皇神高校バスケ部の日常

十夜カナデ

一話

バスケットボール、それは5人の味方と5人の敵に別れて一つのボールを奪い合い、シュートを決めて点数を競い合う競技である。

競技人口は世界一と言われ、アメリカ発祥なだけあってとてもクールで熱いスポーツである、と俺は考えている。


強豪校では選手層も厚くかっこいいプレーが多くて見どころ満載。

インターハイの戦いなんて決勝初戦に関わらず、涙なしでは語れない物語ばかり。

そしてある年に注目された人がいた。メディアで大きく取り上げられ夕方や朝のテレビでも取り上げられた監督、志津馬都子しづまみやこ

なぜ彼女が注目されたのか、それは彼女が無名だった高校をインターハイベスト4までのしあげたからである。

ベスト4だ、とてもすごい!

その高校が負けた日、彼女が言った言葉『泣いた顔は汚いから見せるな』

しびれる、なんときついお言葉か!!

中3の受験真っ只中だった俺はその日から、高校では彼女のいる高校と試合をするという目標を立て必死で勉強を頑張った。

俺が行きたい高校、皇神高校すめがみこうこう。創立してからの歴史は長いが校舎は綺麗で制服もかわいいと地元では結構人気の高い学校である。


「よし、やる気でたぁ!!」


ちなみにいうと、俺は中学美術部のまったくのバスケットボール初心者である。






月日は流れ、2年春。

俺こと石渡志郎いしわたしろうは皇神高校2年生になった。

あの日あの思いを誓ってから結構時間がたってしまったが、あの決意は今も健在である!!

それなのに、


「…ええぇぇぇぇ!!??」


「ちょ、石渡声がでかいだろう!」


「なんで、なんでバスケ部がないんですか先生!?」


バスケと言えば世界一競技人口が多いスポーツ。

いくら田舎の学校だってあってもいいくらいなのに、担任の赤羽昭雄あかばねあきお先生はバスケ部入部届けは受け付けられないと拒否し、しまいには衝撃の事実を突きつけてきた。

俺はびっくりしすぎて周りも気にせず大きな声で叫んだ。ちなみにここは職員室である。


「ないわけじゃないんだがなぁ…」


「なんですか先生!!」


「あのな…、弱すぎて表に出てこれないんだ…」


先生は目をそらし遠くを見つめた。

昼休み、ぽかぽかと日が注ぐ職員室のそこ一帯だけなぜか凍ったように冷たい空気が流れた。

弱すぎて表に出てこれない、それはどれだけ弱いのだろう。

ドリブルもつけないのだろうか、シュートすらたどり着けないのだろうか。

初心者の俺が言うのもなんだが知らないこっちからすると哀れの一言である。


「先生…」


「なんだ石渡」


「俺、バスケ部と話しをしてきます」


「ほう…、え?」


大波乱の幕開けである。


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