b)ハシボソガラスコンビの場合

 「あっ!風船が飛んでいる!」


 ハシボソガラスのカーキチは、とある街中で高く飛んでいく耳の付いた形の白いゴム風船を追いかけていた。


 「おいおいカーキチ!また嘴に風船を絡ませてもおいら知らんぞ!」


 カースケも、同じくその白い風船を一心不乱に追いかけていた。


 「よしっ!捕まえた!おいらは今回は嘴で割らんぞ!」


 カーキチは、脚の鋭い爪で片一方の風船の耳をギュッ!と抑えた。


 「よし・・・穴開けるぞ!爪立てるぞ!」


 カ―キチは脚の爪に力を入れた。


 一方、カースケはもう一方の風船の耳に鋭い嘴を傍立てようと押し込んだ。


 パァン!


 白い耳付き風船は激しく破裂した。


 「う・・・うぐっ!」


 悲劇が起きた。


 割れた風船の破片が、拍子にカースケの気管に詰まったのだ・・・!


 「カーーーーースケぇぇぇぇ!!!!」


 失速して、墜落していくカースケ。


 「追いつけ!追いつけ!追いつけぇぇぇ!!!!」


 カースケが地面に激突寸前だった。正にその時・・・


 「うりゃあ!」ボカッ!!


 カーキチはカースケの背中を透かさず脚で思いきり蹴り飛ばした。


 「ぐえっ・・・!」


 カーキチの蹴りが余りにも強烈だった。


 カーキチは跳ばされるどころか、反動で喉に詰まらせた割れた風船を嘴からおぇっ!と吐き出した。


 「やったぜぇ!!」


 仰向けのカースケは、体制を取り直して再び飛び立とうとするカーキチを見つめていた。


 ・・・あ、これでカーキチに恩返し出来たかなあ。おいらに嘴に絡まった風船を何とかしようと必死だったからなあ・・・おいらの嘴の風船を取り除いてくれた、オオワシのリックとやらは今ごろどうしてるかなあ・・・あの時、風船が絡まった寸前ににあのコブハクチョウの子を助けるとこ見かけたリックを見かけて、こっちも助けてもらおうと・・・

 ・・・追いかけたら、深い霧に・・・

 ・・・くそっ!!そこから思い出せない・・・

 ・・・でもカーキチよ、おいらがついてるからな・・・おいらが・・・



 

 「カースケ・・・」


 「カースケ・・・」



 

 「はあっ!!」


 そのまま気絶していたカースケは、目の前にカーキチが覗いているのを見て、ビックリして我に帰った。


 「大丈夫?カースケぇ・・・?」


  「あ・・・か・・・カーキチぃぃぃぃーーーー!!」


  カーキチとカースケは、互いに翼で抱き締めあって、


 カアカア!!カアカア!!カアカア!!カアカア!!


 と大粒の涙を流して泣いた。




 「カースケ・・・おいら達は一心同体だぜ!!」


 「カーキチ・・・俺達は何時までもマブダチだぜ!!」

 

 「カースケ・・・“飛ぶものの誘惑”だな。」


 「カーキチ・・・“飛ぶものの誘惑”にかられてるなあ。」


 「カースケ・・・ロマンだな。」


 「カーキチ・・・冒険だな。」


 「カースケ・・・“飛ぶものの誘惑”の危険を省みずに愛する。

 これがおいら達のロマンだ。」


 「カーキチ・・・“飛ぶものの誘惑”の危険に晒されても愛する。

 これが俺達の冒険だ。」


 「カーステ・・・おいら達は何故に危険を承知で風船と付き合うか?」


 「カーキチ・・・そこに風船があるからさ!!」


 「カーキチ・・・」


 「カースケ・・・」


 「風船を割りに行こうぜ!!」


 カーキチとカースケは、上空にまた表れたヘリウムゴム風船に向かって一緒に飛びかかっていった。




 カーキチとカースケが飛んでいった跡の空き地の片隅に今さっき一緒に割った白い風船の破片が、2羽があの時メグ女王様に分けて貰った僅かな魔法により花になって飾られた。


 まるで、2羽の永遠の友情の証のように。

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