杉三中編 金属鋏

増田朋美

第一章

金属鋏

第一章

公園の、秋祭りに来ている杉三と蘭。

杉三「相変わらずの賑わいだなあ。」

蘭「まあ、お祭りというものはいつもこうじゃなきゃおかしいよな。毎年のことだけど。」

杉三「でも、年々、参加者は減っていると聞いたけど?」

蘭「そうかもしれないが、それでもにぎやかだよ。人は多いさ。」

杉三「そうだね。蘭、うまいもの買って、帰ろうぜ。」

蘭「そうだね。」

二人、出店に向かって移動していく。

杉三「あれ、空がやたら暗くなってきたよ。」

蘭「へ?」

と、空を見上げる。黒雲が空を覆っており、今にも雨が降りそうである。と、同時に雷が鳴りだして、車軸を流すような大雨が降ってくる。

蘭「わあ、降ってきた!」

杉三「どうしよう!」

蘭「どうしようじゃないよ。着物がびしょ濡れになっちゃうだろ、どっか、雨宿りさせてもらう、カフェでも探そう。」

杉三「そんなものあるかよ。」

蘭「あるかって。」

周りを見渡すと、そこは公園。屋根のあるものなどない。

蘭「よし、こうなったらうちまで車いすで行くか。タクシーを呼ぼうにも、ここまでの大雨では、スマートフォンが壊れちゃう。」

杉三「もう、びしょ濡れだよ。」

蘭「黒大島なんか着るからだよ。そんな高級な着物、日常的に着ているなんて、杉ちゃんだけだぞ。」

杉三「洗って干せばいいじゃない。」

蘭「洗うなんてできないよ。とにかく、その着物は処分してね。」

杉三「しないよ、処分なんか。」

蘭「とにかく帰ろうか。」

二人、雨の中を車いすで移動し始める。すると、前方から一台のワゴン車が走ってきて、二人に向かって泥水をかける。

蘭「わあ、もう泥だらけじゃないか!」

杉三「本当だ。」

蘭「まあ、こういう事もありえるか、、、。」

と、ワゴン車は、杉三たちの前で止まり、運転席の窓が開いて、乗っていた女性が、杉三たちに声をかける。

蘭「あれ、誰だろ。」

女性「申し訳ございません、急いでいたものですから。あの、もしまだ時間がおありでしたら、うちで、雨宿りしていってくださいよ。お二人とも乗っていただけますか。」

杉三「本当?」

女性「ええ。食べるものならありますので。」

杉三「ああ、そうですか。じゃあ、そうさせていただきます。」

蘭「本当に、ついて行ってしまっていいのかなあ。」

女性「ええ、かまいませんよ。別に怪しいものではありませんし。ただ、お二人に悪いことをしてしまったので、お詫びしたい気持ちもありますので。」

蘭「そうだけど、見ず知らずの人にのっけてもらうというのはちょっとね。」

杉三「いいじゃないの?せっかく言ってくれるんだからさ。のっけてもらおうぜ。」

蘭「杉ちゃんは本当に疑うってことを知らないんだな。」

杉三「大丈夫だよ。このおばさんは決して悪い人じゃない。」

蘭「ちょっと、杉ちゃん、おばさんなんて。」

女性「いえいえ、大丈夫です。おばさんでいいですよ。じゃあ、後ろのドアを開けますから、一人ずつのってください。雨、さらにひどくなるみたいですし、早くのらないと、風邪ひいちゃいますよ。」

蘭「でも、僕たち、どうやって乗ったらいいんですか?」

女性「今、開けますから。」

蘭「開けますからって。」

女性がボタンを押すと、ワゴン車のトランクのドアが開く。そして、車いすを乗せられる、スロープも出てくる。

蘭「すごい!介護タクシー並みだ!」

杉三「大丈夫だ。こういう設備を持っている以上、悪い人じゃないや。」

と、スロープにつかまって車に乗り込んでしまう。

蘭「じゃあ、お言葉に甘えて。」

と、杉三に続いてワゴン車に乗り込む。

女性「じゃあ、行きますから。しばらく乗っていてくださいね。」

蘭が乗り込んだと同時にトランクのドアが閉まり、エンジンがかかる。その同時に、猛烈な雨が降ってくる。

女性「やっぱり、降ってきましたね。自力でおかえりになるのは無理があると思っていましたよ。」

蘭「どうもすみませんね、奥さん。それにしても、こんなに設備の整った車を持っているなんて驚きです。一体、どちらにお住まいなんですか、」

女性「ああ、この公園から、15分くらい走ったところです。なかなか、こっちまで、出てくることはなかったんですけどね。今日は、たまたま、買い物に出たんですけど、こんな雨に降られてしまって。」

