ふわふわな白い想い
カゲトモ
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「あ、いらっしゃいませ、花菱さん」
一瞬驚いたような顔をして一見強面な表情がにっこりと柔らかくなる。ブランチを食べに来たのは、オーガニックメニューが豊富なカフェ、その名も“森のクマさん”だ。店長は熊谷さんと言って、席まで案内してくれたそれこそクマみたいにがっちりとした体型のおしゃれ髭。
「こんな時間に珍しいですね。今日はお休みではありませんでした?」
「ちょっと用事でこっちに寄ったんです。このあとまた出かけるんですけど」
「そうなんですか、良いですね。ちなみにどちらまで?」
「新作の映画を観ようかと」
「わぁ、さらに良いですね。僕も映画好きなんですよ」
メニューを渡しながら熊谷さんは楽しそうに話してくれる。さぁさて、とりあえず腹ごしらえだ。
「今日のお食事パンケーキと、カプチーノお願いできますか」
今日は海老アボカドサラダパンケーキだと外に書いてあった。そしてここのカフェラテは美味しいのだ。
「ありがとうございます」
ぺこり、と巨体を折り曲げて去って行った。厨房に入ると代わりにフロアに出て来た、ヘアバンドを付けた小柄な女性がにっこりとアイコンタクトを飛ばしてきた。え? それって俺の事を紹介してくれただけだよね? ただの商店街のバーテンダーって紹介してくれたんだよね? まさか女好きだって紹介まではしてないよね? って女好きじゃないけど! 桐嶋のババァが適当言っただけだけど。まだ熊谷さんも勘違いしてないよね? 俺ちゃんと訂正したと思うんだけど。
なんてグルグル考えながら営業スマイルで返す。このカフェで食事をするのは初めてだ。
開店してそんなに時間が経っていないからか、席はそんなに埋まっていない。それでも座っているのは女性ばかりだ。それもそうか、こんなにおしゃれでナチュラルテイストなお店なんだから。男が一人で飯を食うには肩身が狭すぎるかも。
ま、俺は気にしないけど。美味い飯が食えるならそれでいい。
「お待たせいたしました」
大きめの真っ白な皿に二枚のパンケーキと海老とアボカドと野菜がてんこ盛り。それから回しかけられたソースは
「ハニーマスタード・・・!」
あぁ~この酸味と甘さが最高にベリーベリーベストマッチ・・・美味い、最高だ。
「お口に合いましたか?」
ナイフとフォークが止まらなくてパクパクと食べ進め、声を掛けられた時には半分以上が無くなっていた。いつの間に。
「美味しいです。パンケーキもモチモチだし、ソースがドストライクで」
「ふふ、良かった」
初めて見たけどニット帽を被った熊谷さんは、以外にもカフェエプロンがよく似合っている。って失礼か。
「あの、これ勝手にしちゃったんですけど、良かったら、その」
「ん?」
そう言って目の前に差し出されたのは、白いコーヒーカップ。注文したカフェラテではあるが、こ、これは・・・!
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