ミス・コリンズ

mo_modoki

第1話


まったく少しの間違いもございません、といった様子で、ミス・コリンズはその切符を駅員に見せた。


僕は、スクールが早く終わる日でも、いつでも必ずママが持たせてくれるヌガーのようなキャラメルペーストがたっぷりと入ったアベックトースト(ママは絶対この方が美味しいわよ、と言っていつもペーストをたっぷりと入れた)を食べるためにセントラル・パークにでも行こうかと思っていて、駅でミス・コリンズの姿を見かけ、正直かなり驚いていた。


ミス・コリンズは最近僕の家の近くに引越してきた女性で、まずガリガリに痩せこけていた。

ママいわく、

「なにか悪い病気をお持ちになっているに違いないわ。だって膝も頬もシワシワなのに、あれで27歳ですって!(ここでママは大げさに肩をすくめてみせた)私が27の時と言ったら!」


34歳のバースデイパーティを、少しばかりパパに無理をねだって、マンハッタンで一番のホテルで盛大に執り行ったばかりのママは、確かに見かけだけで言ったらミス・コリンズより若く見えるかもしれなかった(ただし、ママがすっぴんだったらわからないぞ、と僕は個人的に思わなくない)。


ガリガリだがどこか気品ある立ち振る舞いで、ミス・コリンズはいつも鼻をツン、と上に向けて、周りの全てなど眼中にございません、という様子で、コツコツコツコツ、と、どこへでも歩いて行ってしまうのだった。



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