杉三「僕らはお祭りにきて、雨に降られちゃったよ。」

女性「そうですね、最近、急に雨が降ってくることが多くなりましたね。まあ、こういう事があったときは、お互い様だと思ってくれればいいですよ。ああ、そうだ、名前を名乗らせてください。木本歌津子と申します。」

杉三「木本歌津子さんね。僕は、影山杉三です、杉ちゃんとよんでください。こっちは、親友の伊能蘭です。よろしくどうぞ。」

歌津子「まあ、お兄さんではありませんの?」

蘭「はい、違うんです。」

歌津子「まあ、そうだったのね。なんか、兄弟みたいに見えたから。」

杉三「いや、よく言われるんだけどね。僕らは隣同士の家に住んでいる、友達同士なの!」

蘭「杉ちゃん、そんなにべらべらしゃべるなよ。」

杉三「いいじゃないの。こうしてもう車に乗せてもらってるんだから!」

歌津子「はい。そうやって、オープン人は、私も好きだわ。」

蘭「そうなんだけどね。どんな家なんだろ。こんな介護タクシー並みの車を持っているとは、相当金持ちかな?」

歌津子「いいえ、うちは普通の家ですよ。主人も、亡くなっちゃったし。」

杉三「亡くなったの?」

歌津子「ええ。平凡な生活の、平凡な家ですよ、家族と言えば、息子しかいないし。」

杉三「へえ、息子さんはおいくつなの?」

歌津子「ええ、もう、37にもなるの。でも、ちょっと事情があって。」

杉三「事情?」

歌津子「ええ。まあ。」

杉三「どんな?」

蘭「杉ちゃん、他人の話に、どんどん口を出すのはやめろ。」

杉三「いいじゃないか。お互いオープンなほうが、今の時代暮らしやすいってもんさ。」

歌津子「まあ、明るいのね。」

杉三「明るいよ。暗いのは好きじゃないもん。」

歌津子「ほんと、そうやって明るく暮らせるなんて、うちの息子にも教えてやりたい。」

杉三「いや、バカの話は、大したことない。」

歌津子「いいえ。十分、明るく暮らしていると思いますよ!」

杉三「そうかな。」

蘭「明るすぎて、自覚できていないだけです、すみません。」

歌津子「そのほうが、かえっていいんじゃないかしら。さて、ここですよ。」

と、「木本」という表札のある、一軒家のガレージの中に車を止める。

蘭「ああ、確かに木本って書いてある。」

歌津子「ええ、まあ、中古だけど、知り合いが手ごろな家を持ってきてくれたので。」

杉三「わあ、綺麗なお家。」

歌津子「お世辞がお上手ね。中に入って、軽いものでも召し上がってください。」

杉三「はい、お邪魔します。」

二人を手早く車から降ろす歌津子。その手つきも介護士とあまりかわらない。

歌津子「さあどうぞ。」

と、戸を開ける。家は引き戸になっている。

蘭「へえ、段差がほとんどないんですね。」

確かに、上がり框もないし、土間もない。

歌津子「車輪、拭いて差し上げますね。」

と、手早く二人の車いすの車輪を雑巾で拭く。

蘭「どうもすみません。」

杉三「ありがとう。」

歌津子「いいえ、これくらい、当たり前のことです。じゃあ、どうぞ、中に入ってください。散らかっていますけど。」

蘭「お邪魔します。」

と、中に入っていき、歌津子の後について廊下を移動していき、居間に入る。

杉三「なんだ、何も散らかってなんかいないじゃないか。少なくとも、僕の家よりきっちりしているよ。でも、テレビはある。」

歌津子「杉三さんの家は、テレビがないんですか?」

杉三「杉ちゃんでいいよ、杉ちゃんで。僕は、さん付けで呼ばれるのは嫌いだからな。それに、テレビも、大嫌いなんだ。僕、文字を読めないからさ。」

