第4話「じゃ、行くよ。」
「僕は鉄血仮面について調査をしている。」
ヒフミは真剣な顔つきで梨沙に告げる。
「え、鉄血仮面……?」
「知らないか。鉄血仮面てのは近頃話題になっている仮面を付けた男のことさ。まぁ、知らなくて当然だよね。」
「し、知ってます……!」
「え?本当に?ただの一高校生である梨沙ちゃんが?どこから聞いた?」
「鉄血仮面については、美樹から……。」
「…………。」
神妙な顔つきで考え事をし始めるヒフミ。
「あの、どうしたのですか?」
「いや、鉄血仮面について知ってる人間なんて通なオカルトマニアか、実際に鉄血仮面に救われた人々ぐらいなんだが……。もしかして、君の学校全体でも広く知られているのかい?」
「いえ、クラスの皆がそういった話をしてるのは聞いたことがないです。」
「知ってるのは梨沙ちゃんと美樹ちゃんだけ?」
「そうだと、思います。」
「………………。」
「ヒフミさん……?」
「美樹ちゃんの家は特別なお家かい?警察の調査ではごく普通のサラリーマン家庭だったが、それ以外で何か変わっている点はあったりするかい?」
「いえ……。あ、でも美樹のお父さんはいつも出張してるみたいで。私も美樹のお父さんは1回ぐらいしか見たことないです。」
「むー…………。」
「どうしました?」
「……いや、もしかしたら美樹ちゃんのお父さんが何か関係があるかもしれないってね。考えすぎかもしれないけど。今はネットで鉄血仮面の情報が流れてくることもあるだろうし。」
「はぁ…………。」
ピコン
その時、梨沙のスマホの着信音が鳴った。梨沙がチェックしてみると、それは美樹からのLINEだった。
「!! ヒフミさん!美樹から新たなLINEが来ました!!」
「見せてくれ。」
『もういい』
美樹からのLINEにはそう記されてあった。
「えっ……?もういい?」
困惑する梨沙。梨沙の頭の中に2つのケースが浮かぶ。1つはグール側の要求である動画の削除に成功したか。そしてもう1つは美樹が殺されてしまったか。
「ヒフミさん……。これ…………。」
「美樹ちゃんのSNSをチェックだ。」
ヒフミの言う通りに美樹のSNSをチェックしてみると、美樹のアカウントから例の動画のツイートが削除されていた。
「グール側が例の動画のことを確認し、動画の削除を行ったね。これでグール側は自分たちの正体が映ったものが拡散することはなく一安心だ。」
「それって…………。」
「美樹ちゃんを人質にとる必要がなくなったわけだ。このまま解放してくれてたら、平和的に解決するが……。」
「うそ…………。」
「うん。口封じのために殺され食われてしまった可能性が高いね。」
「そんな…………。」
「ちょっと待って。」
ヒフミはそう言うと、スマホを取り出し誰かに電話をしだした。
「もしもし僕だけど。うん。お疲れ。それで聞きたいことがあるんだけど。まぁ、そう言わないでさ。あのさ、美樹ちゃんの部屋から美樹ちゃんのスマホは発見されてっけ?うん。あぁそう。じゃ、ありがとねー。え、今?今はJKのお家にいるけど。いや犯罪じゃないよ?美樹ちゃんの友達に色々聞いたり話したりしただけだよ。本当だって。え、事務所に今すぐ来い?それは、ちょっと……。めんどくさ……。あ、嘘です。ごめんなさい。フィギュアは壊さないでください。お願いします。今すぐ向かいます。はい。それでは失礼しますー。……ふぅ。」
「今のは?」
「ああ、僕の助手さ。助手くんには警察と共に現場の調査をお願いしてたんだ。」
「美樹のスマホについて何か言ってましたけど……。」
「もし美樹ちゃんのスマホも一緒に無くなってたら、美樹ちゃんはスマホを持っているということになる。それはつまり例の動画の削除はグールが美樹ちゃんに削除を命じさせたってことだ。」
「で、あったんですか……?美樹のスマホ……。」
「なかったって。さっき僕が言った通りのことが起こったってことだ。グールは美樹ちゃんに動画について聞き、それに美樹ちゃんが答え、一時的にスマホを美樹ちゃんに返し削除させた。スマホの管理は今までずっとグールがやっていたんだろうね。でも梨沙ちゃんから動画についての連絡ご全く来ないことに痺れを切らし、本人に直接聞いたわけだ。」
「初めから本人に聞けばいいのに……。」
「うーん。たぶんだけど、美樹ちゃんはずっと牢獄的なところで幽閉されていたんじゃないかな。」
「幽閉?」
「グールは捉えた人間をすぐ殺して食うんじゃなくて、ある程度の期間は生かしたまま貯蓄しておくんだ。その貯蓄庫に美樹ちゃんは今まで幽閉されていたが、美樹ちゃんを拉致したグールがその貯蓄庫から美樹を連れ出し聞き出した。と考えるのが妥当かな。」
「美樹は……帰って来るんでしょうか……。」
「厳しいかなぁ……。まだ食べられてはいないだろうけど……。」
「私、私……。」
「ん?」
「助け出したい!美樹を……美樹を助け出したいです……!私がどんな危険な目にあってでも……!」
