第83話 エピローグ 力を振るう者たち
江戸期の大名屋敷を改装した、広大な庭を持つ赤坂にある料亭の一室。
まだまだ正月気分が残る世間とは逆に、地味にしっぽりと酒を酌み交わす男が二人。
「そういえば、大晦日の一件は丸く収まったのかね? 議長殿」
「スメラギの周辺は、コチラで抑えておきました」
議長と呼ばれた男は、猪口を口に運んだ。
「流石にそこが肝だからな」
「政治の方は、元老のあなたが動いてくれたのでしょ?」
「そっちほど難しくはなかったさ」
元老と呼ばれた男は大きく笑った。
「なんだか皮肉に聞こえますねぇ」
「考え過ぎだよ、君」
「しかし今回の件、どうお思いになります?」
「さぁな。女占い師とその仲間たち。放って置いてもよさそうな気はするが・・・」
「そうかもしれませんが、問題は事件の起こし方」
「そうだな。訳のわからん術で、あっという間に村が全焼。しかしまぁ、通常の軍隊でも似たようなものだと思わんかね?」
「しかし、各国列強は、既に術師や物の怪を軍に編入し始めています。もはやこの流れは止まりますまい」
「ふむ、早急に対処せねばな」
元老と呼ばれる男は、洋物の煙草にマッチで火を点けた。
「後は雨夜様ですね」
議長と呼ばれる男は、ネクタイを緩め、また一口、酒を飲んだ。
「せっかく他の警察や軍の出動を抑えたのに、結局無傷で済んでしまったな」
「どうやら強力な術も使うとか。盲目だからと放置し過ぎましたかね」
「だいたいいつの間にか警察組織に入り込んで。おそらく背後に支援する誰かがいるのだろう。突き止めねばなるまい」
「ですな。諸外国に担がれでもしたら厄介極まりない。この国を根幹から揺るがしかねません」
「隙を見せればここぞとばかりに付け入られる」
「隣の清のように、寄ってたかった食い荒らされたくはありませんな」
「ふう、まったく。正月早々問題ばかりだ」
元老と呼ばれる男は大きく煙を吐いた。
「この国を、もっともっと強くせねば。欧米列強の影響を排除し、ゆくゆくは亜細亜を手に入れ盟主になる。そのためにも、内なる憂慮は確実に摘んでおきたい」
元老と呼ばれる男は、宙を鋭く睨だ。
妖術だの呪いだのより、この世を動かす現実的な力とはなんなのか、見せつけてやる。
消された皇弟も不穏分子も、邪魔なようならまとめて叩き潰すまでだ。
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