歌津子「あら、杉ちゃん、ディスレクシアなんですか。」

杉三「いや、あきめくらと呼んでくれ。かっこいい横文字を付けるのは嫌いだ。」

蘭「まあ、本人はそう言いますが、よく知られている名前で言えばそういうことになります。ほかに難読症とも言いますけれども、、、。」

歌津子「まあまあまあ、、、。それは大変でしょう。日常生活のいろんなところが。周りは、文字ばっかりだから。じゃあ、買い物なんかも一人ではいけないわよね。」

杉三「うん、いつも蘭に手伝ってもらってるんだ。」

歌津子「そう、、、。じゃあその報酬は、」

杉三「払ってないよ。友達だからね。報酬なんて、必要ないの。その代わり、うまい料理さえあれば!」

蘭「杉ちゃんは料理の天才なんです。ほかは何もできないですけど。」

杉三「まあ、畢竟して言ってしまえば、僕は世界一のダメな男だ。それでも、こうして、生きているだけでも幸せだなあと感じることはいっぱいあるから、そのままのんきに暮らしているよ!」

歌津子「そう、、、。世界一ダメな男ね。それ、うちの息子もよく言った言葉だったわ。あ、あら、ごめんなさい、いま、着替え持ってきますから、もう少し待っていて頂戴。まあ、私ったら、何をしているんでしょ。お客様をおもてなししているのに。」

杉三「まあ、いいよいいよ。暖房器具でもなんでもつけてくれれば、乾いてしまいますよ。それで何とかするから、大丈夫。それに僕、着物しか、身に着けないから。」

歌津子「ちょっと待っててください。確か主人が使っていた着物があったはず、今取ってきますから、すこし、」

と、言いかけたその時、ガタンガタンという音がして、ガラガラ、ガチャン!と何かが割れる音がする。

杉三「あれえ、雷でも落ちたかな。」

蘭「いや、雷じゃないよ。何かお皿でも割れた音じゃないですか。」

歌津子「またやった!」

と、それまでの穏やかで明るいそれとはがらりと声をかえ、

歌津子「ごめんなさい、すぐに戻りますので!」

と、血相を変えて、台所に行ってしまう。

杉三「何があったんだろう。」

蘭「特別な事情があるんだよ。」

杉三「すごく困っているのかな。」

蘭「わからない。僕らは客人だから、てを出さないほうがいい。」

杉三「ほっとけないよ。」

蘭「杉ちゃん、そうやって他人の問題にすぐに首を突っ込むのはやめたほうがいい。君はさっきも言われた通り、文字も読めないんだし、歩けないんだから、なんの助けにもならないし、かえって迷惑になるだけだよ。」

杉三「蘭はそういうところが冷たいね。僕は、いくら馬鹿でも何とかできるかもしれないから、助けてあげたい。」

蘭「杉ちゃん!」

声「また、大事な時をぶち壊しにして一体何をやってるの!」

と、同時に、平手打ちする音。

杉三「助けよう!」

蘭「だから、手を出すなってば!」

杉三「いやだ!」

と、びしょ濡れのまま車いすを動かして、台所に向かってしまう。

蘭「ちょっと杉ちゃん、ああ、どうして僕がいつも貧乏くじを引くんだ、、、。」

台所のドアを開ける杉三。

台所には、割れた皿と湯呑のかけらが散乱している。

歌津子「本当にもう、余分なことばっかりやって、なんであんたって人は、大事な時をぶち壊しにして、、、。」

やるせない、という表情をして、歌津子は、割れた破片を拾っていた。その近くに、一人の車いすに乗った男性が、両目に悲しそうに涙を浮かべて彼女を眺めているのであった。いや、眺めているしか、できないのだと、杉三も蘭も、その手の位置や、顔つきでわかった。

