短編集
瀬谷このは
残りの時間いくらあっても。
前半
医者から告げられた残りの時間は半年。脅し半分で医者から聞き出した寿命は現実味を帯びずに空気中でふわふわしている。何度も口に出してみるが逆に頭の中で絡まって行く。
軽く会釈して下を向いたまま早足で家まで30分程歩き続けた。前を見ていなかったが幸い事故には合わなかった。
家に着くと様子がおかしい僕を気にして両親が声を掛けてきたが僕はその声に耳も貸さず自分の部屋に引きこもった。部屋に入った後の事は覚えていない。そのあと倒れたらしかった。幸い、休日で夜ご飯の時間に呼んでも部屋から出てこない僕を気にした母が倒れているところを見つけてくれて高熱は出たが病院に運ばれてその日は点滴を打っただけで済んだ。
医者から両親に僕が残りの寿命を知った事を聞いたのだろう。起きると両親が僕の手を握って泣いていた。死なないでほしいと願う人がいたとしても僕の命が伸びるわけでないし、僕は半年しかない残りの時間に執着するつもりもなかった。寝ている間に頭の中で絡まった糸がほどけてしまったかのようだった。
短編集 瀬谷このは @Konoha_seya
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