探偵は誰の夢を見るのか

流々(るる)

プロローグ

謎の前に……。

 スカイツリーを見上げる街に生まれ育って五十年余り、今はネザーランドドうさぎワーフの蘭と一緒に気ままな暮らしをしている。


 親が遺した事務所ビルの一階に、管理人を兼ねた「水城探偵事務所」を開設して早七年。ちょうど同じ頃に町会からの依頼があり、近くの小学校へ行く登校班の付き添いを始めることになった。何かと物騒な世の中、上背もあって一見では強面こわもて、しかも時間に融通の利く俺は用心棒に持って来いと思われたらしい。

 子どものいない俺にとっては、毎朝の子どもたちとの触れ合いは新鮮でとても楽しい。なぜか女の子に好かれていて――単に、相手をしてくれているだけかもしれないが――「おじさん!」と色々な話を聞かせてくれたり、相談してくることもある。


 初めて子供たちと一緒に学校へ行った日に、初めて話しかけてくれたのが友華ゆうかだ。気が強いくせに繊細な面があって、面倒見のいい彼女とはなぜか気が合い、高校一年生になった今でも親子のように仲良くしている。

 きっと友華がお母さんと二人暮らしだということもあるのだろう。うちの事務所にも学校帰りにしょっちゅう遊びに来ているし、お母さん公認で二人で出掛けることもあるくらいだ。



 さて、そろそろ時間だな。

 今朝も子供たちの笑顔と一緒に、学校まで行くとするか。

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