1-5. やばい! ロリって可愛い!

 そろそろ、小学生女子が泣き止む適度な時間が過ぎたので話を本題に戻す。


「で、会長の妹がどうして俺たちを訪ねて来たんだ?」


 伊地知光は鼻をすすりながらも敵意を丸出しにして。


「謝れ! 私にチョッピしたのを謝れ!」


「え? 何て?」


 チョッピって言い方可愛い。

 俺、ロリコンになりそうだわ。


「チョッピしたの謝れ!!!」


「え? 何て?」


 あかん。

 これ、マジで目覚めそう。


「光ちゃん! チョッピじゃなくて、チョップだよ!」


 ちっ、ポプラめ、邪魔しやがって。

 ポプラに指摘された事で伊地知光は漫画みたいに首から一気に顔を赤くし、円柱型ポストのようだった。


「まぁ、悪かった。で、俺たちに何の用だ? 要件があるなら早く言え、俺は忙しいんだ」


 そろそろ、はぐれ刑事の再放送が始まる時間。

 世間的には相棒がもてはやされているようだが、俺は藤田まことが大好きなのだ。


「一生恨む... ...」


 全く、最近のJSは遺恨が深い。

 このままでは地獄流しの刑を依頼されそうだ。

 その前にこいつの家のパソコンや携帯を全て破壊しとかなくては。


「で、早く答えろ。本当に時間がないんだ」


 はぐれ刑事はOPの曲が最高だ。

 あの曲なくして、はぐれ刑事は語れない。

 途中から見るなんてやっさんに申し訳ない。


「わかったわよ! その... ...! お姉ちゃんに友達を作ってあげて!」


 あん?

 サラリと俺はお姉ちゃんの友達候補から除外された。

 まぁ、別にいいんだけどさ。


「それは出来ないよ」


 ポプラは神妙そうな顔で伊地知光を見やる。


「どうして!? 貴方達は友達部で友達を作るのを生業なりわいにしているんでしょ!?」


 別に生計は立てておりません。


「うん! 楓の友達をね!」


「楓?」


「あ、うん。その目付きが悪くて、さっきから光ちゃんの事を注視して見ている人だよ」


 別に注視はしていない。

 横目でチラリしてただけだ。


「ひいっ! このロリコン!」


 伊地知光は無い胸を抱き、防御姿勢を取る。

 別に俺はまだロリコンにはなっていない。

 数日後には分からんがな。


「え? ちょっと待って。じゃあ、この人は自分の友達を作るために部活をしているの?」


「うん。部長だよー」


「え!? 部長!? 誰かに強制されたのではなくて、自主的!?」


 やっぱり、そう思われるだろ?

 だから、せめて巻き込まれ型にしておくべきだったんだよ。

 ヒッチコックの主人公は殆どが巻き込まれ型だろ?

 だから面白いんだよ。


「あの......。さっきはキツイ事言ってごめんなさい」


 おい。

 貴様、何よりもキツイのは女子小学生に同情される事だぞ。

 捨てられた子犬を見るような目でお兄さんを見ないでください。

 

「まぁ、楽しいお喋りはさておき、何で会長の妹である君が姉の心配をする?」


 しかも、わざわざ姉の高校まできて、見ず知らずの俺たちに頼むほど切羽詰まった状況なのか?


 このロリの姉である我が校の生徒会長は平たく言えば生徒会長になるべくしてなったパーフェクトヒューマン。

 学校には無遅刻無欠席だし、一年生の頃から学校の奉仕作業にも参加し、先生からの評判も上々。

 成績も学年一位で容姿も淡麗。

 ウチのポプラが入学するまで校内美人ランキングで一位に君臨していたこれまた、スーパー女子高生なのだ。


 そんな生徒会長だから友達の一人や二人くらいいるでしょ?

 と見立てるのが常人の考え。

 しかし、俺は別の考え方をしていた。


「お姉ちゃんは完璧でしょ? 美人だし、勉強も出来るし、友達もいるにはいるんだけど、その、釣り合う友人はいないんだよね」


 はい?

 何その羨ましい悩み。

 たぶん、俺が100回生まれ変わっても到達出来ない次元の話をしているよ。


「ほう。そうか。じゃあ、ウチの妹が友達候補になれそうだ」


「え? この人が?」


 伊地知光は自身をテディベアのように抱きかかえる人物を見上げ。

 ポプラはエッチなお店の宣材写真のように舌を出して、笑顔でピース。


「ご指名いただきすいませーん」


「この人が!?」


 納得の2回目。


「そうだ。一見、バカな女子高生風だがウチの妹はハイスペック女子高生だ。文武両道、容姿端麗、おまけに友達も多い」


 くっ!

 自分で言ってて悲しくなる。


「あなた、全てを吸い取られたのね。可哀想。むしろ、最後の残りカスで生命いのちを与えられた事に感謝すべきね」


 ちょっと、光さん。

 早々にキャラブレないで下さいよ。

 何、その輪姦された後に見せるような生気を失った瞳。

 遠くを見るな!

 遠くを!

 

「じゃあ! ご指名もあった事だし、生徒会長の所に行ってくるよ!」


「はい。行ってらっしゃい」


 ポプラは生徒会室までダッシュ。

 取り残される男子高校生と女子小学生。


「... ...」


 気まずい。

 そういや、俺って、ポプラがいるから周りと話が出来ているのにあいつがいなくなると喋れん。

 早く戻ってお兄ちゃんを助けて!!!


「あなたとお姉ちゃんって何か似てるかもね」


「え? どこが?」


 最近のJSはそんな黄昏時みたいな事言い出すんだな。

 ベテラン女優がアニメの声優やってるのかと思ったわ。


「生徒会室どこだっけ!?」


 妹は早々に戻ってきた。


「しょ、しょうがねぇな! 俺が連れてってやるよ」


 も、戻って来てくれてありがとおおおお!!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る