6羽のハクチョウと青い風船
アほリ
1#4羽のハクチョウ
「何してんだよお」
「だって、そこに綺麗な風船が・・・」
「だから『自己中』は困るだよな!だからみんなはぐれるんだよ!ま、こいつだけのせいじゃないけどなあ。」
「あら?何言ってるの?」
「おかあさ~~ん!!」
「うるせぇ!ピーピー喚くな!こっちまでイライラする!!」
「ちょっとちょっと!なに喧嘩してるの?あたし達ははぐれているんだぜ?」
「元はといえば、おまえが青い『卵鳥』を追いかけたのがいけないんだよ!」
「まあまあ、落ち着いて・・・」
「落ち着いいられるかっているんだよ!」
「おか~~~~さ~~~~ん!!」
「うるせえ!いちいち甘えるな!」
きつい性格の親ハクチョウのチエミは、わあわあ泣きだした末っ子ハクチョウのミキに一喝した。
4羽のコハクチョウはすっかり、暖かい湖に渡る他のハクチョウたちにはぐれてしまった。
親ハクチョウのチエミは、好き勝手放題の3羽の娘コハクチョウのラン、スウ、ミキにいつも手こずっていた。
こんな状態になったのは、目の前に突如現れた大きな青いゴム風船が横切ったからだ。
親ハクチョウのチエミは雛の時代から風船が大好き・・・卵から生まれて目を開けた瞬間に初めて見たのが、浮力がなくなり巣の真ん前に降りてきた、性が抜けた黄色い風船だった。
初めて見たのを親と思い込む『インプリティング』によって、巣の目の前の黄色い風船をいつも追いかけたり、一緒に湖に浮かんで泳いだりした。
ある日、日にちが経ってすっかり中の空気が抜けて萎んだ黄色い風船を『醜いアヒルの子』から立派はハクチョウになりかけのチエミが見つけて、
『風船母さんが~!風船母さんが~!』
と取り乱して泣きわめくチエミに、『本当』の親ハクチョウがやって来て、
「いつまでも風船に付いてたらハクチョウ仲間に打ち解けなくなるよ!よ~し、あんたが風船が大事なら私が元気を取り戻してあげるから!」
と、黄色い風船の吹き口の結び目を水掻きの脚と嘴と翼で何とか解き、息を思い切り「ぷう~っ!」と風船に吹き込んだ。
しかし、突然・・・
ぱあん!
とすっかりゴムが伸びきっていた黄色い風船はいきなり破裂した。
「わあ~~ん!!」
チエミは大泣きした。
あれ以来、『本当』の親としばらく間口を聞かなかった。
そんな過去がある親ハクチョウのチエミも、その青い風船を拾いたかった。
しかし、『風船大好き』の遺伝子がこの3羽の娘ハクチョウに宿ってしまったのが母チエミの誤算だった。
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