第2話 Get set!
僕は、学生時代に平凡太郎と友人たちから呼ばれていた。その理由は、まぁ僕が勉学、運動で取り立てて特徴がなくて、良くも悪くも目立たないから。正直、自分でも悲しくなるほど納得が出来ちゃって、微塵も嫌とは思えなかった。いや、厳密には自分の可能性を足掻かずに諦めていただけかもしれない。
そんな、自信もなく斜め45度下向きなまま、僕は社会人になった。泣く泣く学生の土俵から押し出しを受ける形で社会への入場をした"私"は上司、会社、家族、友人に依存しながら、流され流され続けた。周りに応えられない"私"を否定し、無意識に燈という自我を堅い鎖で雁字搦めにした。まるで、昔教会で見た磔のキリストのように。
そして、その刻は突然に前触れもなく訪れた。長らく堅く封じ込めていた自我のビッグバンが凄まじい衝撃とともに巻き起こった。その反動で"私"は何度も何度も意識を失いながら、僕は夢うつつの中1つの星を見つけた。その星は輝きこそは強くないが、何故だが目を惹いてしまう、そんな魅力を放っていた。
自我の宇宙に1つの星を見つけた僕は、自分に潜む大きな要素に気付いた。僕は、実は保守的な人間ではなく、自由への探求者だったんだ。漫画や映画に登場する世界を救うヒーローではないけど、弱く我慢強くないからこそ、僕は新しい生き方(希望)を見つけられるんだ。これが、燈として生を受けた、僕の天命なんだ!根拠はなかったが自然とそう思えた時、背中にズッシリと重みのある大剣を担いでいる気がした。RPGの初期装備程度の能力もないかもしれないけど、無性に不安へと立ち向かう勇気が僕の奥底から沸々と湧いてきた。
勇気に溢れたその時、橙色の光に包まれた"それ"はいつの間にかそこにいた。そして、どこか懐かしい気がする声で"それ"はこう語りかけてきた。「燈、弱き心を恥と思ってはならない。弱さ故に貴方は他者へ優しくできる。その生き様を誇りに思いなさい。そして、心のコンパスの指針に従い、多くを決断をしなさい。決して壁が見えても迷ってはいけない。貴方が自らの意思で決断したことを、誰よりも貴方が信じなさい。
停滞ではなく、劇的である選択を常にしなさい。さすれば、貴方の望む自由が与えられるでしょう…。」
話が終わるやいなや"それ"はいなくなっていた。一体何だったのだろう。ただ、デジャヴなのか不思議と初めて遭った気が全くしない。
まぁ、話の内容から僕が、自由への探求者として、劇的な決断を沢山していれば、きっといつかまた現れてくれるのだろう。
だから、僕は"それ"が話していたように、まず1つ心の指針に従って決断をすることにした。
いつもなら、1つ目の選択にやたら拘る質の僕だが、すんなり1つの願望に絞った。
これまで平凡太郎と呼ばれていた、弱さを受け入れず逃げてしまっていた自分から、不安に立ち向かう勇気ある自由の探求者へ変わるんだ!っていう証が欲しい。
そうだ!探求者としての僕の新しい呼び方を決めよう。
こういう時に呼び方から入ってしまうのは、未だに中二病な部分が抜けていないのかもしれない…。いや、誰しもこういう一面はあるはず。
それはさておき、どうするかなぁ。
名前決めは、即決しないと後でぐだぐだしてきて、どんな名前でもしっくりこなくなってしまうものだ。
じゃあ、分かりやすく燈という僕の名前、さっき出会った"それ"、そして輝かしい未来のイメージ、…
「オレンジ」!
ふと、脳裏に浮かんだ。
これにしたい!直感だけどそう思った。
まるで、RPGの初期設定画面を見ているような気分になって、何だか笑えてきた。とりあえず、1つ目の決断を僕はした。
さぁ、ここから、「オレンジ」と称する心弱き探求者の冒険譚を始めよう。
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