「んー?君はただの女子高生でしょー?無理だよー?」
「だって……!だって!」
「美樹ちゃんのことがそんなに大事かい?」
「美樹は小さい頃からの私の親友なの……!」
「ほーん。」
「お願いっ……!」
「何回も言うけど君はただの女子高生めでしょ?親御さんも黙っていないだろうし……。」
「お母さんは何とかするし、私もちゃんと覚悟はある……!親友が死ぬかもしれないのにただ呆然としていのはやだっ……!」
「うーん。黙って僕に任せて欲しいけど……、そんなこと言っても容認してくれないよね。」
「私、やります……!」
「そっか……。分かった。君の動向を許可しよう。」
「っ!ありがとうございます!」
「僕はさっき助手くんに事務所へ帰れって言われたから一回戻るけど、来るかい?」
「はい……!」
・
・
・
「お母さん、私、行ってくる。」
「え?どこに行くの?だめよ、今危ないんだから。」
「大丈夫、すぐ帰るから。」
「ちょっと、梨沙?梨沙!」
「行ってきます。」
「えぇ……。何なの……?」
・
・
・
梨沙とヒフミはタクシーで事務所に向かう。
その車内にて。
「そういえば、何でヒフミさんは鉄血仮面について追ってるんですか?」
「…………んー。気になるから、かな。」
「え、それだけ?何か思い入れがあるとか……。」
「だって僕は鉄血仮面に会ったことがないからね。でも、何故か僕が調査をしている事件には必ず関わってくるんだ。」
「必ず?」
「うん。前はとある女性の依頼で、失踪した読モやっている娘を捜索してくれてのがあったのね。で、僕と助手とで頑張ってたんだけど、なんとびっくり。その娘さんは無事鉄血仮面によって救出されたんだ。」
「へー。」
「でも、その事件には不可解なところがあってね。被害者である娘さんとそのお友達は見つかったんだけど、加害者たちは消えていたんだ。娘さんに聞いても気持ち悪い男たちだったらしいんだけど。いかんせんその男たちは見つからない。」
「迷宮入りってやつですか?」
「まぁ、その辺は警察に任せるよね。僕に対しての依頼は娘を探してくれだから。兎にも角にも娘さんが戻ってきたから万々歳よ。」
「適当ですね。」
「これ以外にも必ず僕が調査する事件には必ず鉄血仮面は現れるんだ。だから十中八九、今回の事件にも鉄血仮面は現れるよ。」
「鉄血仮面……か……。」
・
・
・
その後、事務所に到着した梨沙とヒフミ。
「おーい。帰ったよー。タマタマー。」
「タマタマ……?」
ヒフミは謎の単語を発しながら勢いよくドアを開ける。しかし次の瞬間。
ドガッ
「……ってー!」
ヒフミの顔面に何故かフライパンが飛んできた。その場で悶絶するヒフミ。
「……その呼び方止めろって言いましたよね……?」ゴゴゴ
「ごめんごめん……。それで、タマちゃん。どうしたの、事務所に帰ってこいって。」イテテ…
「そんなのあんたが女子高生の家にいるからに決まってるじゃないですか。犯罪ですからね?帰ってこなかったら通報しようと思ってましたよ。……あれ、後ろにいるのは……。」
「あ、どうも……。私、美樹の友達の梨沙って言います……。」
「え、女子高生連れてきたんですか?」
「うん。どうしても動向したいって言うから。」
「いやいやいや、危険ですって。」
「そう言ったんだけど聞かなくてね。」
「私、美樹を助けたいんです……!」
「あなたが思っている以上に過酷で危険ですよ?」
「美樹が苦しんでいるのに、何もできないなんて、嫌です……!」
「随分、我儘で世間知らずですねー。」
「まぁまぁタマちゃん。彼女が決めたことなんだしいいじゃないか。」
「しょうがないですね……。知りませんよ?どうなっても。」
「よ、よろしくお願いします。」
「俺の名前は 玉木 銀 。一応この探偵の助手してます。よろしく。」
玉木と名乗るその男は上から目線ではあるが、一般的な女子高生である梨沙より若干背が小さい。黒髪のテクノカットだ。
「玉木さん。よろしくお願いします。」
「はいよろしく。」
「よし、タマちゃん。早速向かおうか。場所は割れてるんだろ?」
「えっ今からですか?いや場所は確かに割れてますけど……。」
「えっ。もう美樹の居場所が分かっているんですか?」
驚く梨沙。
「美樹ちゃんのスマホがあっちにあるからね。今の時代、1つのスマホの行方なんてある程度の力があれば簡単に割り出せるよ。」
「へぇー……。」
「じゃ、行くよ。タマちゃんは車出して。梨沙ちゃんはタマちゃんと一緒に駐車場に向かって。僕は準備してからいくから。」
そう言ってヒフミは事務所の奥の部屋に入っていった。
「はいはい。分かりましたよ。それじゃ行きましょうか梨沙さん。」
「あっはい!な、何だか急ですね……。」
「いつものことさ。」
3人はグールたちの巣窟へと向かう。
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