に向かって振り下ろしながら唱えた。

「圧せよ。信仰なる光の一撃ライトスター。」

光の玉は2つが1つになりマリアの手が描いたように空にあがり魔物の真上から落下した。

それは魔物に直撃し潰してしまったように見えたが、魔物は前脚にエンチャントを移し光の球を受け止めた。

そして、球に爪を立てて切り刻んでしまった。

「嘘ー」

マリアはその一言を言い膝から崩れ落ちる。

「マリア、立て!次だ!」

ロバートは魔物の敵視を取りながら叫ぶ。

クロエは魔道書を開こうとしたが全く開かない。すると頭にある呪文が響き渡る。

正面でロバートが剣を振るい魔物と応戦している中クロエの周りが静かに聞こえた。

小さな声でつぶやく。

「魔道書展開魔法ー。」

すると魔道書が光表紙が開く。

クロエは続けた。

「ストーリーオブフェアリー」

今度は魔道書のページがめくれてあるページで止まった。そのページにクロエは目を通して読み上げた。

「妖精魔法フェアリーベル」

クロエの近くに小さな羽根を持つ小さな妖精が現れ小さなベルを鳴らす。

すると魔物の体を纏っていた炎が吹き消えた。

「クロエまで魔法使えるのかよ。」

ロバートはつぶやくと好機と見て攻撃を受け流してカウンターで切りつける。

魔物は腹を切られ後ずさりをする。

「妖精魔法フェアリーブレス」

クロエは畳み掛けるように唱える。

妖精は口元に両手を揃えて魔物に向けて息を吹きかける。

するとかまいたちのような風が魔物を襲う。

魔物は切り刻まれて崩れ落ちる。

また魔物は蒼い炎に包まれ消えていく。


「なんとかなった〜。」

ロバートは腰を床に下ろす。

「クローズ。」

魔道書はその言葉で開いたページを閉じクロエの手元に戻る。

「マリー、大丈夫?」

「うん。」

「ここ出よう。」

3人は出口に向かいまた階段を降り始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る