ハルシュカの幻

坪井靖洋

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 ――犬骨折って鷹の餌食。




 気のきいたことはひとつも言えない。あまり大きな声で話したいわけでもない。呑んだくれた晩、二軒目の酒場で話すような昔話を書きたくなった。けれども私は、紙上で映えるような輝かしい記憶を持ちあわせていない。だから、これから書くのは体験したような気のする嘘だ。私はあまり人望のあるほうではないから、この話は私の都合のよいように書いてゆきたいと思っている。あらゆる場面で虚栄を張るけれども許してほしい。嘘でしか気持ちよくなれない人だっている。






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