未来点

汐崎晴人

第1話 陰キャラ少年の体験(前半)

 時間は基本的に「過去」「現在」「未来」の3つに分けられる。現在という地点において、過去を変えることはできないし未来を視ることなんて出来ないはずである。

 しかし、現在において未来を視ることが出来るのなら…人なら誰しも考えるものだろう。

 レースの順位を知り競馬に大勝ちしたい、地震を予知し多くの人を助けたい、中には自分の結婚相手を見てみたいという某落ちこぼれの眼鏡少年みたいな考え方の人間もいるかも知れない。

 そんな人々の夢がもし叶えられるのであれば……




「未来点?」


 僕はオカルト好きな友達と人の机を借りて会話をしていた。

「そう、なんでも未来の自分に会えるらしいんだ」

「嘘つけっつーの、僕が何回そんなこと言われては痛い思いをしたんだと思う?」

 彼には過去に超能力が目覚めるツボがあるとか、死後の世界を体験できるとか言われて、その度に頭に釘でも刺さったかのような痛みを負ったり、思い出しただけで恥ずかしくなるような儀式をさせられたりしてきた。

 お陰で僕は普通の高校生でいたいのに、クラスの女子から変な目で見られている。くっそ、変なのはあいつだけだよってのに…

「今回は本当なんだよ、体験例だって3人はいるんだからな」

「その3人が勘違いをしているだけなんじゃないの?それに、いつもいつも言っているんだけどお前は体験したのか?」

「いいから聞けよ」

 彼は僕の質問なんか答えずに続ける ほら出た、まずは自分が経験してから人にやらせろって話だよ


「この街の一番でかい交差点があるだろ、それの何処かに未来に繋がる地点があるんだよ。まあ厳密には未来とは言えないのかもしれないがな」

「なんだよその言い方は、お前もよく分かってないみたいじゃないか」

「うるせー、俺はその地点が見つからなかったんだよそれで、その地点に入ると意識が消え、気がつくと本当に何にもない空間に飛ばされているんだよ」

 彼は体験したわけでもないのに見たように話す

「それじゃ未来じゃないかもしれないじゃん」

「だから『未来とは言えないかもしれない』と言ったんだよ まあそこに未来の自分がいるんだよ」

「それは本当に未来のじぶn

「ああもう そうやって人の揚げ足とるなよ、超常現象は信じた方が面白いだろ?」

 お前が面白くても僕は関わりたくないんだよ

「そこでは1つだけ未来の自分に質問が出来るんだ、そこでは何を質問しても構わないらしいよ あいつは今何をしているとか、日本はどうなっているのか、自分は童貞を卒業しているのか…まあ答える方も自分だから見栄張って嘘をつく可能性もあるけどな」

 いや、もしそれで正直にヤったことがないとか言われたら立ち直れないじゃないか…

「あっそ、それでお前は未来のお前に何を問うつもりだったんだ」

「勿論結婚相手についてだよ!」

 完全に地雷踏むやつだよそれ

「そういえばもし仮に未来の自分に会えるとしてそいつは何年がの自分なんなんだ?」

「疑い深いやつだよ…まあ、それについては諸説あるんだけどな」

 3人しか例がないのに何が諸説だよ

「未来の自分の歳については流動的らしい、だけど自分の知りたい質問を答えることのできる年齢ではあるらしいんだ」

 なんとも都合のいい超常現象だこと

「それで質問が終わるとまた意識を失い、元の地点に戻ってくるんだ」

「ふーん」

「少しは興味を持てよ!きょうめよ!」

 なんだよきょうめよって…

「ただし、やるなら1人でやれよ 他の人に自分が認識されていると仮にその地点に入っても未来点には行けないらしいからな、あと未来点に行けるのは一回だけだから考えて質問しろよ」

 チャイムが鳴ると同時に彼はそう言って自分の席に戻っていった

 だから僕はそんな超常現象に関わりたくないんだって…

 と言いながら僕は今日の授業中、彼の話が頭を離れなかった。

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