杉三「あ、君が息子さんか。へえ、結構な二枚目じゃないか。なんでもっと早く僕らにも紹介してくれなかったの?」

男性の口元が、何か言いたそうに動く。

杉三「初めまして、僕は影山杉三です。杉ちゃんと呼んでね。彼は、僕の親友の伊能蘭だ。よく兄弟に間違えられるけど、違うからね。僕は、あきめくらでもあり、歩けないし、まあ、世界一馬鹿な男だと思ってくれ。」

と言って、モップをかけたばかりの床を通って、その男性の右手を握った。

男性「あきめくら?」

杉三「うん。僕、読み書きできないの。だから僕は馬鹿なの。」

男性「学校、、、。」

杉三「行ってないよ。だって、学校なんか、百害あって一利なしだもん!」

男性「いってないの。」

杉三「当り前だ!だって、親切な人たちが、いっぱいいるから、学校のことは気にしないで大丈夫。」

男性「いってないの。」

男性は、杉三の発言にかなり戸惑ったようである。

蘭「少し、発語がうまくいかないのか。健忘失語でもあるのかな。」

男性「ぼ、く、、、。」

杉三「難しいんだったら、一個ずつ答えてくれればそれでいい。君の名前なんて言うの?」

男性「木本、」

杉三「木本?」

男性「藤吉郎。」

杉三「藤吉郎。つまり木本藤吉郎か。なんか言いにくい名前だけど、それが本名だからそれでよしにするよ。僕のことは杉ちゃんでいいからね。僕も影山杉三と呼ばれるのは苦手なんだ。こんな馬鹿な男に、わざわざさん付けをする必要ないから。じゃあ、これからどうぞよろしくね!」

藤吉郎「杉ちゃん。」

杉三「そうだよ、杉ちゃんだよ。」

藤吉郎「杉ちゃん。」

蘭「理解はできるようだな。知能には問題はないのか。」

杉三「で、一体、今どうしたの?話せる?」

藤吉郎「お茶。」

歌津子「お茶?」

藤吉郎「はい。」

歌津子「またそれで逃げる。ほら、しっかり言いなさい!」

藤吉郎「お客さん。」

杉三「ああなるほどね。つまり、彼の言葉を翻訳すれば、僕たちにお茶でも出そうと思って、茶箪笥に手を伸ばしたら、誤って湯呑を落としたわけね。」

藤吉郎「はい。」

歌津子「全く、そうやって余分なことに手を出して!私が、やることなすことをこんな形で台無しにするんだから。そんなことをするんだったら、わざわざ出てこなくてもいいのよ!」

杉三「いやいや、そうじゃなくて、彼の事を褒めてやるべきじゃないかな。たぶん、自主的に、僕らにお茶を出そうと思ったんだろうからさ。」

歌津子「でも、それが結果として、こうして迷惑をかけてしまったんですから。」

杉三「結果じゃなくて、彼がそうしようとしたことを、評価してやるべきじゃないの?」

歌津子「小さな子供じゃないですし。」

杉三「だからこそだ。だって、彼の障害は生まれつきのものじゃないはずだし。」

蘭「ちょっと待って杉ちゃん。どうしてそれがわかるの?」

杉三「においでわかったの。」

蘭「犬じゃないんだから!」

杉三「いや、この家、建て直したばっかりでしょ。その匂いが充満しているよ。」

蘭「立て直したばかりって、中古だって言っていたじゃん。」

杉三「だからそれを、彼が住みやすいように立て直したんだ。」

蘭「どこからわかるんだ!」

杉三「だって、上がり框を撤去した跡があったよ。」

蘭「そんなところまで見るか。」

杉三「蘭が自分で確かめてくれば!」

歌津子「いいえ、蘭さん、杉ちゃんのいう通りなんですよ。この家を買ったときに、この子が生活できるようにと、ありとあらゆるところを、改造したんですよ。私たち、ここに越してきて、まだ、数か月しかたってないんです。」

杉三「ほら。だから、僕たちにいろいろ親切にしてくれたんだよ。」

蘭「親切って、、、。」

杉三「きっと、問題のある家庭だから、それを隠すことに必死だったんだろうね。お母さんがおこったのは、彼がそれを邪魔するような行為をしたからだろ。彼にとっては、ただ、僕らがきて、僕らにお茶を出そうと思っただけで、お母さんの魂胆は読み取れなかったんだ。」

