第4話 つぶやき

 目の前の男は、俺の荷物を相変わらず、あさっていた。拳銃を構えているが、こいつには全く効果がないようだ。というか、何かを探すので必死で俺のことは眼中にないように見えた。

 男は、荷物の中にあったポテチの袋を取り出すと、袋を破きポテチを勝手に食べ始めた。


「それは、今日、俺が食べようと思っていたポテチ」


 俺がそう叫ぶと、男はポテチを食べながらこちらを見つめて言った。


「だれー?」


「こっちのセリフだよ!!お前は誰なんだよ」


「知りたい?」


「あまり知りたくはないが、ささっと、言え!!この拳銃が見えないのか。撃つぞ」


「死神だよ」


 何を言っているんだ。こいつは。死神だと。ありえない。だが、そういえば、亡くなった叔父がこの辺りにポテチが好きな死神に会ったことがあるとか言っていた気がしなくもない。


「こっちが名乗ったんだから、次はそっちの番だよー」


「俺か。見ての通りだ」


「仮装パーティーに出かけるの?」


「仮装じゃねーよ!!強盗犯だよ。テレビとかで、見るだろ。この覆面姿をよ」


「へー、そうなんだー」


 死神は鼻くそをほじりながら、興味無さそうな顔で言った。聞いといてその反応はないだろ。


「お前、さっき宝石が入った俺の箱をポケットに入れただろ。ささっと、返せ」


「はい、これでしょ」


 死神は、ポケットから箱を取り出し俺に渡した。


「意外と素直じゃねーか。それでいい」


 俺は念のため箱の中身を確認した。


 空。


「おい!!肝心の中身がないぞ。どこにやった?」


「自分のポケットを確認してみてー」


「俺のポケットだと......」


 死神に言われた通りに、ポケットの中を手探りで探してみると、固いものがあったので、取り出した。


「いつの間に、こんなところに宝石を入れたんだよ」


「どう僕のマジック。仮装パーティーでもうけると思うよ」


「だから、仮装パーティーには行かねーよ。人の話を聞かない奴だ」


「さっき、強盗犯って言ってたね」


「しっかり聞いてるじゃねーかよ。知ってて言ったのかよ。ところで、お前、死神って言ってたな」


「そうだよー」


「死神なら、人間がなにしようが関係ないよな。たとえ、俺が強盗しようが」


「うん、人間が何をしようがどうでもいいね」


「じゃあ、俺が強盗をしたこと黙っておいてくれないか。俺のポテチを食べた代わりによ」


「いいよー」


 死神は、スマホをいじりながら、答えた。


「おい、さっそく誰かに俺が強盗したことを連絡してるんじゃねーだろうな」


「違うよ。つぶやいてだけだよ」


「何をつぶやいたんだ。見せろ!!」


 俺は、死神のスマホを覗き込んだ。

 スマホには、“彼氏とデートなうに使っていいよ!!”というつぶやきがあり、一枚の写真が載せられていた。


「おい、この写真、俺の写真じゃねーかよ!!しっかり黒い覆面をかぶって、腰に拳銃ぶら下げてるよ。誰かが見る前に早く消せ」


「ええ、でも、いいね一つついてるよ」


「くそ、早くも誰か見たのか。まあ、いい、これ以上、増えないように消すんだ」


「あっ!?すぐにいいね消えたよ。良かったね。これで大丈夫」


「よくねーよ!!ただ、残念な気持ちが残っただけだよ!!」

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