第6話 vs 幼馴染×甘えん坊

「・・・うぅ・・・」


熱を出しました・・・。まぁ、原因は昨日の雨だろうけど・・・。久しぶり、だな、高熱を出すのって・・・。きついや、これ・・・。お母さんもお父さんも帰ってくるのは夜だし・・・、ここは大人しく、寝ておかないと・・・。


「よぉ、好美」

「へっ・・・?」


幼馴染・竹馬智大。


「と、ともひろ・・・。何でここに・・・」

「お前の母さんから頼まれた。看病してやってくれだよと」

「・・・お、お母さんったら、余計なことを・・・」

「にしても、想像以上にやられてるな」

智大はベッドで顔を真っ赤にしながら眠る私を見て言う。はぁ、みっともないところを見られちゃったな・・・。まぁ、智大ならいっか・・・。


「何か食ったのか?」

「何も・・・。だって、食欲ないし・・・」

「ばーか。熱のときはとりあえず何か食っとけ。俺が作ってやるから、ちょっと待ってろ」

「うん、じゃあお願い・・・」

智大が台所へと向かうとき、思い出したように付け加えた。

「あ、そうそう。今からもう一人来るから、多分」

「・・・もう一人・・・?」

私としては、この姿をそんなに見せたくないんだけど・・・。

「お、噂をすれば、か」

だだだと廊下を駆ける音がする。誰・・・?


「つっつん!!」

「な、菜月ちゃん・・・?」


体が弱い甘えん坊・弌濃ひとこい菜月。


「死なないで!!つつちゃん!!」

「・・・いや、死なないから・・・」

大げさだな・・・。だた、熱を出しただけだから・・・。

「おい、弌濃。俺は今から食事を作ってくるから、それまで好美のこと見てやってくれ」

「うん、任せて!命を賭しても頑張るから!」

「・・・だから、そこまでする必要ないってば・・・」


「・・・それにしても、何で私が寝込んでいるって・・・」

「道を歩いていたら、竹馬くんに会って・・・。それで事情を聞いたの」

「あ、そうなんだ・・・」

「うぅ・・・」

菜月ちゃんは急に泣き出しそうな顔をする。

「ど、どうしたの・・・?」

「菜月、つっつんにまで死なれたら・・・」

「だから、死なない、っての・・・。ていうか、なに・・・『にまで』って・・・」

「私の家族は全員元気だけど!」

「・・・じゃあ、そんなこと言うな、っての・・・」

今は菜月ちゃんの病弱ジョークに付き合う元気はないんだよ・・・。

「でも、どうして熱なんか・・・」

「なぁに、ちょっと体を濡らしちゃってね・・・。それだけだよ・・・」

「えぇ!?」

私が熱を出す定番の理由を述べると、菜月ちゃんはえらく驚いた。

「いや、そんなに驚かなくても・・・」

「誰!?」

「だ、だれ・・・?」


「誰とシて性病うつされたの!?」


「いや、そういう意味じゃないから!・・・げほっ、げほっ・・・」

「ああ、駄目だよ、体調悪いのに、そんな大声出したら・・・」

「誰のせいだと・・・」

濡らすって、シモの理由じゃないから・・・。あれ、でもこれって、私が言葉足らずだったのが悪いのかな・・・。

「何か、分からなくなってきた・・・」

「ホント、大丈夫・・・?」

菜月ちゃんは心配そうに眺める。そして、こつん、とおでこをあててきた。

「わぁ、まだ熱高いよ・・・。しっかり寝ておかないと・・・」

おでこで熱をはかる、って、私、初めてされたな・・・。

「うん、そうだね・・・。菜月ちゃんも、お見舞いありがとね・・・。これ以上いたらうつっちゃうから、帰ったほうが・・・」

「うつる・・・?あ、そっか!」

・・・嫌な予感がするなぁ・・・。


「・・・で、何でこうなってるの・・・?」

菜月ちゃんは、私の一人用のベッドに、狭いにも関わらず入ってきた。当然狭い分、体は密着する。

「・・・知ってる?熱を治すには、他人にうつすのが一番なんだよ?」

「絶対、間違ってるでしょ、それ・・・」

うつされた方はたまったもんじゃないし・・・。それに・・・。

「菜月ちゃん、体強くないんだから・・・。私にうつされたら大変でしょ・・・」

「大丈夫だよ。言ったでしょ?命を賭してでも、って」

「あれ、比喩じゃなかったんかい・・・」

ていうか、私のせいで菜月ちゃんの体調を崩させたら責任感じるから・・・。

「それに、つっつんに抱き着ける機会なんてないもん」

「・・・そっちが、本音でしょ・・・」

この、甘えん坊さんめ・・・。

「あ、つっつん汗びっしょり・・・」

「あ、ごめん・・・。気持ち悪いでしょ・・・」

「ううん、つっつんの匂いがする・・・」

「気持ち悪いこと言うなよ・・・」

汗かいてるって分かって、さらにぎゅって抱きしめないでくれる・・・?


「何してるんだよ、お前ら」


「あ、智大・・・」

「人がせっかく飯を作ってやってるときに・・・」

「もう、竹馬くんったら・・・。もうちょっとだったのに・・・。ね、つっつん」

「いや、意味分からないし・・・」

もうちょっと、って何だよ・・・。菜月ちゃんはベッドから出て行く。

「まぁ、選手交代かな。菜月がこれ以上いても、つっつんも大変だろうし」

「・・・そんなことは・・・」

・・・あるかもね、多少。

「じゃあね、つっつん!お大事にね」

「・・・うん、ありがと、菜月ちゃん・・・」

帰り際、彼女は智大に話しかける。

「頑張ってね、竹馬くん」

「ほっとけ」

・・・頑張る・・・?って、何を・・・。


「ほら、定番のおかゆだ。しっかり食べて栄養つけとけ」

「・・・食べさせてよ、智大・・・」

「はぁ、これじゃあどっちが甘えん坊だか分からないな」

文句を言いつつ、智大はスプーンでおかゆを掬う。

「ん」

「あーん・・・」

あち・・・。

「どうだ?」

「・・・おいしい」

「だろ?」

私は全部のおかゆを食べさせてもらった。


「ありがと、智大・・・。おかげで、元気出たよ・・・」

「そうか、そりゃ良かった」

「・・・何か、お願いある・・・?お礼に、一つ、聞いたげる・・・」

「・・・ん。珍しいな、お前からそんなこと言うなんて」

「何か、嬉しかったから・・・」

二人もお見舞いに来てくれて・・・。


「・・・じゃあ、今度の夏祭り、いっしょに行ってくれるか?」


「・・・?夏祭り・・・?そんなことでいいの・・・?」

「ああ、それで十分だ」

「・・・ん、分かった・・・」


to be continued...

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