ツッコみまくりの堤さん

期待の新筐体

第一部・学校編

第1話 vs 部活命系ラガーマン

「おい、どうしてくれんだよ・・・」

「へ・・・?」


出席番号5番、加瀬かせ伊能いよく


「お前のせいで、最近スランプなんだよ」

「わ、私のせい・・・?」


ラグビー部に所属していて、当然ガタイもいい。上背も170センチぐらいある。まぁ、これはラグビー部の中じゃ並なのかもしれないけど。私はそんな彼に人気ひとけのない場所で呼び止められ、そして、全く思い当たる節の無いクレームを受けていた。


「知ってるだろ?ウチのラグビー部は全国でも強豪で、その中でも俺はスタメンでエース張ってんだよ。そんな俺がスランプって他のメンバーに知れたら、チーム全体の士気が下がっちまう」

「いや、それは大変だと思うけど・・・。え、私?私のせいなの?」

何かしたっけ・・・?全然記憶にないんだけど。大体、私ラグビー部のマネージャーとかでもないから、あんまり加瀬くんとは関わらないのに・・・。


「似てるんだよ・・・」

「似てる?」

私が、例えばライバル校の女子マネージャーに似てるとか?


「お前が俺が一番好きなAV女優に似てるんだよ!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


「俺さ、部活終わって疲れがピークに達したとき、いっつも彼女の裸体を鑑賞して精神的回復を図るわけ!彼女の体の美しき曲線、豊満な胸、すべてがドンぴしゃで俺をエクシタシーへと持っていくんだ!それなのによぉ、最近ふと気付いちまったんだよ!」


「・・・な、なにに・・・?」


「『あれ、そういえば、誰かに似てるな・・・』って!最初は分からなかったから気にしてなかったけど、最近になって気付いちまったんだよ!お前だ!堤、お前に彼女が似てんだよ!」


「・・・」


「そこからもう駄目なんだ。彼女を見るたびにお前が頭にちかちかとフラッシュバックしちまって、まるでお前が全裸でまぐわっているかのように思えちまって・・・。生生しいんだよ、流石に知り合いっていうのは!お陰で満足に捗らなくなって・・・。どうしてくれんだよ!?」


「・・・し、し・・・」


「し?」


「知ったことかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

私は大声で叫んだ。

「いや、知らないよ、完全に微塵も知らないよ!果てしなく知ったこっちゃないよ!いや、なにそれ!もしかしたら知らぬ間に悪いことしたかなぁ、ってほんのちょっとでも思った時間返してよ!」

びっくりした!なにその理由!?予想の100倍くだらないよ!

「おまっ、知ったことか・・・って。何だよ、それ・・・」

「いや、何だよはこっちの台詞!何でそんな薄情者・・・みたいな顔できるわけ!?濡れ衣っていうか、もう100年水の中に布つけてもはや風化して水と同化してるくらいの濡れ衣だよ!!私、全然関係ないじゃん!完璧な冤罪じゃん!!」

「そんなこと言ったって仕方ないだろ!もう、俺にはあの人がお前にしか見えなくなってるんだから!お前とこうして話しているうちも、最早俺はお前の服の下が透視して見えるような気さえするようになっちまったんだから!」

「変態かよ!!止めてよ!」

私は反射的に胸と下半身を手で隠す。

「頼む!もうすぐ大事な練習試合があるんだ。この欲求不満な状態じゃ、絶対にみんなの足を引っ張るだけなんだよ」

と言って、加瀬くんは土下座する。

「た、頼む、って・・・?」

あれ、何かやばくない、この流れ・・・。何か、快楽天の漫画みたいな展開じゃない・・・?え、大丈夫、私の貞操・・・。


「整形してくれ!!」


「できるか!!」


私は反射的に、今までやったこともないのに、加瀬くんの土下座している頭に向かって思いっきり踵落としを入れていた。ぐぁ、って加瀬くんが頭を抱える。


「こちとら16年この顔だよ!親からもらった大事な顔をそんなくだらない理由で変えられるか!」

「た、頼む・・・。金は出すから・・・」

「そういう問題じゃ・・・」

「一割」

「一割かよ!!全部出せよ!いや、全部出したところで絶対やんないけど、何でそこけちってんだよ!!」

「そんな・・・!じゃあ、どうすれば・・・」

・・・いや、だから・・・。何で、そんな絶望に歪んだような顔できるかなぁ・・・。部活に命賭けてるって感じだから、言っちゃあ悪いけどさ、どう考えても比べるまでもなく私の顔の方が大事なんだけど・・・。

「学校に来るのを止めて、なんてことは言えないし・・・。堤だって高校生だし・・・」

小さな声でぶつぶつ言っている。確かに、もし違うクラスだったらそこまで気にならなかったのかもしれないけど、同じクラスだからなぁ。まぁ、一応そこは考えてくれてるんだね、学校登校は阻止できない、って。・・・でも、妥協した末が整形かよ・・・。


「私も何とかしてあげたいけど・・・」

こんな無茶なこと言われて助けになりたい、って、お人好しか、私は・・・。

「・・・あれ・・・?」

私が解決策を言う前に、加瀬くんが何かに気づいたような顔をする。

「か、体が軽い・・・」

「・・・はい?」

「リビドーが解放できなくてげんなり重くなっていた体が、軽い・・・!どうして・・・」

え、なに、この展開。

「そうか!堤、お前が俺の頭を思いっきり殴ってくれたおかげだ!」

蹴りだけどね、一応言っとくと。

「それで俺の中のMが解放されて、今までのフラストレーションが爆発したんだ!」

・・・何故だろう、日本語の筈なのに、何一つ理解できない。

「よし、これならいける・・・。これで、部活にも精が出る!ありがとな、堤!」

「・・・」

そういって、加瀬くんは出て行った。とても満足そうな、良い顔をしていた。


ぽっかーんですよ。何ですか、これ。勝手に問題提起してきて勝手に解決していきましたよ。これは間違いなく、今までの私の人生の中で、無駄な時間ベスト3に入るね。ていうか、普通年頃の女子にAV女優の話するぅ・・・?


─こうして、普通の女子高生、堤の、個性的なクラスメイトたちにツッコみ続ける日々が始まったのだった。


え!?なに今のナレーション、誰!?てか、続くの、この日々!?


to be continued...

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