蘭「つまり僕たちは、利用されたのか。」

杉三「そういう意味じゃないよ、蘭。まあ、蘭も経験したんじゃないの?一般的な人とは大幅に違う人が家族にいる場合、なんか馬鹿にいい人ぶってさ、問題なんかないようにみせかけようという気持ち。」

蘭「よくわからないな。」

杉三「僕もわからないけど、感じるんだ。」

蘭「じゃあ聞くが、なんでそう思うんだよ。」

杉三「それは、蘭のお客さんがそういうからさ。」

蘭「どういうこと?」

杉三「あれ、蘭も聞かなかったの?こないだ、蘭が菊を腕に彫ってやったお客さんでさ、リストカットの痕を消してくれと言っていた、女性がいただろ。彼女はこう言っていたよ。うちの家族は、私が心の病気になってから、変に近所の人にやさしくなって、私がいることを、帳消しにしようとする、私は、その気持ちが痛いほどわかるけど、どうしても自分を変えることができないから、この腕に、菊を彫ってほしい。つまりね、このお母さんは、僕たちに親切にしてあげることで、なんとか自分のメンツを保とうとしたんじゃないかな。僕、馬鹿だから、うまく言えないけどさ。」

蘭「杉ちゃん、君はなんでそんなことをいちいち覚えていられるんだよ。客のいうことなんか、聞いていられないよ。彫っているときは。」

杉三「少なくとも、僕の推測に、間違いはないと思う。彼の涙が動かない証拠だ。」

蘭「はあ。」

と、藤吉郎の顔を見る。彼の目から、瀧のように涙が流れていて、彼は泣きたい気持ちを一生懸命こらえているようである。

杉三「ほら、見てみな、涙を拭くことさえできないんだぞ。」

蘭「杉ちゃん、よくわかるな。」

杉三「いいんだよ。だって、君が僕らにお茶を出そうとしてくれたことは、何にも悪いことじゃないしね。きっと、日常的なことだって、ままならないんだろ。僕みたいな馬鹿なひとに、お茶なんか出してくれて、ありがとうと言うべきなんだ。お母さんも、一方的に、彼を責めたてるのはやめたほうがいいよ。」

歌津子「藤吉郎、本当にそうなの?」

藤吉郎「は、はい。」

歌津子「どもらないで。ちゃんと言いなさい。」

杉三「それじゃだめだってば。」

と、歌津子の腕をつつく。

藤吉郎「はい。」

歌津子「まあ、ちゃんと言えたから、それで良しとするわ。今回は、杉ちゃんに、私も助けてもらったようなところもあるから。」

杉三「よかったね!」

蘭「助けてもらったって。」

歌津子「さっきの、杉ちゃんの言葉、お見通しだったのよ、私の事。お二人にも、謝らなきゃ。ごめんなさい。」

杉三「はは、やっぱりそうだったのか。」

歌津子「意外に、指摘されちゃうと、さっぱりするときもあるのね。」

何か吹っ切れた様だった。

蘭「あ、雨が止んだ。ねえ、杉ちゃん、長居をしすぎるわけにはいかない。早く僕らは家に帰ろうよ。」

杉三「そうだね。」

歌津子「やだ、着替えも何も、用意していないのに。」

蘭「いいんですよ、そんなもの。それより、遅くなったら、君のお母さんも心配するよ、杉ちゃん。」

歌津子「申し訳ありません。責任もって、お送りいたします。」

藤吉郎「行く。」

歌津子「でも、あんたがいったら、」

杉三「いや、ギャラリーは楽しいほうがいいよ。一緒にいこうよ!」

藤吉郎「はい。」

歌津子「そうね。じゃあ、みんな車に乗って!」


ワゴン車の中。

杉三「海は荒海、向こうは佐渡よ、、、。」

藤吉郎「歌。」

杉三「歌がどうしたんだ。」

藤吉郎「うまい。」

杉三「じゃあ、歌ってみる?いくよ、海は荒海、向こうは佐渡よ、、、。」

蘭「あーあ、全く、どうなるんだろうな、この二人。」

と、大きなため息をつくが、歌津子は、とても嬉しそうだった。




















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